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「詩」海の中の小さな駅 ~終章~

海の中の小さな駅の プラットホームに
真っ白な蒸気が立ち 一人の男が現れる
かつて 駅長だったその男は
端正な顔立ちの 青年の旅人に戻っている

そして間もなく 汽車がやって来る
旅人が古びた えんじ色の座席に座ると
窓の外 小さな駅はもう消えている
気が付けば隣には 美しい女性が座っている

汽車は海辺の駅に 二人を降ろす
美しい女性は微笑み 旅人の手をそっと握る
その温もりは 旅人の心に永遠に刻まれる

夜の砂浜を 灯台の光が 優しく照らす
美しい女性は その光の中へと 姿を消す
旅人は涙を隠し 街の喧騒の中へと 紛れていく


※完
第三章


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