墓まで持っていくつもりだった
元夫が逮捕された時、私は冷静だった。パニックったりしなかった。
それは執行猶予中の2度目の逮捕だったから。実刑が確実になるとわかっていたから。騒いでも事実が変わることは無いと知っていたから。
5000円だけ渡した。登校前の子ども達とハグだけさせた。そして玄関前の私服警官に全てを託した。
子ども達には、「急な出張で会社の人が迎えに来た」と誤魔化した。
この件を私は独り抱えて、一生誰にも言わず、墓まで持っていくつもりだった。
なのに、その1週間後、突然地元紙に載った。新聞は取っていなかったが、知り合いがメールでその日の朝に知らせてくれた。実名で載っていた。焦った。学校に電話した。「子ども達は私たちが守るから、普通に登校させてください」と先生は言ってくれた。
父親に連絡して、全てを話した。親にすらそれまで何も話していなかった…。
ここから始まったのは周りの「白い目」「冷たい目」普通に接してくれる人もいた。でも、そうじゃない人達がいた。子どもも嫌がらせにあった。
私が悲しかったのは、実名報道で罰せられたのは、犯罪者の元夫ではなく、関係ない私と子ども達だった。実名報道の重みを、間違った重みを知った。元夫は塀の中で世間から守られて、一方私と子ども達は世間の冷たさにさらされて…。家を失い、転校し、全てが変わった…。
当の本人は実名報道の影響は受けない。塀の中で守られて、皆の払う税金でご飯を…。私と子ども達はお米を食べれない日が何日あっただろう…。
可能ならば、事実は墓まで持って行きたかった。子ども達を守りたかった…。
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