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食べるカーテン

朝、キッチンのカーテンを開けると、すだれの向こう側に、窓を埋め尽くすような勢いのゴーヤの葉やツルが見える。
その隙間から朝日が差し込んだ。
窓の向こうの家庭菜園で、夫が朝の収穫をしている。


しばらくして、濃い緑色の大きなゴーヤ4本を両手でつかんで、夫がキッチンに入ってきた。

我が家で収穫したゴーヤ

「立派なゴーヤ!30センチくらいありそうやん!今年の夏もいっぱい食べられそうだね。」

と私が言うと、夫は嬉しそうに応える。

「うん、ゴーヤは毎年よく育つな。一本植えただけでもどんどん大きくなって、めっちゃ採れるわ。長女にも、婆さんのとこにも、あげたらいいわ。」


もう一度夫は庭へ行き、さらに、ピーマンもどっさり。

本日の収穫分、21個!




5月の大型連休中、夫が庭の小さな畑に野菜の苗を植えてくれた。
夏に向けて、トマト、オクラ、きゅうり、ナス、これまでいろんな野菜を作ってきたが、今年は、ゴーヤとピーマンだけに絞ることにした。

ゴーヤを植える作業は、毎年息子も手伝う。
キッチンの東側にある掃き出し窓に向かって、外から長い棒を二本立てかけて網を張る。その棒の真ん中あたりに、地植えでゴーヤの苗を植えた。すぐに、網に絡まるようにゴーヤのツルが伸びて、みるみるうちに大きな窓を覆うほどに成長した。


ゴーヤのグリーンカーテン。

まるで、すだれのカンバスに、黄緑色の葉と黄色い花、そして三日月型の濃緑のゴーヤが描かれているようだ。もう少しすると、すだれが見えなくなるほど、葉っぱのみどりで窓が埋め尽くされる。

ゴーヤのグリーンカーテン。まだまだ隙間だらけ、成長中です!


内側から見たグリーンカーテン


このゴーヤのグリーンカーテンは、4年前から毎年が作っている。
日光を遮断するので、実際にキッチンの室温も下がるし、真夏の日差しを受けるグリーンが、目にも涼しい。
夏の暑さ対策としても、我が家の食卓の味方としても、ゴーヤは大活躍だ。

ゴーヤチャンプルやゴーヤのサラダ、佃煮にも、肉詰めゴーヤにだってできる。スマホで料理のアプリを見れば、さまざまなアレンジレシピも簡単にわかるので、バリエーションはいっぱいだ。
親からの伝授と料理本で献立を考えてきた世代の私には、便利な時代になったなぁと、つくづく思う。


しかし、おいしい旬のごちそうに喜ぶのは夫だけで、息子はあまりゴーヤを食べない。
実は、私もちょっとゴーヤが苦手だった。

ゴーヤチャンプルを作れば、息子は、

「1週間に4日くらいは、ゴーヤが入ってる夕飯やな。もう、俺はふりかけでご飯を食べようかな。」

と顔をしかめる。そして、大皿に盛られたゴーヤチャンプルから自分の取り皿へ、お肉や豆腐を多めに取り、時々紛れ込んだゴーヤに苦い顔をしている。


私も最初は、ミョウガと同じレベルでゴーヤが苦手だった。
私の育った地域では、子供の頃には見たことも食べたこともなかったゴーヤ。
でも最近では、スーパーで当たり前に売られているし、すっかりメジャーな食材になった。

夫が大事に世話をして作ってくれたので、無駄なくすべてを、なんとか食べきりたい。
何より、夫は、うちで採れた野菜の料理をすごく喜ぶので、最近は私もゴーヤをおいしく思えるようになってきた。
もちろん、ピーマンも毎日のように、せっせと食べている。

暑い夏は、新鮮な夏野菜が美味しい!



****

昨年の秋、夫と一緒に枯れた夏野菜を片付けていて、ゴーヤの根っこを引き抜こうとしたら、なかなか抜けなくて困ってしまった。
リビングで二女と涼んでいた息子を呼んで、作業を手伝ってもらうことにした。

細かいクシャクシャの根を複雑に巻き付けてながら、太いゴボウのような根っこが、横にずっと伸びていて驚いた。

息子は意地になり、「絶対最後まで辿り着く!」と、どんどん根っこを折れないように探っていく。
結局、根っこは全長5m以上もあり、キッチンの隣にあるリビングの、エアコンの室外機の前まで一直線に伸びていたのだ。

夏の間、二女の居るリビングのエアコンはつけっぱなし。室外機からは、ずっと水が出ている。
ゴーヤはこの水を吸い続けたのか!
まるで意思があるかのようだ。

「すごっ!賢いゴーヤやな!」


と息子も驚いていた。


作業の後、「ゴーヤの根っこ」を検索してみたら、「細くて多い」と書かれていただけで「長い」とは書かれていなかった。我が家のゴーヤは地植えなので、水を求めてぐんぐん伸びたのかもしれない。
もしかしたら、長い根っこは、ゴーヤには特にめずらしくないのかもしれないが、我が家にはびっくりだった。

それとは対照的に、すぐ隣に植えられていたピーマンは、その真下あたりで小さく根を張っていた。
なんだか、ピーマンが健気ないいヤツに思えてくる。

私もピーマンタイプかなと思って、「そこでよく頑張ったね。」と、ピーマンに感情移入してしまった。
ゴーヤのしたたかな要領の良さに「あんたばっかり!」と、ちょっとムッとする。

しかし、生き抜くための生命の力はすごい!と、学んだ気持ちがした。


*****

今年に入り、息子はゴーヤを以前よりも食べようになった。
大人になってきて味覚が変わったのか、ゴーヤに慣れたのか。
いや、おそらく彼は、賢いゴーヤにあやかりたいのだろう。
私も若干、そう思うのだから。

今朝も、ゴーヤを3本収穫。
さて、これで何の料理を作ろうかな。
まだ、冷蔵庫に4本も入っているんだけど。

 





最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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