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0.2カラットの野望

「ダイヤモンドは永遠の輝き」

有名なキャッチコピーだ。この世でもっとも成功したコピーなんて言われることもあるそうだ。

ダイヤモンドに魅了される女性は多い。私もその一人。年を重ねるとともに物欲は薄れてきているものの、ダイヤモンドに惹かれる心はまだ残っている。

もちろん、たくさんのダイヤモンドを所有しているわけではない。気に入ったものを、何かの記念に、一つずつ買い足してきた。

ふだん身に着けているのは、0.5カラットのダイヤモンドネックレスだ。30歳の記念に、自分で購入した。小指の爪よりも小さなダイヤモンドを、ベゼルセッティングと呼ばれる方法で留めてある。シンプルで服や髪にひっかかりにくいので、日常づかいにぴったりなのだ。

肌なじみもよく、まさにスキンジュエリーといったところ。ごくたまにだけれど、褒められることもある。

「えいや!」っと購入してから約10年。小さな輝きを手にした日の嬉しさを、今でも覚えている。これからも頑張らなきゃね、と自分に言い聞かせた。以降、ほとんど毎日をこのネックレスとともに過ごしている。0.5カラットと歩んできた10年だったと言ってもいい。

私が次の目標にしているのは、0.7カラットのダイヤモンド。大きさにすると0.6mmほど大きくなる。もしかしたら、宝石に興味がない人にとっては、0.5も0.7も大差ないかもしれない。

でも、その絶妙なレベルアップ感が重要なのだ。

何か目指すものがあるとき、その目標は自分とかけ離れていないほうがいいと私は考えている。「叶えたい自分の姿」は、今の私と地続きであるほうがいい。足元からのびる道が、少しだけ高みへ続くと思わせてくれるなら、何事にもやる気が出るというものだ。

それに、似合う似合わないの問題も忘れてはいけない。

もし、私が鎖骨をおおい尽くすような豪華なダイヤモンドの首飾りを巻きつけていたら、職務質問されてしまいそうだ。カルティエの展示会から奪ってきたようにしか見えないだろう。たぶん私には華美すぎるものは似合わない。いや、その前に買えもしないのだけれど。

0.7カラットは、私にとってはじゅうぶんゴージャスな大きさだ。

泥棒に見えてしまいかねない女が0.7カラットをつけこなすためには、心も肌も、準備と鍛錬が必要だ。0.2カラットぶん増したダイヤモンドの輝きに引けを取らない素地を整えなければならない。

当然ながら、0.2カラットぶん、値段も高い。「頑張って働こう!」と自分を鼓舞する材料になる。

だから、0.7カラット。

私は突拍子もない野望を抱くタイプではない。それでも、また10年ほどかけて0.2カラットぶん頑張ってみようと思っている。10年後、0.7カラットに見合う自分でいられたら、万々歳だ。

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