2023年8月の記事一覧
【短編小説】ホテル・カリフォルニア
あの男が残したのは車だけだった。
冬のまだ夜が明けきらぬ頃合い。
私は真っ赤な旧型のジープに乗り込み、車の量が少ない明け方の道路を走りつづける。しかもときにはブレーキをできるだけかけないようにしながら、尋常ではない速さで疾走するのだ。
家では、ベビーベッドの柵の中で赤ん坊のマヒロが眠っている。私は、薄暗い部屋でマヒロの寝顔をそっと見下ろす。赤ん坊はすやすやと寝息をたて、ときどきその小さな
あの男が残したのは車だけだった。
冬のまだ夜が明けきらぬ頃合い。
私は真っ赤な旧型のジープに乗り込み、車の量が少ない明け方の道路を走りつづける。しかもときにはブレーキをできるだけかけないようにしながら、尋常ではない速さで疾走するのだ。
家では、ベビーベッドの柵の中で赤ん坊のマヒロが眠っている。私は、薄暗い部屋でマヒロの寝顔をそっと見下ろす。赤ん坊はすやすやと寝息をたて、ときどきその小さな