マガジンのカバー画像

コギトの本棚・エッセイ

107
ここでは主に随筆や独り言を取り上げてお届けします。
運営しているクリエイター

#いながききよたか

【コギトの本棚・エッセイ】   「1945 香月泰男展」

香月泰男展に行った。練馬区立美術館でやっている。が、あいにく3/27まで、あと三日しかない。巡回するようなので、どこかで見かけたら立ち寄ってもいいかもしれない。
ちなみに、練馬区立美術館は都内でも屈指の美術館だ。個人的には六本木や清澄白河よりも……。

会期中に、戦争が起きたという点でもアクチュアルな展覧会となった。
目玉は作家のライフワークである『シベリア・シリーズ』である。

書き方が難しいが

もっとみる
映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その4

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その4

4、
2017年7月22日、シナハンを終え、私たちは帰京しました。
帰ってすぐに、シナリオ執筆に取りかかろうと考えていたのですが、そのまえに、一つ、私は早川君に、あるお願いをしていました。
それは、登場人物の名前を監督に決めてもらうことです。

主人公と、彼とゆかりの深い兄妹の名前です。なぜか、その三人は私が決めるよりは監督が決めなければならないと感じていました。
翌23日には、すぐに早川君から返

もっとみる
映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その3

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その3

3、
シナハン三日目、ひとまず映画の舞台に関する成果はあげたと一路、宇和島から東へと車を走らせました。

高知県は目の前、四万十川へと到着しました。7月の22日、暑い盛りです。
もう遊ぶ気満々で、ひとしきり少年に戻って、下着のまま川遊びをしました。年甲斐もなくはしゃぎ、心の底から本当に楽しかった。

頭上には沈下橋があります。あそこから飛び降りると早川君が言い出し、見事ジャンプ。
いながきさんも是

もっとみる
映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その2

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その2

2
それからすぐ私は早川君に、彼の郷里へと連れ出されました。シナリオハンティング、通称:シナハンです。

私の中には、まだ、今の『凪の海』につながるスジのようなものはありませんでした。
通常シナハンといっても、さまざまなケースがあります。すでに作家の中に確固たるスジがある場合も、舞台となる土地の空気をぼんやりと吸うために行く場合も。今回は後者でした。

松山空港におりたち、早川君の父君が運転する車

もっとみる
映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その1

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その1

現在、ユーロスペースにて、『凪の海』が公開されています。
私は、シナリオで参加しました。
映画鑑賞の一助になればと思い、つらつらとその発端や少しだけ内容につっこんだことを書いてみたいと思います。(いわゆるネタバレはしないつもりです)

1

2017年、あれはたしか6月、だったでしょうか。だから、今からちょうど三年前ということになります。早川君から、(普段の呼び方で書こうとおもいます)突然、電話が

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「こどもについて」

昔、『ジュニア』という映画があった。アーノルド・シュワルツェネッガーとダニー・デビートのダブル主演である。
同じ主演キャスト二人で作られた『ツインズ』という映画が好評だったのか、監督もアイヴァン・ライトマン、主演も同じという布陣で作られた同作は、かすかな記憶を頼りに思い出してみてもさして重要な作品とは思えない。
しかし、忘れがたいものもあって、それは同作のテーマが『男性の妊娠』だったことだ。

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「アウトプットは尊いか?」

先日、国立近代美術館で熊谷守一を観た。
ちょうどその日岡﨑乾二郎氏の講演があるということで楽しみに出かけていった。
まず絵を観た。ほぼ年代順に網羅してある大量の展示だった。
熊谷守一の絵は、いわゆる晩年になればなるほど、一枚だけ取り出して見ても、それはどうも安直なものに感じられやすい。
例えば、まさに僕がその通りに思っていたわけだが、講演の冒頭で岡﨑氏が言った通り、熊谷守一の絵は、およそ百貨店など

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「豚足」

油断していたらすっかり年の瀬です。
無暗に今年のことを振り返ったりしますが、さて何か一つでも成し遂げたことがあったのでしょうか。自信がありません。

年頭に一つ決めたことがあります。
仕事柄、本を多く読まねばなりません。元々活字を読むことは大好きなのでこんなによいことはないわけですが、よく考えてみると、ここ数年仕事にまつわる読書にまったく快楽を感じていない自分に気づきました。
仕事読書は、読書とい

もっとみる
【コギトの本棚・エッセイ】 「conscientious」

【コギトの本棚・エッセイ】 「conscientious」

南予のとある半島の突端に位置する蒋淵という場所に十日ばかり出張していました。
自ら書いたシナリオの撮影を手伝うということは、どこか御法度のような気持ちがするのであまりしませんが、ごく限られた予算と有志の映画というわけで、今度ばかりは止むを得ず、恥を偲んで行って参った次第です。

自主映画だけに人選が面白く、撮影部照明部は外国人部隊でした。(部隊と言っても三人ですが)スウェーデン出身のカメラマンに、

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「列ハラ」

あらゆる公明正大さみたいなものがけっこうな害悪だと考えている節がありまして、常に普遍的な正義を執行しようとしている人間はいつかしっぺ返しを食らうものです。

たとえば、他人に迷惑をかけることを常に指弾する人は、果たして他人に迷惑をかけずに生き続けられるのでしょうか。そんなことはありません。
おそらく他人に迷惑をかけたことがあるだろう彼、にも関わらず常に他人を指弾する、大いなる矛盾です。僕はこの矛盾

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「努力は報われない?」

昔からスピリチュアルの類にどうしても苦手意識があります。前世とか占いとかそういうヤツです。
別に憎んでいるというほどファナティックではないのですが、同席相手が目をキラキラさせながら、「霊感が強い」などと話し出すと、途端に白けてしまう自分がいます。

ただ僕が片田舎を飛び出しどっぷり今いる業界に漬かりだして驚いたことは、意外なほどこの世界にはスピ系が好きな人が多いという事でした。
もう十年以上前、プ

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「トイレフリー」

忙しいのか忙しくないのかいまいちわからない毎日を送っています。最近シナリオを一本書きました。必ずやよい作品になるでしょう。

実は明確に『お盆』というのがいつなのか、いまいちわかりません。とにかく八月の中旬はなんとなく世間は夏休みなんだなぁというくらいで、周囲がいつからいつまで休みで、いつから仕事を始めているのかいまいちつかめないので、物事があまり動いていないような感覚になります。
僕も先日『お盆

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「翻訳文学」

先日、この『本棚』を監修してくれているN氏と呑んだ。
現在のN氏はなにしろ勤勉で読書に余念がない。先日話題に出したバルトの『明るい部屋』を早速読んだかと思えば、現在はローティに手を出しているという。ドストエフスキーも五大小説のうち四つ読んでいて、五大小説以外の『地下室の手記』を特に気に入っているという。聞くところによると『ホメロス』も『ファウスト』も読んだらしい。
話題はドストエフスキーの翻訳を手

もっとみる

【コギトの本棚・エッセイ】 「AI」

先日、ご飯を食べながら七時のNHKニュースを見ていたらこんな話題に出くわしました。
「心を持ったAIロボット」、なんでも人の感情を察し喜怒哀楽の『仕草』を表現するロボットが発売されるのだとか。確かに、ニュース映像の中でそのロボットは、人間が笑えば、搭載されたカメラがその表情を読み取り、喜んだ『仕草』をしたり、反対に無表情だとじゃれついてきたりする『仕草』を表現していました。
先に断っておくと僕には

もっとみる