虹も好きな景色
小学生の夏休みはほぼ毎年、昭和感あふれる民宿「やよい」を営んでいた、やよいおばちゃんのところへバカンスに行っていた。
民宿の目の前は、海だった。
母方の親戚は多く、みんな良い人ばかり。
舞踊や芸能に強かったみたいで
親戚がひとたび集まれば、誰かが三味線で音を奏で、誰かが踊り、それを見ながら大人たちがビールを飲む。
そんな賑やか空間が、毎年わたしたちを歓迎してくれていた。
民宿のお風呂にはなぜが木が浮いてたり。
(あれは恐らく檜。)
釣れた魚を近所のおじさんがくれるので、民宿のメニューにはない煮魚定食がその日限定で出てきたり。
民宿から5、6歩いくと階段がある。
フジツボがついてる階段を降りると潮が引いてる時間だけ現れる、"海の公園"で私たちは遊ぶのだ。
小さなカニが歩いていたり、海に遅れをとったクラゲが石の上で迷子になっているので、毒に気をつけろー!なんて騒ぎながら海に連れ戻す。
ベンチがある防波堤に行くと、F1並の早さで移動するフナムシがたくさん私たちを避けていく。
夜になれば花火をし、早朝に採れた岩牡蠣のBBQが民宿前で開催されたり。
とても恵まれた夏のバカンスを送っていた。
大人になってからも幼い娘を連れて、家族や従姉妹たちみんなで民宿「やよい」に行った。
その時にやっぱりいい景色だな。と何枚か写真を撮った。撮った時にはまったく気づかなかったが、虹も一緒に映っていた。
この話を記すためにアルバムを見返しているときに発見した。
ぜひシェアしたいと思う。
これが海の公園。
この写真の右上にちょこっと虹も映ってる。
うん。なんか、わかる。
虹もこの景色がぜったいに好きだよね。
虹と意思疎通ができた気がして嬉しい。
数年前にやよいおばちゃんが亡くなったことで、民宿の営業は終わった。
けれど民宿のドアを開けた時の匂いや、裸足で歩いた床の感触、パリっとした白いお布団シーツや、窓を開ければすぐに聞こえる波の音が、夏に近づくと記憶のなかで自動再生される。
再生ボタンが押される季節も、あと少し。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?