こほりちか

玄関の軒先です。1年目、とにかく色々置いてみます。

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最近の記事

街を歩くささやき諸々

夏夜  夕日が落ちて、街中がご飯処を探す人や夕食の材料を買う人で賑わう時間帯の更に先の、暗くて静かな時間。空の帳も、寝室の帳もそろそろ降りる狭間。その時間帯を歩くのが心地いい季節になった。日中お世話になっているスーパーのネオンが消えているのを初めて見る。歩行者の利便を想定していない工事作業が開始される。家の近くの国道を歩くと、片方の耳で車の走行音を、反対の耳で公園に住む虫の囁きを聞くことができる。この時間に生きる生き物の存在を知る。(2024.6.10) 図書館  図書

    • 舞台の上で、どこを向くのか

       冷麺が美味しく感じる季節になってきた。夏が顔を見せ、少し動くだけでじんわりと汗をかいて、一仕事したような気分になる。  演奏会のチケットは大抵二枚取って、後から誰を一緒に連れていくのか考えるのが楽しい。先週末が予定だった、だいぶ前に取っていたウィーン少年合唱団のコンサートには母を連れて行った。母は昼寝をするのが好きなので、いい演奏で心地よくなったらうとうとしちゃうと思うけど。  同じ少年合唱団で、LIBERAのコンサートには何度か訪れたことがあったが、ウィーン少年合唱団

      • 東芝科学館、閉まるってよ

         東芝科学館が、6月を最後に一般公開を終了するらしい。SNSで偶然その情報を知り、慌てて駆け込みで訪れた。  東芝科学館は、文字通り東芝が所有する、科学分野の展示を行う博物館。でも、小さい頃はそういう大人の事情はわからないので、「近所の遊べる博物館」ぐらいの認識だった。うろ覚えだが、地元のスポーツクラブの皆で、年1の頻度で行っていたはずだ。ビギナーよりはミドル寄り。入館無料であることも、親からしたら連れていきやすかったのかもしれない。  今では技術的にありふれてしまったけ

        • 田舎への憧れを捨てたい

           小学生の頃、夏休みに、実家への帰省と称して新幹線に乗る友達がとても羨ましかった。新幹線に乗れること自体も羨ましかったが、それ以上に、コンクリートジャングルの地元を高速で抜けた先にあるという、「田舎の風景」を知っている友達に、熱い羨望の眼を向けていた。  自分の祖父母は両方とも近くに住んでいたため、父が運転する車のなかで小一時間寝ているだけで会いに行けた。いざ帰省しても、街並みも家の周りとさほど変わらない住宅街で、小学生が渇望している刺激や新鮮味はなかった。  今では街歩

        街を歩くささやき諸々

          思わぬきっかけで思い出すこと

           一体、頭のなかの、どこに閉まわれていたんですか。  そう聞きたくなるほど、ふっと突然、脈絡なく昔の記憶を思い出すことがある。そんな話。  小さい頃からの癖で、よく寝る前に、自分が好きな物語の世界に入れたらどうするだろう、あのキャラクターとどう会話をするだろう、といった妄想をする。  キッズが頭のなかで、戦隊ヒーローやヒロインになりきるのと一緒。大抵は気軽で、原作の好きな場面にお邪魔して、キャラクターとの交流を楽しむ。ときどきツボにはまると、細かい背景を考えたり、キャラの思

          思わぬきっかけで思い出すこと

          啓発本を肯定できるようになった

           大学1、2年生の頃は、自己啓発本の類をよく読んだ。  というのも、中高の頃は勉強に部活にと明け暮れていて、なかなか豊かな読書経験が積めなかった。本屋さんに寄るのはもっぱら参考書か文房具を買いに行く時で、「当時、どんな物語を読んだ?」という質問をされても、中学の卒業論文を書いたときに借りた青く分厚い専門書とか、教科書に数頁だけ載っていた名著の断片しか出てこない。中身は全く覚えていない。  反省をして、「大学ではたくさん本を読むぞ!」と意気込んだ。なかでも、自己啓発本は目覚

          啓発本を肯定できるようになった

          キャンドルに始まるささやき諸々

          キャンドル  家で集中して作業をしたいとき、キャンドルを焚いて横に置いてみると、結構いい。火事を起こさないよう常に注意を払う必要があるので、程よい緊張感が生まれる。  同じことを思っている人いるかな~と思い、「キャンドル 緊張感」と検索すると、候補に踊るのは「キャンドルの火は心を落ち着かせてくれます」「緊張感を和らげてくれます」といった趣旨の話。まさかの逆効果。(2024.4.15) 通い続けて早  コンタクトの処方箋が切れたので眼科に検診に行ったら、「5年前からずっと

          キャンドルに始まるささやき諸々

          300円を握りしめて、レッツ世界旅行

           ふふふ、ここ最近、優雅に各地を旅行しているので、ベストショットをいくつか。  1枚目は静岡の茶摘み風景。深呼吸をすると、青く澄んだ香りが身体中を通り抜けるよう。  2枚目のこちらは広島の厳島神社。水鏡に写る大鳥居が綺麗だったなあ。  さて、3枚目は華の都、パリのエッフェル塔と凱旋門…。  …うっかり!  エッフェル塔と凱旋門の間に、カラーコーンが写っちゃった。  実は、旅行したのは何気ない週末で、訪れたのはたった1ヶ所。渓谷の街・鬼怒川温泉にある「東武ワールドス

          300円を握りしめて、レッツ世界旅行

          気まぐれラジオの幕開け

           記事にspotifyのリンクを貼れることを知った。  角丸の長方形の見た目が可愛い。ラジオの真似事ができそうだ。  …えー、皆さんこんばんは。パーソナリティのこほりです。今日は3月31日の日曜日。お休みの方もお仕事の方も、お疲れ様です。  3月ももう去っていってしまいますね。こちらは最近ようやく春らしい気温になってきました。例年より焦らされた分、桜の開花が今か今かと待ち遠しいです。  桜といえば、私事ですが面白い話が一つ。都内のある大学にて、戦後間もない頃、私の祖父が

          気まぐれラジオの幕開け

          大人買いした方がよかった?

           初めて駅で『BIG ISSUE』を買えた。  『BIG ISSUE』のことを知ったのは数年前。大学で講義を受けた時のような気もするし、自分で調べ物をしていた時だった気もする。そのくらい曖昧で思い出せないが、知ったときに「買ってみたい」と単純に思った。  『BIG ISSUE』は税込450円の雑誌。「ホームレスの販売員が雑誌を売る」というかたちで、ホームレスの自立を応援する事業だ。1991年に英国で創刊、日本では追って2003年に始まった。現在は全国各地の駅周辺にて、販売

          大人買いした方がよかった?

          メトロポリタン美術館の絵を使用できると知り、見出し画像を全て入れ替えてみた。マイページが美術館になったみたいで楽しい~

          メトロポリタン美術館の絵を使用できると知り、見出し画像を全て入れ替えてみた。マイページが美術館になったみたいで楽しい~

          読書感想文『結婚とわたし』

           新刊コーナーを眺めて、このエッセイ本を手に取った。題名に思うところがあったのかもしれない。  山内マリコさん。本屋さんで何度もお名前を目にしたことはあるけど、きちんと著書を読んだことはなかった。「マリコ」というお名前、ころころとして可愛くて、一人称で唱えたくなる。  コーナーの前で本を手に取った後、裏表紙のあらすじに目を通した。「同棲生活を経て34歳で結婚した著者は、パートナーが家事を3倍にするモンスターなのに絶望し、家庭内男女平等をめざす。」とある。  それを、私は何

          読書感想文『結婚とわたし』

          街歩きは森鴎外:夏目漱石=5:5がいい

           春風の感触を肌が思い出してきた。  金曜日の夕方、家の近くの商店街を歩いていたら、「今日はもう帰ろう、横浜に帰ろう」と話している人々がいた。建設現場の作業員のようだ。  話し方と場景とが、なんだかいいな、と思えた。  大学を卒業してから、地元の神奈川を離れて東京に住むようになった。実家を出たはといえ、電車で帰れる距離に両親は住んでいるし、学生時代の友人たちにも気軽に会える。首都圏の外から上京している人からしたら、生ぬるい巣立ちだと思う。それでも地元の方の地名が耳に入ると、

          街歩きは森鴎外:夏目漱石=5:5がいい

          「繊細な人間でいてくれてありがとう」

           もしも私がそう言われたら。きっと琴線が震えて、胸がいっぱいになる。その言葉をプレゼントしてくれた人を心から愛しく思い、何が解決されなくても、前を向けて、満たされた気分になるだろう。  2020年の秋に、『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は日本にやってきて、いくつかの映画館で公開された。小さい頃に過ごした愛する思い出の家を、取り戻そうとする物語である。  映画が作られた本国では2019年初夏に封切りされ、想像以上の関心が寄せられた結果、映画祭でのノミネートや受賞

          「繊細な人間でいてくれてありがとう」

          読書感想文『JR上野駅公園口』

           東京で働き始めておよそ2年が経ち、街の歩き方にもだいぶ慣れてきた。  主に仕事で歩き回るのは上野と浅草の辺り、すなわち台東区。初めのうちは毎週のように迷子になっていた上野駅で、今では携帯を開かなくても大体適切な出口を選択できるようになった。浅草では、観光客があまり選ばない喫茶店に何度も訪れていたら、顔を覚えてくれた店員さんにサービスをしてもらった。  「どんな街にも2年経てば慣れる」というのが経験知として得られ、また、毎日歩いているがまだまだ知らないこのエリアについて、興

          読書感想文『JR上野駅公園口』