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譲り受けた薪割り機

「ウィィィン、バキバキバキ」
果てしなく繰り返される、薪割り機による薪割りの音。
冬になると連日氷点下になる森で暮らしているから、薪ストーブの燃料となる薪を夏でもつくっている。

最初は斧を購入して、自分の手で薪を割っていた。素人でも数百回も斧を振り下ろしていると、誰に教わるでもなく薪割りがうまくなる。
ただ、うまくなるまでの間に、無駄な力で腕を酷使したこと、さらにコーヒーのハンドドリップで1リットルの重さのケトルを持ち続けていたことが重なり、右腕を痛めてしまった。

そんなとき、電動の薪割り機をだれかに譲りたい人がいるという情報をもらい、自分が手を上げた。まさに渡りに船。

電動の薪割り機では太い木を割るには力不足なので、もっと強力なものを買いたい。そこで不要になる電動薪割り機を、ほしい人に譲りたいということだった。その方の名を、仮に甲さんと呼ぶ。

甲さんとは面識があった。いちど出店先でコーヒーを買っていただき、そのときにはじめてお話しをしたことがある。そして自分が薪割り機をほしいと名乗り出たことを知ると、「あなたなら、ぜひ譲りたい」と言っていただけた。

後日お宅におじゃますると、庭に電動薪割り機が用意されていた。
甲さんはさっそく使い方を教えてくれた。

「このレバーを引きながらボタンを押せば、あとは勝手に割れるから。簡単でしょ。注意するのは、割れた薪が足の上に落ちること。これが痛いんだよ」

譲っていただいた電動薪割り機を自分の車に積み込んで、しばらく世間話をした。そしてお礼に焙煎してきたコスタリカとエチオピアのコーヒー豆をお渡ししたら、喜んでくれた。

それから1年くらい経過した頃。甲さんが突然お亡くなりになったという話を知人から聞いた。小さな町だから、そのうちどこかで再会するだろうと勝手に思っていたけれど、薪割り機を譲っていただいたときが最後の対面となった。

「ウィィィン、バキバキバキ」
薪割り機のおかげで、常に痛みを感じていた右腕は、だいぶ回復してきた。もし足元に薪が落ちても大丈夫なように、つま先に鉄板の入った安全靴を履くようにしている。

自分で集めてきた木はあまり太くないから、電動薪割り機でほとんどキレイに割ることができる。そしてこれを使うたびに、甲さんのことを思い出す。

何十回、何百回、薪を割っても、こわれることなく同じ動作をくりかえす実直な道具。人の力ではとうてい及ばない数の薪が、1日につくられていく。

甲さん、ありがとうございました。力不足と言っていたけれど、電動薪割り機は十分に仕事をしてくれますよ。

◎ネットショップ「那須コーヒーパルキ」◎
以下のリンクより、コーヒー豆をご購入いただくことができます。ご注文をいただいてから焙煎する注文焙煎のため、いつも焼きたての美味しさをお楽しみいただけます。

「那須コーヒーパルキ」
☆コーヒー豆の販売とコーヒースタンドのお店☆
栃木県那須郡那須町豊原丙4140−7(※住所では正確な場所が出ません。Googlemap「那須コーヒーパルキ」と検索してください)
営業日:日・月・火
営業時間:10時〜17時

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