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ハード・ハード・くるみパン、マイラブ。

わたしはあまりテレビを観ないのですが、食べものに関する番組とシーズンごとに気になるドラマくらいは視聴します。食いしん坊かつ物語好きなので。

いくつかの番組があらかじめ定まっているため、予約録画したものを好きなときに観るのがいつものこと。テレビがつけっぱなしという状況は、我が家ではまずありません。

静謐せいひつ喧騒けんそうのコントラストがかなり強い家と言えそうです。

仕事と育児・家事を抱える人間として限られた時間をどう使おうかと悩んだ結果、現在のスタイルに落ち着きました。

さて、かなり前から、日本各地の美食、高級食材を紹介する番組を観ていて感じることがあります。

「おいしい」の基準が「柔らかさ」「甘さ」に集中しつつあることです。

食レポが上手と言われるレポーターの、料理や食材についての感想を聞いていると、食べものへの評価はこの二つに収斂しゅうれんしていく感じがします。

たぶん、どなたも事前に表現を練り、新鮮味あるコメントを残そうと工夫しておられるとは思います。

それでも、どうしても「柔らかい」「甘い」に言い換えられる言葉が連なっていることが多い気がするのです。

「わー、甘みがぎゅっと凝縮していますね」
「舌の上にお肉の甘さが広がります」
「じゅわっとしみだす甘さがたまりません!」

「これはもう、歯がいらないレベルですね」
「んんー、とろける柔らかさー」
「食べた瞬間、舌の上からなくなっている感じ!」

これは甘くて柔らかいものが今、ウケているということなのでしょうか。

そうだとすればおそらく、わたしは味覚のトレンドに追いつけていません。

わたしはがしがしと噛みごたえのある食べものが好きです。もちろん、心和ませてくれる柔らかな食感も好き。でも、食べる者に挑みかかるような硬いパンや、昔ながらの強情なスルメを欲することも少なくありません。

先日、ふと買ってみたパンを気に入って以来、なん度もリピートしていますが、これがけっこう硬いのです。

娘たちの登校後、一人で朝ごはんです。
至福のひととき。

くるみがふんだんに使われたミルクパン。柔らかそうな見た目とは裏腹に、わたしの顎に挑戦状を叩きつけました。大きめにちぎって口に入れてしまうと大変です。一見ふわふわの皮に歯を立てたあと、手でぎゅううっと引っ張らなくては噛み切れません。

それほど甘くもありません。くるみの風味を引き立てるためか、お砂糖っぽさを最低限に抑えた素朴な味わい。ミルクパンと言いながら、牛乳の甘みもほとんど感じられません。

夫は「なんじゃこれ」と呆れていましたが、わたしはすっかりこの硬さと「甘くなさ」のとりこになりました。週に2回は食べています。

「柔らかーい!」「甘ーい!」があふれる食べものの世界では肩身が狭いだろうこのくるみパン。でも、だいたい毎日売り場に並んでいます。そんな律儀で健気けなげなところも愛おしさの理由です。

これまでの人生で「王道」に染まれなかったわたしだからこそ、ハードなくるみパンに惹かれるのかもしれません。

明日もきっとくるみパンを買いに、わたしは駅前に出かけます。

ことばと広告さん「書く部」のお題「いつもと文体を変えてみた」に沿って書いてみました。
いつもの常体(だ・である)から敬体(です・ます)へ。
多少、筆を進める感覚が狂うのもまた楽しく、面白い経験でした。
ときどきやりたい!

#書く部のお題で書いてみた
#いつもと文体を変えてみた
#みんなで書く部

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