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バジルvs嫁

珍しい。令和に入って初めて見た。
嫁ちゃんが悩んでいるじゃないか。
これは深刻な問題の予感がするぞ。

「うぅ~ん・・・」

やっぱりだ。
苦虫を甘噛みしているような表情。
普段は出ない眉間の縦皺。腕組み。
おおいどうしたんだいマイハニー。

「ああ、夫くん。聞いてよ・・・。
私の姉がね、バジルくれたんだよ」

おっ、きのう甥っ子を連れてきて
一緒に流しそうめんを楽しんでた
料理上手でおキレイな君の姉さん?
バジルいいじゃん。美味しいよね。

「それがよくないんだよ。あのね
ソースを作れって言うんだよねぇ」

ソース?作ればいいんじゃないの?

「夫くん!」

はいッ。

「あなたはバジルソースを分かっていない!」

はいッ。何も分かっていませんッ。

「私作ったことないから少し調べたのね。
そしたらこれ、すごく面倒なヤツなんだ」

え、そうだったの。
君ってイチゴとかマーマレードのジャムを
とっても美味しく作るじゃない。

「ジャムとは違うのだよジャムとは」

そうなんですか(シャアっぽいな)。

「なんかねぇ、オリーブオイルとか
大量のナッツ類?とかニンニクとか
大量に細かく砕いて・・・ええ!?
すり鉢でこれ私やるんかい!?って」

お、落ち着いて嫁ちゃん。

「とにかく気の遠くなる作業っぽいんだよ!」

そっかそっか、面倒だったのか。
んん?でもさあ、それって
ミキサーでガーっやればいいんじゃないの?

「えっ」

えっ?

「ウチにミキサーなんてあったの?」

あったよ。
君と出会う前にね、欲しくて買ったんだ。
バナナジュースにハマった時があってね。

「あ、そうなんだ。美味しかった?」

美味しかったよ。
ハマりすぎて体重がドカドカ急上昇した。
バナナと牛乳が無制限に飲めちゃうから。
だからまあ、すぐに使わなくなったけど。

「へえ~、そうだったんだ。で?」

で?

「そのミキサーさんは、どこ?」

たぶん、探せば見つかるよ。ゴソゴソ…
ほら見つかった。これこれ。いいでしょ。

「へえ…これならいけるかな。夫くん!」

はい。

「買い物行くよ!」

はい!

・・・


詰め込みMAX

「じゃあこれ、ミキサーでよろしく」

ちょっとさあ、これ容量overなんだけど…。
大丈夫かな。いけるかな。壊れないかな。

「なんとかなるでしょ」

ええい、ままよ。ヴィーーーン!(作動音)

バキッ

「んっ?」

げげっ。
ミキサーのフタにヒビがΣ(・ω・ノ)ノ!

「大丈夫?夫くん」

大丈夫、経年劣化だ。問題ない。
回せ回せッ!ヴィーーーン!!

バキキッ

「およっ?」

げげっ。
ミキサーのフタが割れたΣ(・ω・ノ)ノ!

「大丈夫?夫くん」

こやつは今日が命日かもしれんが大丈夫。
とにかく回れッ!いけいけッ!
ヴィーーーン!!!

ピカピカ

「あれ?何その赤いランプは」

げげっ。
ミキサーが活動限界時間を超えたΣ(・ω・ノ)ノ!
ミキサー、完全に沈黙です!

「なんかエヴァっぽくなってきたぞ」

・・・

そんなこんなで出来上がった
バジルソース推定500cc。
キッチンはバジルの香りに包まれた。
ところでこれ、パスタソースにする?

「えっ、私はピザソースにしようかと。
まぁ、こんだけあるし、どっちもやろう」

キッチンに笑いがこだまする。
ありがとうバジル。ありがとう嫁の姉。
そしてさようなら、ミキサー。
君の勇士は忘れない。


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