金星から来た男の子

男は火星から、女は金星から来た、と誰かが言った。

あなたは多分、金星から来た男の子。

あなたは、決して争わない。

あなたがいると、そこに調和が生まれて、ケンカはなくなる。

みんなが、あなたという樹に集まって、安らぐ。

あなたも、みんなも、言葉は少ないけど、知っているんだ。

もちろん私も。

あなたは調和を生み出す。

あなたがいる場所は、あなたの為に用意された空間のようになる。

例えば、あなたがカフェで読書をするとき。

陽の当たり方、コーヒーカップの佇まい、あなたのまつげの角度、あなたが読んでいる文庫本の紙の質感、背景の観葉植物、退屈そうな他のカップル、あなたのことを見ているおばさんグループまで。

全てが、１枚の絵のように美しい。

私はあなただけではなく、あなたが作り出す空間にも、見惚れている。

あなたはどこにいても、キラキラ輝いている。

あなたの世界の中では、私もきっと、魅力的な女の子になれている。

あなたは、いつもアルカイックに微笑んでいる。

何千年か前の、美しい仏像のような、永遠級の微笑み。

優しい瞳の奥に、吸い込まれてしまいそうになる。

今まで何人の女の子が、そこに吸い込まれていったのだろう。

あなたは、芸術とは何かを知っている。

あなたの鎖骨の形は、それを表現している。

あなたの指を見ると、心がふるえる。

あなたが透き通るように白い手を差し伸べたとき、内心、ガラスのように冷たいんじゃないかって、ドキドキしていた。

でも触れると、きちんとあたたかくて。

私は、泣きそうになった。

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