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大人買いした方がよかった?

 初めて駅で『BIG ISSUE』を買えた。

 『BIG ISSUE』のことを知ったのは数年前。大学で講義を受けた時のような気もするし、自分で調べ物をしていた時だった気もする。そのくらい曖昧で思い出せないが、知ったときに「買ってみたい」と単純に思った。

 『BIG ISSUE』は税込450円の雑誌。「ホームレスの販売員が雑誌を売る」というかたちで、ホームレスの自立を応援する事業だ。1991年に英国で創刊、日本では追って2003年に始まった。現在は全国各地の駅周辺にて、販売員の方が活動している。

 定価450円の雑誌『ビッグイシュー日本版』をホームレスである販売者が路上で売り、230円が彼らの収入になります。最初の10冊は無料で提供し、その売り上げ(4,500円)を元手に、以降は1冊220円で仕入れていただく仕組みです。

ビッグイシュー日本公式HP「販売のしくみ」より

 学生時代に一度、販売員さんがいる時間帯を狙って近くの販売駅に行ったことがあった。しかしタイミングが悪かったのか、販売員さんを上手く見つけられず、買うことができなかった。
 その後は再び挑戦することもなく、いつか買えたら…とは思いつつ、雑誌の存在は頭の片隅に追いやられた。その後も、駅を通るときは大抵次の目的があって急いでおり、販売員さんに目に留めることができないでいた。
 なので、今回販売員さんを見つけることができて嬉しかった。「数年越しにようやく買える」という思いと、「雑誌の存在を思い出せた」という、二つの思いから。

 近づいていくと、笑顔で会釈をしてくださった。「1冊ほしいです」と声を掛けたら、「色んな巻数があるけど…どうされますか?」と聞かれた。そうか、てっきり最新刊だけ売っているのかと思ったら、バックナンバーも揃っていたのか。何にも考えていなかったので、各表紙をサッと眺めて、『からすのパンやさん』が表紙を飾っていた469号をお願いした。 
 内容を吟味せず即決したからか、「大丈夫かな?」と心配されているのが伝わってきた。何なら、各号で何を取り上げているか紹介してくれようとしていたようだ。適当な人間でごめんなさい。それでも販売員さんは丁寧にお会計をして、笑顔で見送ってくださった。

 さて、ずっと買ってみたかったものを無事に買えて、大満足。その後丁度時間も空いていたので、近くのカフェに入ってさっそく読む。ああ、そういえばカラスの夫婦には4羽の子どもたちがいたな。各々のその後の物語が描かれているなんて知らなかった。4羽とも別の食べ物屋さんになっているなんて、さすがだな…。

 購入する際、販売員さんが購入済みの雑誌に1枚のコピー紙を挟んでくれていた。そういえば…と読んでみると、購入へのお礼、購入場所にちなんだ地域の小話、それからX(Twitter)のアカウントが手書きで記載されていた。
 なるほど、Xで販売情報のお知らせをするのか、今時だな、と思いながらアカウントを覗いてみると、過去のポストに「まとめ買いのお客様、大変ありがとうございました。」との文字列が。

 …しまった。ああいう場ではまとめ買いした方がよかったのかな?学生上がりの気分が抜けず、たった1冊で購入感を得ていた。有難いことにある程度の収入があって、雑誌も450円とお手頃なのだから、4~5冊はまとめ買いするべきだったのかも。あ、「大人買い」できてこそ、大人になれる?これは言い得て妙だ。もしかして、各号の内容を丁寧に説明しようとしてくださっていたのも、まとめ買いを促すサインだったのかも。

 でも反対に、まとめ買いすると「私お金持ってますよ」アピールにならないかな?いつも楽しみにしている常連さんならまだしも、一見さんの私が「面白そうなので、とりあえず」といって節操なく買うのは、何だか無礼な気がする。販売員さんにとっては切実に望む対象であるお金を、粗末に扱っているように受け取られそう。以下、ぐるぐると悩むこと数分…。

 悩みながらも読み進めて、終盤。最後の方にあった決算報告の欄にて、「物価高の影響により、国内で貧困問題に取り組む団体への寄付が減少傾向にあると報じられています。そんな中、基金の活動現場にお心を寄せてくださり、本当にありがとうございます。」と書かれていた。

 「心を寄せる」ってなんだかいいな。心を寄せれば、きっともっと多くの販売員さんを見つけられる。たくさん買うことも貢献になると思うけど、まずは2冊目を買うことからだな。

▼ビッグイシュー日本 公式HP

▼『からすのパンやさん』50周年スペシャルサイト
 絵本に出てくる84種類のパンの解説が面白い。

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