“マイスター”ってなに?ドイツを学ぶ#4
こんにちは。岡田真奈です。2023年度日独勤労青年交流事業の参加者で、このプログラムの良さを知ってもらえるように体験をシェアしています。
今回はドイツ派遣4日目の午前。
「職業訓練制度」と「マイスター制度」について、ドイツ手工業中央連盟のヤニーナさんからお話を伺いました。高い専門スキルを後世に残していくために、ドイツが取り組んでいる教育システム。ぜひ興味を持っていただけると嬉しいです。
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職業訓練制度とは?
専門的なスキルを身につけた労働者養成のための教育訓練。
個人の人格形成から専門知識の習得までトータルに学ぶことにより、特定の企業に限定されない社会で活躍できる人材を育成します。
訓練期間は約3年。企業での実践的な教育が7割、残りの3割は職業学校での座学で構成され、教育の場が2つあることから「デュアルシステム」と呼ばれています。民間企業が教育の7割を担うのは社会的責任として捉えられており、ドイツの伝統に根ざした教育が行われます。職種によって差はあれど1年目から給与支給があるのが嬉しいポイント(600〜1000€/月)。外国では無給のインターンが多い印象ですが、その点ドイツは違いました!
教育しながら且つ給与支給なんて、企業側の負担は大きいのでは?とお話を聞きながら思いましたが、メリットも多くあるようです。
訓練2年目からは生産性が上がり、支払いに見合った労働人員になることが過去の経験から証明されている。
給与支給により訓練生のモチベーションが保たれ、良いパフォーマンスにつながる。
訓練生の採用は企業側に受け入れの余裕がある時のみ。(訓練終了後の正式採用を見据えた企業がほとんど)
3年間の訓練終了後には企業理解も充分にできており、専門スキルを備えた即戦力人材が確保できます。多少負担はあっても職業訓練制度は企業にとって大きなメリットになっていると言えます。
カリキュラムは国・労働組合・企業の3者の協議によって決定され、包括的な教育を行なっています。教育内容の偏りをなくすことで、会社を移る場合のコストも最小限に抑えられるんだとか。企業・訓練生どちらの立場も考えた最適な仕組みだなと思いました…!
マイスター制度ってなに?
マイスターは企業経営に必須の資格であり、職業訓練を修了していることが求められます。
ドイツではマイスターを「学士」と同レベルに認定しており、社会的な評価はぐんと高くなります。マイスターの資格を持つことで、質の高い製品とサービス提供を顧客に保障できます。さらに指導者としての資格も保持したことになるため、職業訓練を実施できるようになり、後継世代を確保することができます。
取得にかかるのは1〜2年。ほとんどの人が仕事をしながら学校に通って取得しています。
職業訓練と異なるのは、自費で教育を受ける必要があるということ。取得にかかる費用は6,000〜10,000€と高額なため、全ての人が持てる資格ではありませんが、国の奨学金や就職先の企業による援助を受けながらマイスター取得を目指す方もいます。
別日にメーカーの企業訪問をした際、22歳ながら既にマイスターの資格を持ち、部門リーダーとして働かれている方がいました。私よりも年下の方が責任のあるポジションで活躍していて、自分も頑張らなくてはと思いました。ドイツでは10代の早い段階から自分の将来を見据えた選択をしていきます。大きなプレッシャーになるだろう…と正直な感想を持ちましたが、伝統的・専門的なスキルを守る上で職業訓練制度やマイスター制度は有効だと思いました。
次回の更新について
最後までご覧いただきありがとうございました。職業訓練制度は日本の高等専門学校に近いのかなと思います。
労働人口の減少、後継者不足は日独共通。伝統をいかにして守っていくか、私たちが向き合わなければならない今後の課題です。
次回の記事ではドイツ研修3日目の午後に行われた、ベルリン市内歴史研修ツアーの様子をお伝えします。東西分離の歴史を生きた現地ガイドさんから当時の様子を伺いました。ベルリンの壁の様子も写真をお見せしながらご紹介。
10月1日(日)に更新予定です。フォローしてお待ちいただけると嬉しいです:)
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