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きょうの画材「10:あの頃の鉛筆」


あの頃の居場所

私は精神に障害を抱えており一般就労が難しいため、
「就労継続支援」と呼ばれる福祉施設で日中は働き
そこで得た工賃収入でアナログ画材を買い揃えて、
描いた作品を販売して次の画材代に充てる…というステップを経て
昨年に自営のイラストレーターとして開業しました。

当時、施設の宣材として制作したカットイラスト。

施設内には利用者さんの作ったお菓子を並べる小さな売店があり
そこで手工芸品なども販売していたのですが、
私が個人でアナログ原画を販売している事を知った職員さんと
施設でも利用者さんの原画作品をアートとして売り出せないか?
という話をしていました。

その時に言われたのが「何とか工夫して100均の画材で賄えない?」
備品から機材から足りないづくしの現場で、売れるかもわからない
手工芸品の材料費にかける予算が施設には無かったんです。

結局、計画が形になる前に私は施設を卒業してしまったのですが
あの時の質問に今ならなんと答えるだろうとよく考えます。
描き手が楽しむだけならチープな色鉛筆やマーカーだっていい。
でも「絵画作品」として販売するものですから
やっぱりすぐ色褪せない、ある程度の耐用年数は欲しい所。

「鉛筆画」はどうですか?

貰い物が沢山ある合格鉛筆。ありがたいお言葉を添えて。

小学校の時の鉛筆が数十年たっても普通に使える事に
感心した経験のある方、多いのではないでしょうか。
シンプルな黒鉛の「鉛筆」は本体も、それで描かれた線も
ものすごく持ちのよい画材なんです。

これは鉛筆のお金の面での大きいメリットなのですが、
悲しいかな、一般のご家庭ではとかく余らせがち。
小学校の低学年で使う2B~4B程度のかきかた鉛筆、
一度しか使わないマークシート鉛筆、縁起物の合格鉛筆…
これはつまり『おさがり品が無償や低予算で集めやすい』という事!

浮いた予算のつかい所

画材にされる合格鉛筆。

絵の耐久性を決めるもう一つの大きな要素は紙。
ここは多少の予算を割いて、画材店で作品用紙として売られている
画用紙や水彩紙を選ぶといいと思います。描きやすいですし、
風合いがいいので作品の見栄えもアップします。

他に画材店にある、揃えておくといいものは
・練りゴム(表現の幅がぐっと広がります!)
・完成作品を定着させるフィキサチーフ(仕上げに使います)
あたりでしょうか。

学習鉛筆は奥深い!

見た目も可愛い学習鉛筆。

日々進歩する文房具の世界。
小学校に入る時にまず揃える、少し濃い目の学習鉛筆も
色々な画材を使う身からすると、この低価格でこの品質で出せるのか!
と感動するような製品が揃っています。
やっぱり安定した大きな需要が見込めるという事なんでしょうね。
デザインが可愛いのもちょっとうれしい。

2Bの三菱「ハハトコ鉛筆」で。

低学年向け学習鉛筆ですと「2B」か「4B」がメジャーでしょうか?
この柔らかい鉛筆は、ごりっと強めの黒を置きたい時に重宝します。
子供たちは大抵すぐ卒業してシャープペンシルに移行してしまうので、
私もそういったお下がり鉛筆をフリマで見つけたりなどしては
譲り受けて自身の作品にたくさん使っています。

硬め鉛筆でタッチを入れる

F~HBくらいの硬めの筆記鉛筆はハーフトーンを作るのに便利。
最初にアタリ取りに使った合格鉛筆で、優しくタッチを入れていきます。

HBと2Bを部分で使い分けます

余分な線を練りゴムで消しながら最後の仕上げ。
練って尖らせれば細かい所、軽く押し付けて明るいグレー色を作ったりと
最初から最後まで大活躍してくれるのがこの練りゴムです。

完成したら定着スプレーを

これで完成!もう手を入れるのはここまで!
…となった時に是非使って欲しいのが鉛筆を定着させる
フィキサチーフのスプレー。
鉛筆の粉が落ちたり擦れたりして絵が汚れるのを軽減します。

とはいえ原画はデリケート。取り扱いはやさしく。

ちなみに、鉛筆の色のタフさは黒という顔料の強さなので
「書道の墨汁」「水性の顔料ボールペン」なども同様にタフです。
こっちが向いている方もいらっしゃるかも。
(下記は墨に関する過去の日記)

(さてさて、ここまで
「いかにお金を掛けずに長年楽しめるアート作品を作るか」
という事をつらつら考えてきました。

でも、最後にやっぱり一番大事なのって、実際に触れた時に
「黒だけで描くの、描き手さんは楽しいの?それ?」
という所なのではないでしょうか。私は楽しいですが。
あくまでこういう考えもあるよ、というお話に
とどめて頂ければ幸いでございます…)


今回使った画材

・ヴィフアール水彩紙細目
・鉛筆(合格鉛筆、三菱first-K / 三菱ハハトコ(どちらも2B))
・練りゴム
・フィキサチーフスプレー

今回もご覧頂きありがとうございました。楽しい画材ライフを!


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