18時の匂い
お昼寝から目覚めた息子と、家のまわりを散歩した。
石をひろったり、排水溝をのぞいたり、空を見上げて「くも!くも!」と言う息子に、僕も「くもだねぇ~」とか「あっちに木があるよ」と口にしながらぶらぶらと歩く。
いい時間だ。5月の夕方はまだ肌寒いけど、心はじんわりと温かい。
ふいに、どこからかいい匂いがしてきた。
18時の、あの匂い。
各家庭のキッチンから発せられる、あれだ。
唐揚げ、焼き魚、しょうゆ、味噌。
いろんな食材や調味料が混ざり合って、鼻に届く。
一瞬にして胃を空っぽにさせるこの匂いを嗅ぐと、学生時代を思い出す。
サッカーボールを必死に追いかけまわしていたあのころ。
毎日のように泥だらけの汗まみれで、帰りの自転車を漕いでいた。
アドレナリン全開のままペダルをぐんぐん踏みつける日もあれば、道路の白線だけを見つめてふらふらと帰る日もあった。
でも、どんな日でも変わらずに、家に近づくと18時のあの匂いがしてきて、玄関をあけてリビングに入れば、そこには美味しそうな晩御飯がいつも並んでいた。
毎日ごはん支度するの大変だっただろうなぁって、自分に子どもができていまさら気づいた。
帰宅してごはんの用意がされていることがどれだけありがたいことか。
そして、どんな気持ちで毎日ごはんを作っていたか。
自分も親になったいまなら、なんとなく想像はできる。
もっとおかわりしておけばよかった。
感傷に浸っていると、妻の待つキッチンに戻りたくなってきた。
「さあ、そろそろ帰ろうか」と告げると、いつもは「もっと遊ぶ!」と駄々をこねる息子も、その日はすんなりと自分の足で玄関に向かった。
息子もこの匂いを待ち遠しく感じるときが来るのだろうか。
まだまだ先のことだけど、「おかわり!」と茶碗を差し出す姿が、いまから楽しみである。
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