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サトヤス、堂々勇退【[Alexandros]ワンマンライブ「Where's My Yoyogi?」幕張メッセ 2021.3.21】

2021年3月22日。サトヤスラストライブの次の日、庄村聡泰は[Alexandros]ではなく「ex.[Alexandros]」になってしまったんだと思うと、丸一日喪失感と虚無感に襲われていた。

「Where's My Yoyogi?」の名の通り、代々木体育館で行われる予定だった2daysライブの振替公演。デビュー10周年以上を迎えた記念すべきアニバーサリーライブでありながら、このライブでコロナの影響と病気のため勇退が延期となっていたサトヤスが完全ラストとなる。

場所は幕張メッセ、ワンマンとしての幕張メッセは3度目だが年末の大型フェスなどの出演を含めれば何度か演奏している慣れた場所である。

個人的にはドロスのライブは昨年の九州ツアーのファイナルであった沖縄ぶり、そしてサトヤスラストライブの現地ライブに行ってきたのでライブレポートを兼ねて[Alexandros]とサトヤスについて綴りたい。

ライブレポート

ブロックはA9でステージも花道も見える良席。ドロス運は爆発的にいいと自負しているのだが、その運の良さは今回も発揮したようだ。

照明が落ちると、メンバーの[Champagne]結成時の様子を子役の再現ドラマでスタート。

1曲目は野心剥き出しの原点であり頂点の「For Freedom」。続けてベストには収録されてはいない人気曲「She's very」へ。「She's very」では2番のBメロで”身体からはじめましょう”とエロティックな歌詞変えに胸が高鳴る。

ドラマはサトヤス加入時に、聴き慣れたライブバージョンのイントロで「city」へ。パラパラと拍手が起こると「city」を聴いて涙がほろっと出た。久しぶりに聴いたライブアレンジのイントロだったり、アウトロで「ここはどこですか 私は誰ですか」と歌えてたり、モッシュダイブが当たり前にあった頃の景色を思い出して、あの頃なら思い切って歌えたのにと思ってしまい、もどかしかった。

こちらもベスト盤には収録されていないロックナンバー「Rocknrolla! 」で沸かしに沸かす。間奏ではヒロがベースをゴリラのように叩き、まーくんはギターソロで見せつける。個人的にもかなり好きな曲で、リクエストを募れは必ず投票しており、はじめてこの曲を聴いたときは「こんなにスタイリッシュでかっこいい曲作れるバンドいるんだ!」と衝撃を受けた。

最近まで俳優として民放ドラマにメインキャストとして出演していた川上洋平。
やっぱりギター持って、ドデカいステージで歌っているロックバンドの川上洋平は、無敵だった。そのステージは自らが重ねてきた努力とそれ以外にも沢山培ってきたものを積み重ねてきた強い土台で、安堵感と安定感が凄まじかった。

私はライブは行くのではなく”帰る”という感覚がぴったりだと思う。[Alexandros]のライブに”行く”ではなく、[Alexandros]のライブに”帰る”。ギターを持つ洋平さんを見て、このしっくりした感じが、ロックバンドの[Alexandros]の川上洋平が帰ってきたんだなと思った。ステージに立つ川上洋平を見て、私もドロスのライブに久しぶりに帰ってきたんだなと思った。

「[Alexandros]なりのラブソングを歌います!」と丸いミディアムテンポの「You're So Sweet & I Love You」

「Waitress,Waitress!」のリアドのドラムは完全に庄村聡泰のドラムだった。イントロの爆発力がまさにサトヤスのドラムで、去年の九州ツアーの時はタイトで抜け感のあるスネアやバスドラがBIGMAMA味のある力強くも優しさのある音だったが、今日のドラムのパワフルな重量感は[ALEXANDROS]のドラムの音になっていた。

まーくんとヒロがフライングVに持ち替えると、お待ちかねの暴れろタイム。「Kick&Spin」ではメンバーがステージ横の花道を自由に右往左往、なんだかんだこの曲が1番好きかもしれない。ドロスを知ったきっかけの曲でもあるが、心の奥底からテンションが上がる。ステージ真ん中で洋平さんが「生きてゆく!」と雄叫びし、[Alexandros]の圧倒的生命力を見せつけた。

「starrrrrrr」の清涼感ある際立つ音の粒が満点の星空が振るようであまりにも美しかった。久しぶりにこの曲も聴けたな。この曲は大きい会場でもライブハウスでも存在感を発揮する最強の曲だ。

そして再現ドラマはバンド名を改名。

「Droshky!」は改名直後に演奏された記念すべき出発点。真骨頂さながら終始アッパーで全速力、そして白井のシャウトが聴ける貴重な曲だ。

昭和ポップスを連想させるお決まり「Dracula La」のサビ後のクラップはブランクはあったものの身体が染み付いており、難なく出来た。洋平さんが癖で「歌え!」と言ってしまった横でヒロさんが「シー」のジェスチャーをし、チームワークを発揮。

本来はオーディエンスが歌う「Adventure」は声を発することが出来ない。歌えないって、声を出せないって、こんなにも悔しかったっけな。
だが私たちが声を出せない反面、普段私たちが歌う(歌わせられる)パートを洋平さんはもちろん、ヒロさんとまーくんのコーラスを堪能できる貴重な機会でもある。

それは「city」でも「starrrrrrr」でも「ワタリドリ」でも「NEW WALL」でも「Mosquito Bite」でも同じだった。

曲はライブと共に成長していく。その最中で合唱したり、手拍子したり、フロアから巻き上がる熱気が加わり、バンドも曲も進化を遂げていく。

洋平「緊急事態宣言のなか来てくれてありがとうございます。歌うことが多いバンドなのに声が出せなくてどうなるかと思ったけど、みんなの顔をマスク越しに見て安心しました」
磯部「今日でサトヤスくん勇退です。本来は1月にやる予定だったけど、3月に誕生日と加入を決めたツアーファイナルで勇退するって持ってるなって。俺たちが何かやろうとするとなにか起こる。しんみりしちゃうけど、門出だと思ってるので、明るく楽しくやりましょう」
白井「サトヤスが腰が痛いって言い始めてからかなり時間が経ってしまった。高校の後輩だけど当時はこうして一緒に海外行くとは思ってませんでした。」

後半戦は大ブレイクを遂げた代表曲「ワタリドリ」で再出発。いつもはトップかラストに演奏されるワタリドリも、中盤に来るとそれはそれで馴染む。

続けて「NEW WALL」の壮大さは健在だった。この曲も2017年の幕張メッセで聴いたな。伸びやかでゆったりとした感覚を取り戻した。

「歌えないなら踊ろうぜ!」と軽快でポップな「Feel like」もお久しぶり。

ブルックリンの夜景が映し出されると大人の余裕の色気漂う「LAST MINITE」へ。洋平さんの伸びやかな声とブラックミュージック特有のチル感は夜のブルックリンを連想させ、ゆらりと曲に身体を委ねた。

「Mosquite Bite」の間奏ではお決まりの洋平さんとまーくんのグータッチで、ラストサビにかけてドラムのリアドとフロント3人が向かい合いかき鳴らす。

ラストは「PARTY IS OVER」。紙吹雪が舞い、手に取ると[型をしていた。銀テープはダメなら紙吹雪。常にギリギリを攻める、もはやギリギリのラインを超えているかもしれないが、ドロスらしいなと思った。

間もなくアンコール、メインステージにリアド、上手花道先端に白井、下手花道先端に磯部、サブステージにキーボ-ドのRose、花道途中のスタンドマイクに洋平の立ち位置で「roof top」。緊急事態宣言で急遽制作されたアルバム曲をようやくここにて披露。

メインステージに戻ると「Beast」をリリック映像と共に披露。軽快でワイルドでソリッドな曲だが、洋平さんはギターを持たず意外にもハンドマイク。私はどこからか綾野剛がギターを持って出てこないかと期待した。というか「Buzz off」を発表したときから綾野剛とのライブ共演を心待ちにしてるのだが一向に実現しない。

洋平さんが新入りらしき赤いギターを持つとCMで話題の「風になって」。5月の晴れた湖でサイクリングをしてるかのような優しい風を切る爽快感が気持ちよかった。野外フェスで聴きたい1曲だ。ファン補正無しで、とてもいい曲。

そしてあっという間に最後のMC。

洋平「サトヤス、行ってしまいましたね。」
ヒロ「やっぱりね、こういうの無理なんだよ。Where's my yoyogi?のタイトルのまま幕張でやってるけど、俺の代々木はどこ?だからあながち間違ってない。」
洋平「振替になったけど、ほとんどがチケットを戻さずに来てくれたそうです。本当にありがとうございます。ラスト1曲だけやって終わります」

ラストは新曲「閃光」で[Alexandros]とサトヤスの門出を飾った。

エンドロールでは昨年中止になってしまったZepp含むライブハウスツアー、地元の横浜アリーナ単独公演、そして約6年ぶりの日本武道館を初の2days公演で行うことが告知された。

ちょうど今回のライブに2015年の武道館のタオルを持っていたので、感慨深い気持ちになった。

ついにサトヤスはドラマーの肩書を下ろした。同時にサトヤスの第2の人生と、改名、サトヤス勇退を含め[Alexandros]の第3章がはじまった。

無題

ライブレポートを書くにあたり普通なら1曲目から順に書くが、わざと1曲だけ飛ばした。「風になって」と新曲「閃光」の間に1曲やっているのだ。

爽快に「風になって」を演奏し終えた後、少し寂しそうな3人。そして突如サブステージに現れた見慣れた黄色のドラム。

サトヤスのドラムだ。

サトヤスは後ろから登場、洋平、ヒロ、まーくんの3人はメインステージから花道を通ってがサブステージに向かう。

サブステージで4人が合流。洋平、ヒロと順番にハグをするが、まーくんだけ「俺はお前とハグしたことねえ!」と照れながらもハグ。

川上洋平、磯部寛之、白井眞輝、庄村聡泰の4人揃って始まった曲は「Untitled」。この曲は特別な時にしかやらないとのことだが、サトヤスセレクトだそうだ。「Untitled」は2015年に行われた「ご馳走にありつかせていただきます」ツアーのファイナル公演であった初の幕張メッセのワンマンライブで披露している。

庄村聡泰が最後のドラマーとしての勇姿を見せる。

大粒の涙が次々零れた。

最後にドラマーのサトヤスの背中を見ることが出来た。サトヤスのドラムだ。4人の音だ。物凄い安心感だった。でもこの1曲が終わったら、もうこの4人のサウンドでは聴けないんだ。これが本当の最後だ。そう思うと、どんどん気持ちが制御出来なくなった。

リアドのドラムがダメな訳じゃないんだ。それだけは絶対評価で、サトヤスの繊細かつダイナミックなドラミングや、全身でリズムを取る感じとか、懐かしくて、愛おしかった。

卒業はめでたい、だけど寂しいが勝つ。頭では分かっているんだ、サトヤスは二度とドラムが叩けないこと、サトヤスの第二の人生に期待していいこと、でも今日が誕生日の庄村聡泰は、たった1曲しか叩けないドラマーなのだ。1曲しか叩けないドラマーってなんだろう。

サトヤスは一言も言わなかった。いつも通りだった。だっていつもサトヤスは何も喋らず、たまにツアー中洋平さんが話を振って喋るぐらいで、存在感を放っているが喋らないというレアキャラだった。

花道から帰ってくる間、4人は肩を組んで歩いていた。サトヤスは泣いてた。私も泣いてた。泣かないなんて無理だった。

ずっと思い出してた。今まで見てきたライブはもちろん、SNS、ラジオやテレビなどのトーク番組の出演も、4人は必ず一緒だった。全部全部思い出した。サトヤスがいるドロスを応援出来てよかったって、そう思いながら、記憶がブワッと溢れ出した。

メインステージに戻るとサトヤスは本当に一言も喋らず、紳士的なお辞儀を深々として、3人を残しステージを去っていった。

[Alexandros]のドラマーとして最後の勇姿だった。

当日夜、サトヤスがInstagramを更新した。

ある4人と、
それに関わってくれている全ての事、物、人、
もしも、その関係に題名を付けるとしたら?
考えても、
考えても、
そうしてしまうには、
余りに素晴らし過ぎて。
だから、選ばせて貰いました。
"無題"って曲をね。
愛してるぜ[Alexandros]。

あえてこの関係にも物事にも名前を付けない、なんて粋な人なんだ。前向きに、楽しく、とか言って、結局は泣かすんだ。

巡り巡って

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ドロスのライブに通いはじめて6年近く、出会ってもう8年、運良くベスト盤の抽選特典の直筆サイン入りポストカードが当選した。なんだかんだではじめての直筆サインを頂いた。

以前洋平さんと九州ツアーで偶然遠征先で会った時、今しかない!と思いサインをお願いしたら「サイン出来ないんだ、ごめんね、本当にごめん!」と謝りながら断られてしまったのですが、巡り巡り、回り回って、メンバー全員分サインをご用意してくれたみたい、そう思いたい。

私にとって最初で最後の4人のサイン。ありがとう。一生の宝物だ。

ありがとうサトヤス、そしてこれからも。

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サトヤスは勇退直後、北渋拠点のファッションに関する新プロジェクトの加入が発表された。予想通りの道ではあるが、今度の詳細続報を楽しみにしたい。

いつものドロスのライブはツアーファイナルでも完全燃焼の満足感だが、その満足感と同じぐらいの喪失感に襲われている。

はじめて人生変わったほど好きなバンドのメンバーが抜けてしまった。しかもドラムが叩けないという病気で。

音楽の方向性の違いで解散するバンドもあれば、喧嘩別れしたり、前ぶれなく解散したり、病気になったり、不慮の事故や急病で命を落としたり、家庭の都合の他様々なマイナスな要素をきっかけに暗い雰囲気のままバンドは終わることが多い。

だけど[Alexandros]の卒業ライブは違った。寂しいけど、こんなにも前向きに卒業を見届けることが出来た。というか、前向きに送り出そうとメンバーが頑張ってくれた。結局はサトヤスがいなくなってしまった虚無感に負けているけど、ライブで、サトヤスの目の前で沢山拍手できた。

[Alexandros]は最後まで[Alexandros]だった。

お疲れ様サトヤス、
お誕生日おめでとうサトヤス、
ありがとうサトヤス、
第2の人生応援してるよサトヤス、
ファッションの世界でも頑張ってねサトヤス、
愛してるよサトヤス、
愛してるよ[Alexandros]。

[Alexandros]にも、ドラマーの肩書きを終えたサトヤスにも、”いつかまた会う日まで”、”死んでたまるか”。

そして、心の底から思った。

[Alexandros]についてってよかった。

[Alexandros]を好きでよかった。

[Alexandros]を愛してよかった。

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セットリスト(公式URL)


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