水曜夜8時、筍の天ぷら
夫の尊敬できるところは色々あるけれど、その一つが、仕事から帰宅した後でも、ちゃんと夕飯を作るところ。私は20時を過ぎて帰宅すると、もうはなから作る気が起きない。お弁当用の作り置きを前借りするか、非常食の冷凍餃子を焼くか、の二択だ。
私に夕飯を任せると、高確率で冷凍餃子になることを彼はわかっているので、よほど遅い時間にならない限り、平日はだいたい夫が夕飯を作ってくれる。
今日は20時過ぎに、ほぼ同時に帰宅。先にお風呂に入るよう促され、上がってみると、テーブルには今が旬の筍の天ぷらが鎮座している。
「これ、今作ったの?」と聞くと、「そう。この前筍の天ぷら食べたことないって言ってたから」と夫。たしかに、今が旬の筍を買ってきて、どうやって食べるか相談したときに、その話はした。
したけれども。平日ど真ん中の20時過ぎに作り始めるとは思わなんだ。
仕事終わりに、包丁とまな板とフライパンを出すだけだって、私にとっては偉業なのに、揚げ物まで。そのバイタリティはどこから来るのか。
普段から、夫は「食べること」を大切にしていると感じる。レシピに書いてある材料にプラスしてみたり、つけだれを何種類も用意したりとか、白米も1杯目と2杯目でごはんのおともを変えてみたり、調理法や食べ方に自分なりの工夫をしている。
一方私は「食べられれば何でもいいや」というタイプで、食べることに極力手間暇かけようと思わない。結婚してからマシになったが、以前は本当にカロリーを摂取するためのものだった。だからこそ多少の手間を厭わず、「食」を楽しむ彼のスタンスは、私とは正反対で、尊敬できる。
筍の天ぷらを頬張ると、カリッとした衣に、歯ごたえの良い筍の旨みが広がる。時間が許せばお酒と一緒に食べたい美味しさ。噛み締めながら、箸が止まらない。一人暮らしだったら、絶対に平日の食卓には上がらないメニューだ。
連休は、彼が好きなメニューを作ってあげようと思った夜だった。
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