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『箱男と、ベルリンへ行く。』(十九)


『最終日』
 
このシリーズも回を重ねて19回目、いろいろ書いてきました。
そもそものテーマは、ベルリン国際映画祭に映画「箱男」が招待されて、シナリオライターも顔を出しましたよ。せっかくベルリンへ行ったので、どんな様子だったか書いてみよっか?ということで始まりました。テーマは解消できたでしょうか。
先週、美術館を回った様子を書きましたが、せっかくなので、その先もしたためておきます。
2/19日、一応、日中、休暇をもらったとはいえ、夕方から公式行事が一応ありまして、それはなぜか日本大使館のパーティにお呼ばれするというものでした。
帰宅して、ケバブをキメて、少しだけ昼寝して、起床。再び一張羅に着替えて、いざ出発。電車に乗って、日本大使館へ。
ベルリン国際映画祭から声がかかった日本人関係者がたくさん呼ばれ、どうしてかわからないんですけど、企画プレゼンが始まったり、ヴィム・ヴェンダースが来たり。もちろん、わが箱男チームからは、石井監督、そして永瀬正敏さんもやって参りました。
で、挨拶したりして、よく分からないうちにお開き。というより、中座というのかな。
 

至近距離のヴェンちゃん。


なんか、シナリオライター、いや、主語を大きくしてはいけませんね、私、パーティと名の付く集まりがどうも苦手らしいのです。
あれ、得意な人いますよね、どんどん話しかけて、友達になって、後日のお付き合いに発展させられる人。ほんと、うらやましい。
そうそう、大使館のパーティでも、お母さまと一緒にいらっしゃっていたドイツ人の映画を作っているらしい男の子が話しかけてくれました、一生懸命会話を続けようとするのですが、「日本の映画が好きです」というので、「どんな映画が好きなんですか」と、聞くと、「黒沢清や清水崇の映画などなど」と答えたので、「あ、清水さんとは一緒に仕事をしました」と、やや胸を張って作品名を伝え、携帯で海外ポスタービジュアルまで出したのですが、「あはははは」と、愛想笑いを返され、内心、『お前、知らんがや』と思ったので、早々に会話を切り上げてしまいました。
ダメですね、なんというか、とりあえずパーティに参加して、浮薄な会話で、コネクション作りましょうみたいなメンタリティを俺ももちたいです。
 
日本大使館を中座して、監督たちと別れ、私と関さんと三峰さん、「どうしよう」ということになりました。実は、渡独前、ベルリン国際映画祭当局からインヴィテーションが届いていたのです。それは、Uberプレゼンツベルリン国際映画祭公式パーティへご招待しますよぉ、というものでした。
顔を見合わせて「一応、行っとく?」「一応、いっとこか?」「ま、一応ね、一応」
パーティは、カール・マルクス通りにある、Café Moskauという場所で催されているようです。
よし、まず、通り名が気に入った。カフェの名前もまあイケとる。
ということで、ま、一応、行っとくことにしました。パーティが苦手と行ってるそばから。
 

これが公式パーティ会場。すごいオシャレですわ。


たしかに、そのカフェはすげえおしゃれ。入り口を入るとフォトセッションコーナーがあり、セレブが通ると呼び止められ、写真をバチバチ撮られるというシステム。もちろん、私らは呼び止められず、どうぞどうぞ中へみたいな感じでスルー。ほんで、どんなセレブが来るんだてと見ていても、止められる人止められる人どこのセレブやねんの人たちが写真を撮られているようにしか私には見えません。いや、どこかではセレブなんでしょう、私が知らないだけで。
中に入りました。どんな雰囲気かというと、そう、それ、今、あなたが頭の中で想像したそれ、まさしくそれです。誰もが頭の中で想像できる海外のパーティそのもの。
一応招待客なので、酒は全部タダ。やったー。
すみっちょに座って、タダ酒を三人で飲み交わすのみ。
 

ロの字の建物内に、こんな感じのフロアが五つくらい。
まだ時間が早いから過疎ってるっぽく見えるけど、
全然、そんなことなかったですよ。


そこで、ふと思い出しました。『ストライク・ジャーマニー』どうなった?
二人に聞いてみました。
その日、私が休暇をもらっている間、関さんと三峰さんは、きちんと仕事。プロダクションマーケットへ赴いていたのです。そこでの一コマ。
数人の活動家が、押しかけて、屍体パフォーマンスをして、一時、やや騒然となったのだそう。
「ほーん」
ま、ここで、言葉使いを忖度しても仕方がないので、書いちゃいますが、ぬるいなぁ。
エコ活動家が道路に寝っ転がったり、有名絵画にペンキぶっかけたりしてますが、あの延長ですわ。(あれ、私、ほんとムカつくんですわ。『有名』絵画、狙うでしょう。『有名』ってペンキぶっかける方が思ってるってことなんですよね。もう、なんか語るに落ちてる感じがします)ぬるい、ぬるい。はあ、やだやだ。ティック・クアン・ドックくらいのことやるのかと思ってビビってたわ。
 
で、パーティですが、大方の予想通り、二三本タダ酒喰らって、早々に退散。やっぱつくづくパーティは合わん、それを確認しに行ったようなもん。
 
帰って寝て、いよいよ、次の日は帰国。私だけ。
関さんと三峰さんは、引き続きベルリンに数日残り、その後はロンドンを経由、そこでいろいろ商談をしてから、帰国する予定。はあ、さびしいなぁ。
はじめはなんかおそがいような所だと思われたベルリンも、ここにいたり、大好きな都市の一つになりました。絶対、また来たい。
 

ブランデンブルク空港の喫煙所。
このときはまだ、ヒースロー3Tに喫煙所がないことは知らない。
地獄の20時間が始まります。


と、まあ、こんな感じで、私のベルリン行は幕を閉じていきました。
 

Bye Bye Berlin!


実は、これを書いている今日は、2024年8月5日。なんと、ハコの日だそうです。
最終回にふさわしい日付。渋谷のユーロスペースでは、箱をカブることができるイベントがあるそうですよ、私も後で行ってみよっと
8月に入り、いよいよ、日本での公開まであと二週間と少し。こう書いてみて、少々緊張してきました。
 
私でも、まあ、この日まで、『箱男』について、いろいろ喋り、いろいろ書き、いろいろ考えては来たので、まだまだ語り尽くせぬとはいえ、そこそこ語り尽くした感もなきにしもあらずなのですが、しかし、
とにかく、映画「箱男」は面白いです。
なかにはそりゃ、面白くない人もいると思いますけど、だいたいからして面白いと思います。
面白くないとその瞬間思ったとしても、おそらく、それでも映画自体に面白みは詰まっていると自信を持っていたりします。
そうだ、ちょうど、夏休みだし、中高生の方々、夏休みの読書感想文の宿題、『箱男』にしてみたらいかがですか?
安部公房なら国語の先生にウケがいいこと間違いなし。
「ほお、箱男か、やるなぁ」と思われるに決まっています。
小説は少し難解。でも大丈夫。なんたって8月23日に映画が公開するんですから。
映画の方はというと、原作を踏襲しながら、ある種、原作のストーリー部分を、かみ砕いて整理して、描いています。さらに、登場人物を、永瀬正敏さん、浅野忠信さん、佐藤浩市さん、三人の名優が演じているんです。感情移入しまくりです。
あと、忘れて欲しくないのは白本彩奈さん、めちゃくちゃ推しです。なんなら、この映画、彼女の映画と言ってもいいくらい。
なので、原作を読んで、なんなら、読まずとも、映画を観てしまえば、読書感想文、絶対書けちゃう。
 
というわけで、8/23日の『箱男』公開が待ち遠しいですね。
では、劇場でお会いしましょう!
 

みんな、絶対観てくれよな!


ながらくお付き合いありがとうございました。

(おわり)
(いながききよたか)


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