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「詩」五行詩群 工場の月 十一~十五

十一

廃墟になった工場の中で
月はスヤスヤと眠っている
雨はまだ降り続ける
森の中に住む小さな人たちが
縦笛の練習をしている

十二

海への憧憬と畏怖
漁船のデッキで蝋燭を
灯して見つけたい
小さな光の向こうにある
原初の温かな闇を

十三

海など近くにないのに
君の音がする
置き忘れた三輪車から
雨粒が滴っている
この涙も 海へと還るのだろう

十四

さよならという言葉は
夢の中で覚えた気がする
教えてくれたのは小さな人
遠方には幾つかの街灯り
夢の中でもそこは夜だった

十五

オーロラの街の 祭壇の前で
人々は皆 祈りの言葉を唱えていた
僕も同じ言葉を 口にした
祭壇から 柔らかな光が溢れ出した
僕は涙を流し 祭壇にひれ伏した


五行詩群 工場の月 完

※一~十


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