【ド派手に考察】Aimerの「残響散歌」、どう考えても完璧じゃない?
鬼滅の新シリーズの主題歌がAimerと知った瞬間「ありがとうございます〜!」とスライディング土下座した私。
シリーズものの主題歌としてはそろそろ新しいアプローチが必要だと思っていたところで、人気実力共にLiSAの後任として引き継げるのは実際片手で数える程しかいない訳ですが、抜擢されたのがAimerとは適任すぎてぐうの音も出なかった。
「残響散歌」も既にチャートを席巻しているそうで、国民的アニメの鬼滅の主題歌だから必然の結果だとは思うんだけど、それ以前に楽曲としても主題歌としても完璧すぎる。
期待をはるかに上回る新名曲、ド派手に爆誕!
⚠️1部ネタバレ含みますのでご注意ください
歌詞考察
言葉の裏を読み解く程かなりトリッキーだったので、気づいたところを存分に書きます。
「幻花」は青い彼岸花のことでしょうか(パワハラ無惨が千年も生きているのは鬼が日光を克服するために青い彼岸花の成分が必要らしく、半永久的に探している)。
ちなみに青色の彼岸花は人工的に開発したものも無く実在しないそうです。
赤い彼岸花は仏教ではおめでたいことの吉兆に赤い花が空から降ってくるとか、数日しか咲かないため”幻の花”と呼ばれているとか、そんな話があるそう。
古今和歌集に収録された短歌「色よりも かこそあはれと おもほゆれ
たが袖ふれしや どの梅ぞも」(作者不明)から引用かと。
「深紅の香こそあはれ」は2つの視点から読み取れる。
深紅色は少し重めの赤色なので深紅が血だとすれば「深紅の香りこそしみじみする=血の香りが趣深い」となり、2Aメロの歌詞が「ただ一人舞う千夜 違えない帯を結べば」なので、率直に考えれば一人(鬼)で着物の帯を華麗に駆使する鬼の堕姫のことだろう。
一方で「あはれ」はしみじみするの他、悲しいの「哀れ」の意味も含み「深紅の香りこそ哀れ=血の香りは悲しい」とも訳せるので、人目線としても読み取れる。
初回の炭治郎のセリフを覚えているだろうか?「幸せが壊れるときは、いつも血の匂いがする」。
つまり、炭治郎のこととも読み取ることが出来る。
「藍」は言葉遊びで「愛」も掛かってるようにも思える。
鬼滅の一貫したテーマである仲間の絆や家族愛が顕著。逆に遊郭編に限れば、遊郭は性欲を満たすためだけに男女が交わる街なので「愛を落とした(愛が無い)」とも捉えることが出来る。
「藍」は夜の深い藍色とも藍染のジャパンブルーとも連想出来るのが深いところで、どちらにせよ赤系の「深紅」と青系の「藍」の対比が遊郭に集う男女を現しているようでえっちですね。
爆血を駆使する禰豆子や炎の呼吸の煉獄さんなど無限に連想出来るけど、個人的には最高のフレーズだと思ってる。
理由はLiSAの「紅蓮華」を引用している気がするから。
「紅蓮の華よ咲き誇れ!」は「闘志よ、燃えろ!」みたいなニュアンスだと思うんだけど、紅蓮は赤色の蓮の花で「燃え盛る炎の例え」としても使われるそうですね。もうエモいから「紅蓮華」ってことでよくない?
「闇間(やみま)」を「刃(やいば)」と聴こえるように歌っているの凄くない?
「刃を照らしたら」だとしても、持ち主によって刀身の色が変わる日輪刃のこととも読み取れるので「刃に命を吹き込んだら」とも解釈出来る。
続く「曖昧過ぎる正解も 譜面にして」も刃を振りかざすシーンが思い浮かぶので「闇間(夜のこと?)」でも「刃」でも意味は通じる。
時雨のTKっぽいことするよね!まあTKに曲作ってもらってるけどさ!
歌詞全体を通すと「音」や「響き」に関するワードが多いのは、今回の任務のリーダー(神)が「音柱・宇髄天元」だからだと思う。
「鮮やかな音を鳴らす」は宇髄の戦術や剣技に「轟」があったり、一方で「奏でて?」は聴覚に長けた善逸が三味線を弾くシーンが思い浮かぶ。
音の呼吸は雷の呼吸の派生なので、善逸にも共通しているワードがあると思えるのも興味深い。
タイトルの「残響散歌」は造語だが「讃歌(さんか)」は信仰に対して賛美する歌のことである。
Aimerの歌声は時折深い無彩色のように思う。霞のように幻想的でハスキーなAimerの歌声を「残響」と表現すれば、ここでようやく「残響」のピースがハマる。
つまり、「残響散歌」はAimerが捧げる宇髄天元への讃歌だ。
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これまでの考察は一歩踏み込み言葉の裏側を読み取ったもの。
何より「残響散歌」の良さは考察せずとも歌詞の大半が理解出来るところだ。
例えば「躓くごとに強くなった 光も痛みも怒りも全部 抱きしめて」は前を向き努力し続ける鬼殺隊士たちのこと、「派手に色を溶かす夜に」「違えない帯を結べば」は華やかな夜の遊郭が容易に想像出来る。
考察が必要ないと言えば必要ない。けど言葉の裏側を読み解けばもっともっと面白くなる。
「残響散歌」がヒットした理由
CD発売前にも関わらずあっさりダウンロードチャート更新して既に大ヒット目前、2022年のAimerはどうなっちまうんだと年の瀬にトキメキが止まらない。
異常なほどの期待の全集中に「鬼滅の主題歌だからこそ売れなければならない」と制作陣のプレッシャーは相当だと思うのだが、そこで「楽曲は意外と戦略的なのではないか?」と思う。
難易度もさほど高くなくアップテンポの明るい曲なので「誰と行ってもカラオケで歌いやすい」ことが第一の理由。
何故カラオケ配信前(2021年12月26日時点)にも関わらず「歌いやすい曲」と言い切れるのかと言うと、曲の構成が秘訣だと思う。
日本はカラオケ文化が根強い。そのためリズムは四つ打ち、サビがある、手拍子しやすい、歌いやすいなどがヒット曲の傾向にある。
それ故、歌無しの曲は流行りづらい。
星野源が以前組んでいたバンドもボーカルがいない楽器だけのインストゥルメタルバンドだが、星野源が全国的な知名度になった今でも歌のない曲は世間的にはマイノリティだ。
そこでだ、イントロとアウトロの「♪タラッタッタ〜」はとても工夫されていると思った。BUMP OF CHICKEHで言うオウイエイイエイアハーンの部分だ。ジャズ用語だとハミングやスキャットに近いだろうか。
聴くにしろ歌うにしろ、間奏に歌を入れて退屈させない工夫をしたと考えると、一見アドリブのように見えて戦略的である。
ちなみにアメリカ生まれのジャズが日本に来たのはちょうど大正時代だそうで、「残響散歌」のジャジーさは当時の新鮮な音楽としてぴったりだ。
コロナ前ライブハウスによく行ってたとき出演者の方とそんなことを話していたのだけど、これが今の音楽シーンが物語る正解であり実情なのだと常々思う。
キーボードがいるバンドと言えばYOASOBI、髭ダン、セカオワあたりが真っ先に上がるし「THE FIRST TAKE」での名パフォーマンスもDISH//とかCö shu Nieなど、ピアノアレンジが多い。
その理由が科学的にも心理的にも見つからないのだけど、日本では小さい頃から習い事の定番だったり合唱コンクールなどでピアノを弾いたりする場面も多いので、小さい頃からピアノの音に馴染んでいるからなのではないでしょうか。
「日本人は切ない歌が好き」なのは有名な話、私はこのド派手曲もその類に入ると思う。
歌詞とタイトルが。
歌詞は暗くとも明るい曲は案外多く、「グリーングリーン」が実は戦争の歌であることが一時期話題になったし、爽やかなスピッツも実は歌詞が怖いなどが有名。
曲調はジャズテイストのオシャレなピアノに陽気なブラスと、完全に”表向きの眠らない街・遊郭”に振り切ったゴージャスなサウンドである。
そんな遊郭の裏側は鬼が人間を食い散らす巣窟。遊郭の実態としても、そもそも女性の身体が商売道具であることや遊女同士や客とのトラブルが絶えなかったことを考えると、遊女らの闇が占める割合も多いでは無いだろうか。
遊郭自体が光と影のコントラストがはっきりした街である。
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タイトルの「残響」はニュアンスとして祭りやパーティーの後のような虚無感、「散」はとりとめのなさを意味するのでどちらかと言えばネガティブなワード。
言うほど歌詞は暗いか?と言うと全体的に暗いのではなく、部分的に宇髄さんの過去を連想させる底抜けの闇を感じるのである。
「逃げ出すため ここまで来たんじゃないだろ?」も弱音を吐く自分自身を奮い立たせる心情を描き、「涙で滲んでた あんなに遠くの景色まで」は忍の家系に生まれ鬼殺隊入隊前から命懸けで生き抜いてきた宇髄さんや、前エピソードの「無限列車編」で炭治郎、善逸、伊之助が息絶えた煉獄さんを前にこれから面倒を見てくれると約束した先輩の死を悲しみ、何も出来なかった自分の無力さに悔やむ様子など、負の感情に支配される登場人物が無限に思い出される。
対してポジティブなフレーズは「選ばれなければ選べばいい」「この先どんなつらい時も 口先よりも胸を張って」など覚悟を決める強さが伺える。
前向きな歌詞も多いのに決してポジティブと言い切れないのは「残響散歌」で描かれる心情が「やることは決まっているが自分には出来るのだろうか?」と自問自答を繰り返す自信の無さと、「それでもやる」と言う強い使命感の狭間で葛藤しているように思うからである。頭では分かっているが、心が追いついていない状態を描いたのだろう。
「残響散歌」は光と闇が共存する遊郭と、過去や後悔と葛藤しながら前を向く心情を見事に音楽で表現した。
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散々説明して結局「残響散歌」の暗さと派手は半々だと言う持論だが、「残響散歌」が爆発的に伸びているのは明暗がはっきりしたギャップだと思う。
以前「じっくり聞いタロウ」で「青春アミーゴ」の作詞を手掛けたZoppさんが出演したとき「カッコイイ人がカッコイイ歌を歌ってもつまらないから、わざとダサい歌詞にしてギャップを生んだ」と答えていた。
その話は目から鱗だったのだが、そもそも「『残響散歌』にダサいところがない」のにこの話を引っ張り出したのは「ギャップがある」からだ。
瞬発的の高いヒットの最大の要因は一皮向けたAimerだと思う。
当初”謎の歌姫”としてデビューした彼女だが、徐々に正体を明かせば夜の世界とは無縁のような黒髪の清楚で上品な女性だ。
MVで体現しているように、花火や百鬼夜行や桜など日本を詰め込んだ華やかな夜の渋谷に、風吹くビル上でシックな黒色のドレスを纏うAimer、そのギャップがバッチリハマったのだと思う。
今のAimerだから歌える「残響散歌」
ド派手な曲を歌いこなすAimerに度肝を抜かれた。ほんの数年前のAimerならこんなに華々しい歌を歌うだなんて私なら考えられなかった。
自分としては「六等星の星」「茜さす」などの暗めのバラードが得意なイメージが根強く、以前にワンオクのTakaから曲提供を受けており(私もTakaをきっかけにAimerを知った)ハードでクールな曲を歌うことに対しては驚きはしなかったが、ここまで突き抜けて明るいとさすがに戸惑った。
そんなAimerが華美な歌をパワフルに歌いこなすのは、きっと彼女の努力と功績たくさんのクリエイターとコラボし共演し続けた刺激があったからで、徐々に素性を現し変貌と進化を遂げてきた今だからこそ、目が覚めるほどの華やかな世界にも飛び込めたのだと思う。
ド派手なAimerも凄く好き!「私ド派手な歌も歌えます、いや歌ってみせます!鬼滅のためなら!」と作品愛とLiSAから引き継いだ歌手魂も丸見えで好き!
どこまでも響け歌声、轟け歴史、想いを繋げ、ド派手な残響!
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