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姉と妹

 朝の地下鉄の駅、人で溢れかえる改札を出たところに、母と娘が人波に流されるみたいにワラワラと出てきた。
 女の子は幼稚園の年長さんくらいだろうか。花柄のワンピースと麦わら帽子をかぶった活発そうな女の子だ。
 その時、
 「あっ!」
 とお母さんが叫んで、後ろを振り返った。
 すると、それを察した女の子が、パッと後ろを振り返って、スカートをひらひらとさせながら後ろに駆け出したのだ。
 後ろの大人たちの影に、二人にはぐれそうになった妹が見え隠れしていて、姉は一目散に妹に駆け寄り、その手をつかんで母親の元へ駆け戻ってきたのである。
 二人ともお揃いのワンピースと麦わら帽子だったのだけれど、大人たちの波をひらりとすり抜けながら。

 お姉ちゃんは、母の声で妹がいないのに気づいて、誰に言われるまでもなく、自分の頭で何をすべきかを瞬時に考え、そしてすぐに行動したのだ。

 すごいな、と感心した。

 これがお姉さんの気質なのだろうか?

 末っ子のぼくにはとてもできなかっただろうな、と思う。
 ぼくならば、ぼーっと母親の顔を見て、じっとしてるだけだったかもしれない。

 手をつないで母の元に駆け戻ってくる二人は、とてもかわいかった。

 彼女も、これからの長い人生、いろんなことにぶち当たるだろう。
 彼女の考えや行動を否定する人間も出てくるかもしれない。
 そうやって学んで、成長していくのが人生。

 でも、今日のように、自分のやるべきことをとっさに考えて、それをさっと行動に移す彼女の素晴らしいところ。それをなくさないよう、育っていってもらいたいな。

 と、そんなことを、ただの通りすがりのおっちゃんは思ったのでした。



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