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「詩」それぞれの海へ

渋谷のスクランブル交差点の人達が
鈴虫の羽音の中へと消えていく
僕は誰もいない渋谷駅のホームから
品川方面の山手線に乗り込む

浮輪やビーチボールを持った人たちが
車内で抑揚のない笑みを浮かべている

列車は名前のない駅に着く
どこからか潮の香りがする
もう夏は終わっているのに
人々は皆 それぞれの海へ帰っていく

僕も帰っていける気がする
僕が生まれた街へ
僕が生まれる事の出来なかった場所へ

しかし扉は閉まり 列車は恵比寿へ向かう


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