経営者として、映画プロデューサーとして、2023年のこれまでを振り返ってみる。
随分久しぶりのnoteになってしまいましたが、その分アレヤコレヤとやっていたんだろうと想像していただけると幸いです。
はい。相変わらずなコギトワークスプロデューサーの関です。
いや〜、年々思いますが、今年も、まぁありがたいことに濃厚な日々であります。そんな慌ただしい中の小さな身近な変化でいいますと、今年3月にLondon、NY、Toronto、Vancouverから帰国後に体重計に乗ってみたところ、この数年見て見ぬふりを決め込んでおりましたが、過去一番に豊かになっておりまして、いや、流石にこれは不健康過ぎると反省して、それ以降「腹四分習慣」を心掛けまして、そこからなんとか -10Kgを達成しました。この歳で一気に痩せると、変な心配をされてしまいますが、むしろすこぶる健康になりました。もうあと4Kgほど絞りたいと思っておりますが、50歳を目前に心身ともにハツラツで行きたいと思う今日この頃です。
そんなどうでもいい変化もあったのですが、そんなことよりも、なによりも、今年の仕事は、我ながら大変有意義なことばかりです。
まずは、やはり、一番の出来事は、映画『箱男』の製作です。
今年の5月のカンヌ国際映画祭の場で製作発表の記事が出ましたが、この企画は、80年代半ばに石井岳龍監督(当時は石井聰亙)が原作者である安部公房先生ご自身にお会いしたところからはじまり、それ以降何度も着手しながらもなかなか映画化されない、謂わば伝説的企画なのですが、そんな中、2013年初旬に石井監督から「実は関くんとやりたい映画がある」と言っていただいたのが、この映画『箱男』なのです。
そこからこの10年、ずっと歩み続け、ようやく今年7月に撮影することが出来ました。安部公房先生の生誕100周年にあたる来年2024年に公開を予定しておりますが、製作に至るまでのプロデューサー話は、この数行では語り尽くせないので、また別の機会にじっくりとお話させていただければと思います。
とはいえ、ボクにとっても、コギトワークスにとっても、この映画『箱男』の製作は、とてもとても大きな出来事なのです。公開、楽しみにしていてください!!!
ちなみに、製作発表の記事が出た今年の第76回カンヌ国際映画祭のacid部門にて、弊社が制作した二ノ宮隆太郎監督「逃げきれた夢」が選出されたこともとても光栄な瞬間でありました。
そんな巨大な挑戦をしている中、面識のなかった尊敬するレジェンドなプロデューサーの方々からご連絡をいただく機会も多くありました。
「ちょっと話をしよう」ということで、「最近のインディペンデント事情」や「配給・ミニシアター」のこと「海外との共同製作」の件「業界の労働環境・映適」について、そして「今後一緒にやろう」などなど、話は多岐に渡ることが多いのですが、憧れていた先輩プロデューサーから、なにかしら興味を持っていただけるということは、本当に誉れなことです。
中でも、ボクが初めて映画の現場に参加した作品が2001年の万田邦敏監督『Unloved』なのですが、そのプロデューサーである仙頭武則さんと改めてお会い出来たことは興奮しかありませんでした。「なんだ、関くんって君か、覚えているよ」と言ってましたが、当時制作見習いだったボクを本当に記憶していただけていたのかは疑わしいですが(笑)それでもそんなことを言っていただき本当に嬉しかったです。
そして、それ以降「映画プロデューサー」という側面だけではなく「経営者」の大先輩としても、過去のご経験をお聞きする度に、ちょっとここには書けないことばかりですが、サンセントシネマワークスの歴史、仙頭武則というプロデューサーが成し得たことの数々は、今のボクにとって道標になることばかりで、本当にありがたいです。自分を信じて、切り開いていくのみなのです。
ここ数年は、これから先を開拓するための「挑戦・勝負の年」と心に決めて、「制作プロダクション」として請け負うことだけに限らず、「自社製作」に力を入れているのですが、故に、正直、足元はなかなかにシンドイ状況で、資金繰りとして「株」や「投資」「スポンサー」といった方向に対して積極的に関わるようにしています。
そんな中、実は、「自社株を売る」ということを半年間ほど真剣に画策しておりましたが、なんだか「いや、違うんじゃないか?餅は餅屋だろ!」と思い直し、実行する直前に株を売ることは辞めました。
なので、引き続き「安定」からはほど遠いのですが、我々は映像を制作してなんぼですので、とにかく仕事を取って来るということを強化しようと誓ったこの8月なのです。
そんなことを考えながら、弊社の強みの一つである「海外チームとのコラボレーション」については、一昨年くらいからお声掛けの案件が増えております。ただ去年くらいまでは、いざ準備を進めていても、撮影直前でどうしてもコロナで日本での制作を見送るみたいなことが続きとても残念でしたが、それでも「John Wick Chapter4」やUS大手配信会社製作の大型ドラマなどに携わることが出来、国内映画では経験出来ない規模を扱うことで、制作プロダクションとしての視野を広げることが出来ました。
また、今年9月に開催の第71回サン・セバスティアン国際映画祭の新人監督コンペティション部門に正式選出された、シンガポール・日本・スロベニア共同製作映画、Nicole Midori Woodford監督『LAST SHADOW AT FIRST LIGHT」にもプロデューサーとして参画することが出来、日本のロケを引き受けるだけの関わりではなく、海外のプロデューサーとパートナーを組み「共同製作」をしていくという道も見えてきたと感じております。
そして、実は、スーパー大型過ぎて、今のボクの立っている場所からは、その山の全貌がぜんぜん掴みきれていない、海外3カ国との「共同製作映画」の企画開発も小股ですが一歩ずつ進んでおり、そのプロジェクトについてもずっと緊張しっぱなしです。ほんとにやれるのか?いや、もう契約もしたし、進むしかない。やってやるしかない。と思ってはいるのですが、何年後に成立することが出来るのか、その時が来たら、またご報告させていただきます。
それと、これは、またまったく別次元の話になりますが、日映協の理事を務めている流れで、4月から発足した「日本映画制作適正化機構」略して「映適」の一般社団法人の正会員にもなりまして、今後の日本映画界全体の労働環境問題を改善していくために、制作プロダクションの立場から積極的にこの機構に対して意見をしていきたいと考えております。この問題は、経営者とか、一プロデューサーとしての視線だけではなく、業界全体を正当なバランスで見渡していかないといけないと思っております。はい。超えるべき壁はまだまだかなり多い状況ではあります。
と、責任の伴うことを務めさせていただいておりますが、今、自分の目の前の挑戦としましては、弊社一社で製作を行った映画『almost people』(オールモストピープル)の【全世界同時期公開】という試みです。
2020年から制作プロダクション業務だけではなく、自社で製作した映画に関しては、配給・宣伝業務も行うようになり、今度はその活動を国内の劇場だけに留まらず、海外のミニシアターにも自社自らが、直接配給・ブッキングをしていこうという挑戦です。
通常のビジネススキームとしては、国際映画祭にエントリーをして、晴れて選出され、そこでの上映を経て、各国のバイヤーに買っていただくという構造なのですが、映画祭というルートだけではなく、海外の方に観ていただけるすべはないのかと考え、地元のセールスカンパニーなどを介さずに作り手である我々自らが劇場に直接交渉をするというビジネススキームです。
要は、"Farm to table" 産地直送で、映画を世界の観客に届けるという選択肢です。
昨年末にこの活動に対してクラウドファンディングを行い、多くの支援をいただきましたが、その成果を表す第1弾の映画がこの『almost people』なのです。
すべての業務を弊社一社で行うことで、収益構造もシンプルになるので、そこで得られる収益は、監督をはじめ、メインスタッフ、主要キャストに対して「成功報酬」の分配を行うということも、このビジネススキームの特徴の一つであります。
いずれにしても、風呂敷は大きく広げたので、その成果を示さないといけないと強く思っておりますが、この『almost people』は、とても見応えのある映画に仕上がっているので、映画を信じて、とにかく周知を広げていきたいと考えています。【予告】
一ヶ月後の 9月30日(土)に東京ユーロスペースをはじめ、国内15館、London、NY、トロントほか、世界同時期公開ですので、みなさま是非、お近くの劇場でご覧ください。
と、自分の記憶を遡ってみましたが、振り返る時間も惜しいので、今日はこのくらいにしておきます。
今後、プロデュースしたい映画ももちろんまだまだありますし、経営者としてもこれまでにないことを一つづつ丁寧に実現していこうと企んでおります。
「なんか、コギトって面白そう」と思っていただけるよう、突っ走っていきたいと思います。
プロデューサー 関 友彦