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ドイツでワークライフバランスの講義を受けました。#3

こんにちは。岡田真奈です。
2023年度日独勤労青年交流事業の参加者で、このプログラムの良さを知ってもらえるように体験をシェアしています。

今回はドイツ派遣3日目
はじめて電車移動をして、日独勤労青年交流事業を運営しているベルリン日独センターを訪問。オリエンテーションとワークライフバランスについての講義を受けました。

講義は3時間たっぷり。キャリア形成におけるジェンダーギャップの現状を数字で追って見たり、”ケアワーク”の重要性についてお話をいただきました。ドイツの今を知れる貴重な時間。質問が止まらないほど、みんな興味津々でした。

少しばかり長くなりますが、自分の経験や現状と照らし合わせながら読んでいただけると嬉しいです:)



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ドイツ派遣3日目(7/19)

3日目は電車移動からスタート。ベルリン日独センターに向かいます。

はじめての電車移動

U Wittenbergplatz駅
U Oskar-Helene-Heim駅
季節限定のいちご販売Box

電車に乗り「Oskar-Helene-Heim」という駅へ。前日に切符は購入していたのでスムーズな出発でした。

ドイツに来て驚いたのは、改札がないこと
タダで乗車できちゃう?なんて思っていたところ、車内に巡回の怖そうな男性が来て切符確認されました。遭遇率はそれほど高くないらしく、レアな体験ができました。万一、無賃乗車をすると60€(約1万円)の罰金です。高い。

2枚目の写真は駅に出店していたいちごの屋台です。夏になぜ?と珍しく思い、カメラを取り出しました。ドイツでは5月〜7月頃がいちごの旬だそう。後日食べてみましたが、ショートケーキに合いそうな粒のしっかりした甘酸っぱいいちごでした。日本と味は違えど美味しかったです。

ベルリン日独センター

ベルリン日独センター

駅から数分歩いて、目的地のベルリン日独センターに到着。私たちが参加している日独勤労青年交流事業の運営をしてくれている機関です。

こちらの施設では現地の子どもたちに日本文化を伝えるイベントを開催したり、ドイツに住む日本人の交流の場としても利用されているそう。図書館があったり、日本を感じられる小さな庭園も。スタッフの皆さんが優しく迎え入れてくれたアットホームで素敵な場所でした。

講義「男女双方にとってのディーセント・ワーク:ドイツ視点で捉えるワークライフバランスと家庭と仕事の両立ーコロナ禍の影響も含めて」

研修の様子

施設内の広いホールに案内され、オリエンテーションを受けた後、講義に移りました。講師はギーセン大学教授のウータ・マイヤー=グレーヴェ先生。気分は学生、みんな真剣な様子でした。キャリア形成におけるジェンダーギャップの現状と、多くの女性たちが従事している”ケアワーク”の社会的価値向上、この2つを中心にお話いただきました。

■ジェンダーギャップについて
講義の前半はドイツの現状を数字で追いながら見ていきました。「賃金格差」「キャリアパス」「育児休暇」各テーマぜひご覧ください。

  1. 賃金格差
    まずは賃金格差について、女性の賃金が男性に比べて低いのは各国共通の課題になりますが、2021年OECD「男女間賃金格差(Gender wage gap)」のデータでドイツはその差18%でした。ユーロ圏では最も良くない数字です。賃金格差を生む主な要因は、出産や育児、介護を機に正社員から非正規雇用・パートタイム労働に移行する女性が多いことが挙げられます。生涯年収が少ないことで老後の年金支給額に大きな差が開き、将来への不安を抱える女性が多くいます。講義終了後に日本のデータを調べてみると、22.1%でした。ランキングではなんと下から3番目。ドイツよりさらに悪い数字でした。

  2. キャリアパス
    続いて、性別がキャリアパスに及ぼす影響についても言及されました。女性は出産・育児を機に、会社の休暇制度を利用して一定期間お休みを取ることが国の法律で義務付けられています。これは母親と子の健康を守る上で必要な期間であると納得できますが、それ以降はどうでしょうか。育休復帰後の時短勤務や、保育園が定員オーバーで預け不可になった場合など、その多くは母親が担っています。母乳から離れた子どもの養育は父親でも充分に役割を果たせるのでは?と疑問に思ってしまう。休暇の分だけ仕事の経験値は単身の同期と開いていきますね。人生長い目でみれば大した差じゃないという意見もありますが、本当にそうでしょうか。
    「もし2人目ができたら?」
    「育休前と変わらずフラットな評価をしてくれる?」
    「昇進のチャンスを与えてくれる?」
    出産後もキャリアを諦めたくないと思うと、いろんな不安や疑問が生まれてきます。バックアップ体制が会社になければ退職を選択する人も多い。ドイツも日本も労働者不足が深刻化していくことが予想されています。働く意志がある人が働けないなんて、もったいない。

  3. 育休取得率
    男性の育休取得率については両国ともに増加傾向にありました。育児休暇を取得した男性は家庭への理解が深まることがわかっており、職場と家庭どちらにもプラスの影響が出ることが期待されています。ただ、グレーヴェ先生からは「男性の中には育児休暇の本来の目的を理解していない人もいる」と指摘がありました。資格取得の学習に休暇を充て、子育てはパートナーの女性に任せきりにした人がいたんだとか。夫婦間で納得していれば何も問題はありませんが、子どもが大泣きしている中そっちのけで勉強されたら私は許せないだろうなと思ってしまいました。何のために家にいるんだよって。今では死語になっている『育メン』。育児は夫婦が支え合って行うものであってほしいと私は思います。

仕事、結婚・出産・育児・介護といったライフイベントによって、今思い描いているライフプランは大きく変化する可能性がある。長期的な視点で捉え、アップデートする必要があるとグレーヴェ先生は教えてくれました。私は来年予定しているビッグイベントに向けて、準備を始めました。今しかできないことがあると思うので、後悔しないように先を見据えた選択をしていきたいです。

■ケアワーク(SAHGE職)について
続いて2つ目のテーマ。”ケアワーク”は、介護やお世話が必要な人への支援を指す言葉です。ドイツでは、ケアワークの総称を下記のように頭文字をとって「SAHGE職」と呼んでいるそうです。SAHGE職の8割は女性、労働者数は年々増加傾向にあるものの、賃金は平均を大幅に下回っています。


SA:社会福祉職(Soziale Arbeit)
H  :家事に近いサービス業(Haushaltsnahe Dienstleistungen)
G  :介護・看護(Gesundheit,Pflege)
E   :保育(Erziehung)


コロナ禍において女性の無償の家事労働・ケアワーク負担はさらに増加しました。子どもをもつ母親の平均労働時間が大きく削減され、実際5人に1人はコロナ禍で完全に仕事をやめていたそうです。ドイツは小学校が半日で終わってしまうこともあり、やむを得ない状況だったんでしょうか。
ただ、コロナが及ぼした影響は悪いことだけではなく、私たちに気づきも与えてくれました。コロナ禍を経験したことによってSAHGE職がいかに社会にとって重要か、必要不可欠な仕事であるか人々に認識されました。SAHGE職の存在無くして、生活がままならない人が大勢いたためです。
グレーヴェ先生が言及していたのは、SAHGE職を「生計を立てる職」に発展させる必要があるということでした。男性にとっても魅力的な仕事にするために、MINT(理数・IT・技術)職と引けを取らないくらい、良い条件下で働けるようにすることが望ましい。国家を支えているのはMINT職だけではない。制度の整備なども必要ですが、まずは人々の意識を変える必要があると話されていました。

*おまけ*

講義の内容はいかがでしたか?あれもこれもと書いていたら長くなってしまいました。終わりに、ベルリン日独センターで食べたごはんを紹介したいと思います。

昼ごはん「マウルタッシェン」

マウルタッシェン(Maultaschen)

まずはお昼ごはん。マウルタッシェンは、ドイツ版の餃子で南部地方の郷土料理です。日本の餃子と同様に、焼き・蒸し・スープなどいろんな調理法で食べられているそう。餡はお肉とベジタリアン用で2種あり、ホウレンソウと玉ねぎが一緒に炒めてありました。見た目少なそうに見えますが、しっかりボリュームがありましたよ。

夜ごはん「グリューネゾーセ」

グリーンソースにソテーした鮭のお料理

続いて夜ごはん。グリューネゾーセ(グリーンソース)はフランクフルトの郷土料理。ヨーグルト、サワークリーム、マヨネーズにハーブと刻んだ玉ねぎが入った冷製ソースです。上にのっているレモンをかけてさっぱりいただきました。美味しかったのですが、塩味があるお魚にはやっぱりご飯が欲しい…!日本人だな〜と思いました。

次回の更新について

ドイツ手工業中央連盟での講義風景

最後までご覧いただきありがとうございました。
次回はテーマ変わり、ドイツの教育システム「職業訓練制度」「マイスター制度」について講義を受けた派遣3日目の様子をお伝えしていきたいと思います。

9月24日(日)更新予定。ぜひお楽しみに。


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