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初めて、化粧品売り場でメイクをしてもらった50代のわたし

化粧品販売員さんと話すのが苦手だ。なぜなら、みなさん、きれいなお姉さんばかりだから。

彼女たちは美容部員やビューティアドバイザーと呼ばれるらしい。

バッチリメイクのお人形さんみたいな瞳で見つめられると、雑&薄化粧な自分がなんだか恥ずかしくなる。

だからいつも、なるべく話しかけられないように通路を選び、いつもの決まっている商品を持って、さっさと化粧品売り場のカウンターに持っていく。

カウンターで美容部員さんから

「肌チェックをしてみませんか?」

とか言われるのを全力で断って、新商品の紹介をやんわりかわして、なる早でお会計をするのだ。

買った後は、今回も難関クリア!みたいなホッとした気持ちになる。

だったらネットで買えば良さそうなものだけど、一度失敗したので、ファンデーションだけはネットで買わないと決めている。


先日、ファンデーションがなくなりかけたのでぶらりとショッピングモールの化粧品売り場へ行くと、カウンターの向こう側に私くらいの年代のおばちゃんアドバイザーさんが座っていた。

おばちゃんとはいえ、彼女のメイクはバッチリだ。

アイメイクもはっきりくっきりの舞台女優みたいな出来栄えで、まつ毛もクリンと巻いていてファサファサしている。
そして、口紅は真っ赤だった。

それでもやっぱり、塗り重ねたはずの肌に同世代を感じて、私の気持ちから「ビビリ心」が消えた。

めずらしく、化粧品売り場で緊張感を感じない。彼女に誘導されるままにカウンターの前の椅子に座って、ファンデーションが欲しいことを話した。

肌悩みを軽く話すと

「新しい商品が出たので、よかったら試されますか?」

と言われて、私は流れで「はい」って答えてしまった。実は前々から、こういうやつをやってみたい気持ちもあったのだ。

クレンジングを染み込ませたコットンで軽く化粧を落とされるのが、劇的に恥ずかしい。人にやってもらうのがくすぐったいし、どんな顔したらいいのかわからない。

鼻の下を伸ばすか、伸ばさないか。
目の前に置かれた銀色の卓上鏡をじっと見るか、目を逸らすか。

こんな時の正解を誰かに教えてもらいたい。

知り合いに見られたら恥ずかしい〜。
衝立ついたてが欲しい〜。

でもデパートの化粧品売り場ほど敷居の高い場でもないし、まわりにお客さんもいない。
目の前にはおばちゃんがいるだけだ。

そう自分に言い聞かせて、気楽に任せてみた。


あっという間に、アイメイクだけはそのままな、風呂上がりの私の顔になる。

その後、化粧水や化粧下地などで肌を整えて、ファンデーションをパタパタ塗られた。

なんと、左右別の色を。

右半分は、これまでと同じトーンの色。
左半分は、ひとつ明るめのトーンの色。

鏡を覗くと、完全に左の方が自分の肌色に合っているのが老眼でもわかる。

ただし、お面をつけたみたいに顔だけ白いのは嫌なので、

「首の色と比べて大丈夫ですか?」

と聞くと、アドバイザーおばちゃんもこちらの色でいい、と言ってくれたのでホッとした。

これまでずっと、少し濃い色調のファンデーションを使っていたことが判明して、私は愕然とした。

こうやって実際に試してみて、自分の肌色に合う色のファンデーションを見つけることもたまには大事だなぁって思った。

左右が微妙に色が違う顔のままでもおもしろかったけど、すぐに軽く整えてもらって、お試しタイムは終了した。

ついでのように、ビューティおばちゃんから新発売の化粧下地も勧められる。

「私も使っていて、出勤で暑い中を汗だくになってお店まで来ても、全く化粧が崩れてないんです。」

とか言われたが、申し訳ないけど、お顔を拝見してその話に説得力をあまり感じなかったので、それは丁重にお断りした。

調子に乗って、口紅も数種類試し塗りをしてもらったが、全部似合わないので買わなかった。

結局、これまでよりも明るめのトーンの新商品ファンデーションを買うことに決めた。



データを入力している彼女と、なんとなくお互いに孫がいる話になった。

「お孫さんがいるようには見えないです。お若いですね。」

と言われて

「いえいえ、あなたこそ、若々しいおばあちゃんですね。」

と、私たちは社交辞令のお手本のようなトークを繰り広げた。


そうしていると、いつのまにかすぐ隣で、いつものきれいな美容部員お姉さんが来て、若いお客さんの接客を始めた。

おふたりとも、おきれいだ。
ファンデーションなんていらないんじゃないか、と思うくらいに、肌の透明感が違う。

おふたりの会話が聞こえてきて、小さな男の子のママ同士だとわかった。

「若ーい!お子さんがいるようには、全然見えませんよ。」

「いえいえ、〇〇さんこそ、7歳と3歳の男の子のママには見えないです。」


若いママたちのやりとりが自分たちの会話と重なって、笑いが込み上げた。

こういう当たり障りのない場面では、浅いけど嬉しいみたいな感覚の社交辞令的なやりとりが、まぁまぁ気分よく話が繋げるので、便利でピッタリなのかなと思った。



15分くらいの滞在で、ちょっと真夏の冒険をしたような気分になれた。

努力もしてないのに、少しだけ美白に色白に近づけたようで、スキップしたくなるくらいに嬉しい!

今回の化粧品のお買い物は、同世代の気楽さに救われた。

おかげで毎日、ファンデーションを塗るとちょっとだけるんるん(言い方が古っ!)する。


次はアイメイクを試してみようかな。
左右違う色のアイメイク、めちゃくちゃ楽しそう!

なんつって。




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