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2022年まとめ よかった音楽、映画、ドラマ、書籍

2022年も残りわずか。今年も1年お疲れ様でした。
上半期は出不精になっていましたが、8月頃からライブなどで外出する機会も増えてきました。
来年はもっと外に出たり、自分に使える時間が増えて欲しいと願っています。
さて、拙文ながら今年よかった音楽、映像コンテンツ、書籍をまとめていこうと思います。

音楽

2022年のよく聞いた音楽のプレイリストを作成しました。 年間ベストではないけれど、普段たくさん聞いていた楽曲を「お気に入り」から200曲ほどぽつぽつ拾って集めています。
全体的にK-POPを聴くか、レゲトンを聴くか、ドラムンベースを聴くかのような1年だったように思えます。

アルバム

Rosalía、Beyoncéなどダンス・ミュージックの傑作が次々と出てくる中、K-POP第4世代も豊作続きで、2022年はすっかり音楽を聴きながら弾むように歩くことが多かったなと。一方、恒常的に続く辛さに神経が麻痺しつつある中で静かに寄り添ってくれるBig Thiefや優河であったり、Ethel Cainのような(危うい)神聖さに包み込まれる音楽と出会うことができたのは救いでした。

Rosalía 『MOTOMAMI』 
Beyoncé 『RENAISSANCE』
Big Thief 『Dragon New Warm Mountain I Believe in You』
Ethel Cain 『Preacher's Daughter』
優河 『言葉のない夜に』
 

楽曲

Red Velvet 『Feel My Rhythm』

K-POPに限らず、ここ数年継続している90年代やY2Kを参照した作品に少し飽きが来たというか、記号的にも飽和してきた感がありました(今は2014 tumblr aestheticなどもありますが)。

そこにデカい地盤としての古典を引用して軸に据えてきたのがRed Velvetの『Feel My Rhythm』でした。グループの持つコンセプトとも合致しているのは勿論、K-POPアイドルとしてのキャリアがベテランに近づいてきた彼女たちの実力や円熟した魅力を最大限に引き出す形で昇華されているのが見事でした。その後、K-POPではクラシック音楽を引用する楽曲が増えましたが、Red Velvetほど自分たちのスタイルとして物にしているグループはいないように思います。

ROSALÍA 『DESPECHÁ』

今年この曲以上に踊った曲は無い!ライブではMOTOMAMIたちとステージ上でもみくちゃに踊りまくってるのが最高にピースフル。恋人のRauw Alejandroがサプライズでステージに出てきて一緒に踊ってるライブ動画とかも超良かった。年末に京都を観光してたけど、来年ライブで来日してくれることを願ってます。

APOKI 『West Swing Feat. E-40』

たまに出てくるK-POPが本気で作るニュージャック・スウィング。E-40を呼べちゃってるのがすごいですが、APOKIはじめヴァーチャルアイドルによってK-POPというジャンルの次元が広がっているように思います。平然と現役アイドルと横に並んで踊るダンスチャレンジ動画がアップされる時代になってしまった。

FLO 『Cardboard Box』

USでのBoys Worldのカムバ、UKからはFLOやCuteBadのデビューと英米でのガールズグループの隆盛が見られたのが2022年でした。中でもFLOは90s~00sのR&B路線なのですが、実力もトラックもマジで手堅い。ブリット・アワード新人賞おめでとうございます!

NCT Dream『Fire Alarm』

NCT Dreamの2集『Glitch Mode』に収録されている曲で、初めて聴いた時に「タイトルトラックに隠れてしれっとKlaxonsをやってる!」と驚きました。少し前からKlaxonsはじめBloc Party.など00年代中盤のダンス・パンクやポスト・パンクリバイバルに再注目する流れがあったので、すぐに本家の『Atlantis To Interzone』を聴きにいくと、そこで更にKing Gnuの元ネタがKlaxonsだったことを今さら知るのでした。

2022年の良かった公演はオンライン/オフラインともに以下。

▼オフライン
The 1975 - Summer Sonic 2022
Rina Sawayama  - Summer Sonic 2022
Red Velvet -  SMTOWN LIVE 2022 : SMCU EXPRESS@TOKYO
Key (SHINee) -  SMTOWN LIVE 2022 : SMCU EXPRESS@TOKYO
Balming Tiger - Odd Brick Festival
Little Simz - Odd Brick Festival
Kid Cudi - 豊洲PIT
Floating Points - RDC "Sound Horizon"
Big Thief - 東京ガーデンホール
Say Sue Me - 渋谷 CLUB QUATTRO

▼オンライン
『徳利TV SPECIAL LIVE "VIRTUAL EVOLUTION"』徳利
「オオカミが現れた」イ・ラン - 第31回ソウル歌謡大賞「今年の発見賞」
88rising「Head in the Clouds Forever」 - Coachella 2022
Jack White - Fuji Rock Festival 2022
SE SO NEON  - Summer Sonic 2022

映画

『ユンヒへ』

家父長制や性的マイノリティへの偏見などキーワードは色々あるけれど、CINRAに掲載されている監督へのインタビュー記事に全てまとめられているので鑑賞後に読むとより理解できるかも。
劇中での木野花さんの「日本人にとってのぎこちない感じのハグ」についての語りが良かった。

『ケイコ 目を澄ませて』

冒頭のミット打ちや縄跳びの音がジムの中でビートのように鳴ってる場面で完全に入り込んでしまった。
感情や熱量の話もあるけど、聾者であるケイコとのコミュニケーションの表現にも温かみを感じた。意思疎通の手段として手話以外にも読唇や筆談もあったが、弟のパートナーのハナにダンスを教えてもらっている場面に一番グッと来た。

『After Yang』

主題はAIと感情、家族というドラえもんのような話ではあるけど、コロナ禍でアジア系に対するヘイトクライムが起きたことを念頭に置くと、アメリカなど白人優位な社会から見た雑な括りとしての「アジア系」としてまとめられることやそれに伴うマイクロアグレッション、誤認を裏で描こうとしているのかもと思った。むしろアジア系という広い括りで連帯して対抗することの意味もあるよなとも思う。ただ、単一民族幻想が未だ内面化されている、ここ日本では鑑賞者が上記のような問題には無意識的だろうなとも。

ドラマ

『Panchiko』 Season 1

各ショットの美しさ、ストーリーのクオリティは圧倒的。オープニングのタイトルシークエンスがあまりにも完璧すぎて、今年一番心を掴まれた映像だと思う。オープニングだけ無駄に何回も見てしまうほど。
たとえシーズン1で制作が終わったとしても、確かに彼女たちは実在したし、今も生きているということを最後に伝えたのが本当に良かった。(シーズン2は制作が決定している)

『Euphoria』 Season 2

字幕版が配信されるまでタイムラグがあったので本国の放送時間にネタバレもミームも流れてくるのだけど、ずっとお祭り騒ぎなのは羨ましく見えました。シーズン1に比べて展開も見せ方もだいぶポップな印象だったけど、回を重ねる毎に泥沼にはまっていくような感覚が辛い。
あと今年になりようやくK-POPでPetra Collinsの引用が始まった!どこの事務所が先にやるか見合ってる感がすごかったけど、ガッツリEuphoriaをオマージュしたItzyの『Boys Like You』は最高でした。

『Station Eleven』

失われたものを取り戻して行く旅の物語は、現在のコロナの状況にも符号していて「今、このタイミングでしかない!」と思いました。複数時間軸の進行がアクロバティックだったけど、ポスト・アポカリプスの楽団側の視点は牧歌的な空気感とテンポで気持ち良かった。来年は古典の勉強が自分のテーマになるかも。

書籍

『大邸の夜、ソウルの夜』 ソン・アラム

首都・ソウルと地方都市・大邸という2つの街を舞台に自立、結婚、子育てとライフステージの変化で起こる現実の息苦しさを2人の女性の友情を通して描かれた物語。全体的に冷たいトーンで、生々しいセリフと生活描写が胸を締め付けてくる。大邸に住む家族の方言が上手く日本語でも翻訳されているのが絶妙に刺さりました。巻末のコラムまで最高。

『Hマートで泣きながら』  ミシェル・ザウナー

Japanese Breakfastのミシェル・ザウナーが母親を亡くしたことをきっかけに、食文化を通して自身の韓国系としてのルーツを探していくベストセラーエッセイの邦訳版。同じアジア人として重ね合わせて読める内容で、久しぶりに本を読んで涙が出てきました。
ここ数年でアジア系の連帯を作っている人物の一人として大きな存在になっているなと思います。今年のフジロックやその後の韓国公演前後のinstagramのストーリーズもロードムービー的にも見えてとても良かった。「味の記憶は、愛の記憶」というコピーは天才。

『凛として灯る』 荒井 裕樹

モナリザにスプレーをかけるという抗議を行った米津知子が、そこに至るまでの経緯を70年代頃のウーマンリブの立ち上がりから優生保護法改悪案への抗議、障害者団体との対話や共闘がライフストーリー的に書かれています。
米津知子らの団体と障害者団体の間での議論や共闘までの対話を読みながら、現在のTwitterを中心とした言説やスピード感と比較した時に、対話ということがある程度成り立っていた時代のように見え、今の状況のやるせなさが写し鏡のように浮かび上がってくるように思えました。

『水中の哲学者たち』 永井 玲衣

哲学者 永井玲衣さんによるエッセイ集。読んでいると日々暮らす中での疑問やモヤモヤを誰かと共有して話したくなるし、何より書かれている言葉が全て優しい。タイトルの通り、読んでいると水中を泳ぐようにものごとを考えているような感じがしてきます。

『ポスト資本主義の欲望 マーク・フィッシャー最終講義』 マーク・フィッシャー

マーク・フィッシャーによる最終講義の記録ということで深刻そうな空気かと思ったら学生との会話で進んでいく即興的な講義で、思考するのを楽しんでいるようだった。ただ、資本主義リアリズムやポスト資本主義みたいな先を見やると絶望に飲み込まれるような議題なだけに教室内の全員が頭を抱えて悩んでいる感覚も伝わってきました。

『ファンダムエコノミー入門 BTSから、クリエイターエコノミー、メタバースまで』コクヨ野外学習センター

冒頭の若林恵さんの章で、K-POPを例にファンダムエコノミーとかWeb3の話の流れで、資本主義を超えて「人」が対等に取引できるWeb3的な市場が必要で〜aespaやNCTがいる韓国のSMエンターテインメントはNFTやメタバース周りの事業を進めていて〜という話はちょうど今まさにという感じでした。
SMエンタテインメントがメタバースを活用したファンクラブや将来的にファンダムの仮想国家を作ると発表していたこともあり。

『アメリカ現代思想の教室 リベラリズムからポスト資本主義まで』岡本 裕一朗

THE BATMANやDon't Look Upを観ながら「今のアメリカ、何でこうなってるんだっけ?」と思っていたので、ニューディール〜トランプ後までのアメリカの思想史を流れとして掴めてよかった。特にアメリカにおけるリベラリズムの整理とか。

以下は既刊

『それを、真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力』 レベッカ・ソルニット

レベッカ・ソルニットによるエッセイ集。起こっている問題やその構造を理解して言葉にし、それらに名前を付ける=真の名で呼ぶことが抗議の手段になるというのがテーマ。
二章目の「憤怒に向き合う」は今年の参院選でにも通ずる所があるはず。ポピュリズムに暴露系YouTuber、逆張り、暴力。それは誰の何に対する怒りなのか?
また、アメリカでの保守派・白人男性的な「俺は俺でやる」という自己責任=孤立のイデオロギーを解説する箇所が良かった。それらは社会や生態系という共生関係すら否定するに至り、最終的には事実の実在すら捻じ曲げるというロジックに恐ろしさを感じた。

『哲学マップ』貫 成人

現在のメディア環境では言説が流れていくスピードがあまりにも早すぎて危険だと思い、2022年の春から独学で哲学の勉強を始めました。大学では社会学専攻だったのですが、哲学については断片的に理解していたくらいだったので、まずはじめに思想史から。とても整理されていて良いスタートが切れたと思います。

『ケアするのは誰か? 新しい民主主義のかたちへ』ジョアン・C.トロント (著) 岡野 八代 (訳・著)

コロナ禍を経て「ケア」について初歩的な所から知りたいと思い、友人から薦められて読みました。フェミニズム理論〜ケアの倫理、日本社会に当てはめた場合と、誰がなぜケアを担うのかを考えるのにこの本は良いかも。

おわりに

今年も1年間お疲れ様でした。
年末も音楽はNewJeansの『Ditto』、映画は『ケイコ 目を澄ませて』で締まるという最後の最後まで豊かな1年だったと思います。
読書の方は学びたい方向性も見えて来たので、引き続き哲学の勉強を続けながら、実践に落とし込むことができれば。
来年もたくさんライブに行きたいのですが、どうかRed Velvetの単コンを!どうか、お願いいたします。。

それでは、2023年も良いお年をお過ごしください。

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