【小説】純文学まとめ③
なぜもっと早くに出会っていなかったのだろう。いや、出会っていたはずだ。大人になり、作者や時代背景についてわかることが増えたからこそ、面白く感じることができるのだろう。読めば読むほどハマっていく。3作品読み終えたので一記事更新。ネタバレにご注意を。
谷崎潤一郎『痴人の愛』
面白かった…。物語は源氏物語のように譲治がナオミを育てる関係から始まる。ナオミの自我がはっきりと出て手に負えなくなり、ナオミを手放す。ナオミがいないと譲治がヒステリーを起こすようになり、「これから何でも云うことを聴くか」「うん、聴く」「あたしが要るだけ、いくらでもお金を出すか」「出す」となる。外面的で物質的にこうして見ると「譲治気持ち悪っ!」となるだろう。しかし、内面的に心理的に見てみると、やはり「譲治気持ち悪っ!」となるのである。
さすが、耽美派の作家だけあり、描写が細かい。
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
美しい世界観。独特のオノマトペや色彩語。鉱物を用いた情景描写が宮沢賢治の世界へ誘ってくれる。この物語の燈台守の言葉が印象的。「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」それに対する青年も。「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」宮沢賢治、自分に言い聞かせてるんじゃないだろうか。ほんとうのさいわいは一体なんだろう。
『雨ニモマケズ』からもわかるけど、本当に他人のためなら自己の犠牲を厭わない人だなあ。
宮沢賢治『風の又三郎』
2作連続で宮沢賢治。大人たちが発破(ダイナマイト)を使って自然を破壊する場面。子どもたちが毒もみ(山椒を川に撒いて魚を獲ること)を楽しんで行う場面。三郎の描かれ方が怖い。「モリブデンの鉱脈は当分手をつけないことになった」という状態になり三郎は転校する。風の又三郎は、自然の意思そのものだなあ。もっと味わって読めそう。こちらもオノマトペが素晴らしい。
あたりがにわかにシインとして、陰気に陰気になりました。草からは、もうしずくの音がポタリポタリと聞こえてきます。
稲川淳二か!風の又三郎のおどろおどろしい情景。
手元にも欲しくなっちゃうなあ。
長い人生、誰かの全集を読んでみたい。
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