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サブリースや家賃保証・空室保証の落とし穴を知って賢い不動産投資を

不動産投資を検討する際に、最も気になるのが「自分の購入する物件に空室が発生しないか」という点です。不動産投資の利回りは、満室を前提としたものとなるため、1ヶ月でも空室が出てしまうと収支計算に大きなズレが生じます。そのため、不動産を購入する上で、空室の発生リスクをどう抑えるかが重要です。

こうした悩みについては不動産会社も理解しているので、空室リスクを心配する投資家向けに「満室を保証するサービス」を打ち出す会社も多くなってきました。これが、サブリース契約と呼ばれるものです。

なかでも、ローンの契約期間と併せる形で「家賃30年保証」「35年空室保証」といった長期的な保証サービスも増えてきています。一見すると、「30年間も満室の家賃を保証してくれるとは、なんて太っ腹なサービスなんだ!」とお思いになる方も多いかと思いますが、実はサブリース契約には思わぬ落とし穴も存在します。

以下では、この「空室保証」「家賃保証」のサブリース契約に関して、実態を詳しく解説していきたいと思います。

サブリースの契約の仕組み


サブリースとは、不動産管理会社が転貸を目的として一括で部屋を借り上げる契約方式です。サブリース契約締結後、不動産管理会社は、サブリースで借り上げた部屋を入居希望者に転貸し、入居者から月額賃料を受け取ります。また、不動産オーナーに対しては、契約時に定めた保証賃料(月額賃料の90%~95%程度)を支払うという仕組みです。

不動産オーナーのメリットとしては、空室リスクをゼロにできるという側面がある一方で、不動産管理会社も慈善事業ではありませんので、空室リスクを保証する代わりに通常の不動産管理でもらう管理費用よりも月額賃料数%分の上乗せをすることになります。
このサブリース契約の仕組みのどこに問題があるのかを以下で詳しく見ていきましょう。

注意点① 家賃保証=賃料一定ではない


サブリース契約で注意すべき1点目は、「35年家賃保証」という言葉が意味するものは「35年間、契約時の保証賃料を払います」というものではない、という点です。
サブリースの説明書きの備考欄や契約書の免責事項などに小さい文字で書いてあることが多いのですが、サブリースの保証賃料は不動産の賃料相場などを踏まえて契約内容が一定期間毎(たとえば、2年毎)に保証賃料を見直すとなっているものが多いのです。

本来、物件の賃料は新築時をピークとして年数が経つごとに下がっていくものです。たとえば、同じ立地にある物件であれば、築年数が20年の物件よりも築1年の物件のほうが入居希望者には好まれるため、入居者を募るために築20年の物件は賃料を下げる必要が出てきます。スーモや国土交通省などが過去に調査した結果を踏まえると、築10年で賃料の10%、築20年で賃料の20%、築30年で賃料の20%~40%程度の下落を想定しておく必要があります。

サブリース契約において、不動産管理会社もこういった賃料下落リスクを無視することはできませんので、「入居者が集まるところまで賃料を引き下げますよ」という内容が契約書に盛り込まれているというわけです。

さて、ここで冒頭の「35年家賃保証」という言葉の意味を考えてみると、これは「35年間、2年毎に入居者が集まるように賃料を見直したうえで、家賃保証を致します」と言っていることになります。こうなってくると、管理会社が通常の客付けをするのと変わらなくなって来ますので、「サブリースで家賃保証をつける必要があるのか」という点に疑問符が生じてくる状況となります。サブリース契約時の家賃が35年間毎月入ってくると考えていた方にとっては、将来の収支が大きく変わってくるので、大きな問題になりやすい点です。

注意点② 都心の好条件物件の入居率は95%以上


サブリース契約を検討するにあたって、注意したい2つ目が入居率に関する話です。都心・新築・ワンルームマンション・駅徒歩5分以内・複数路線などの好条件物件は、そもそも入居者に困ることが少なく、通常の管理サービスを利用していても95%以上の入居率となることが多いため、サブリース契約を結ぶメリットが少ないといえます。
一方、都心から距離が離れたり、ロケーションや築年数、設備や物件タイプ(アパート・戸建てなど)といった物件条件が良くないと空室率も上がってきますので、サブリースを検討する価値が出てきますが、この場合は不動産管理会社が空室リスクを織り込んでサブリースの保証賃料率を下げることが多いという点に注意が必要です。

注意点③ 契約完了=賃料支払い開始ではない


サブリース契約でさらに注意したい点としては、サブリースの契約完了後にただちに賃料が入ってくるというわけではなく、客付け期間として契約から30日後、45日後などの一定日数は家賃が入ってこない事になっている契約が多いという点です。

「入居者から月額賃料が入ってくるまでは、不動産オーナーに家賃を支払うことが難しい」という不動産管理会社の言い分も分からないではないのですが、空室リスクを軽減したくてサブリースを活用しようと考えている不動産投資家からすれば、サブリースを利用するには空室1ヶ月~1.5ヶ月を認めて欲しいと言われていることになります。

都心の好条件物件の入居率が95%以上であったことを考えると、1ヶ月以上の空室が発生するのであれば、むしろサブリース契約をしないで通常の管理会社を使うというほうが賢い選択になります。

不動産管理会社もこの点を理解していますので、サブリース契約時に「賃料が発生しない期間」を減らして、不動産投資家との交渉材料にすることがあります。都心の新築物件を購入する方や属性が良い方は、サブリースの説明時に交渉をしてみるとこの「賃料が発生しない期間」をゼロにできることがありますので、頭に入れておくと良いでしょう。

注意点④ 日本の法律は、基本的に借りる側を保護している


サブリース契約の最後の注意点は、日本の法律が借りる側を保護する内容になっている、という点です。いったんサブリース契約を結んでしまうと、不動産オーナーと管理会社は物件を貸す側と借りる側になってしまいますので、管理会社は借りる側としての主張をすることができるようになります。

そのため、サブリース契約時に定めた内容(たとえば賃料に関する取り決めなど)が、契約期間中に管理会社の都合によって覆されてしまうということもありえるということです。古い付き合いの管理会社で信頼できるケースであれば問題はないのですが、契約内容に関する認識の違いから係争や裁判に至るケースもありますので、契約前には十分な下調べをしたほうが良いでしょう。

サブリースを賢く活用しよう


サブリース契約は、空室リスクをゼロにできる一方で、賃料の見直しや賃料発生までにタイムラグがある、などという点をしっかりと認識しておきたいところです。郊外やアパート、築年数が古いなどの事情で入居率が読めない場合は、収支計算をしっかりした上でサブリースを検討してみると良いでしょう。また、サブリース契約に踏み切る前に、過去の利用者の声を参考にする、担当者と契約の詳細を確認する、などを自衛策として行っておくことをおすすめします。

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