見出し画像

新春新作料理

「アンチョビを使いたい」

朝食の準備中
冷蔵庫を整理していた嫁ちゃんがぼやく。
アンチョビの賞味期限が近いようだ。

「じゃあアンチョビパスタはどうかな」

すかさずぼくは料理のリクエストをする。
嫁ちゃんの作るアンチョビパスタは絶品。
家庭で出していい味じゃない料理の筆頭。
うう、思い出したらまた食べたくなった。

「パスタかぁ・・・うん。アレやってみるか」

なにやらブツブツと独り言の嫁ちゃん。
これはなにかしらひらめいた顔である。

「なに?いい料理でも思いついたの?」

「ひらめいたの。夕食で出すから楽しみにね」

含み笑いで話を切り上げる嫁ちゃん。
実にもったいぶるのが上手い。
一体何を作るというのか。


「アンチョビサラスパ。完全新作だよ」

夕食時にそれは姿を現した(タイトルの画像)。
え…サラスパってあの、サラスパ?
手軽なサラダ感覚で食べれるスパゲッティ?

サラスパってマヨネーズで和えるヤツでしょ。
それを今回はアンチョビで和えたってワケね。
美味しいだろうけど、パンチが足りないよね。
これならアンチョビパスタが食べたかった…。

(・・・いやしかし、嫁ちゃんなら・・・)

料理を作ってくれた感謝を込めていただきます。
気になるお味は・・・?

「アッ!」

サラスパを一口噛んだ瞬間、全てを理解した。
これは美味すぎるヤツだと。

「どう?味は。レモン酸っぱかった?」

じっくり噛む。アンチョビの風味がレモンと共に
口内を駆け巡る。重厚で、ねっとりと、美味い。

「いや、ヤバいよ。ものすごく美味いよコレ」

「そう?どれどれ・・・。お、味染みてるね」

以前食べたアンチョビパスタも相当だったけど
アンチョビサラスパも別次元の美味しさだった。

やたらと上品というか、格調高いというか
オシャレな街のビストロで提供されそうな
そんな味を感じた。天才なのか嫁ちゃんは。

「これって何見て作ったの?クックパッド?」

「いやーこれは私のオリジナルだよ。勘だね」

「マジで言ってる?味のバランス完璧だよ?」

「そう。そりゃ良かった」

嫁ちゃんいわく
どうしても使いたかったものが
アンチョビとレモンだったそうで
それを軸にして脳内で考えてみたら
今回のレシピを思いついたのだそうだ。
一体どんな脳みそしてやがるんですかね。

「いや本当に美味いよ。ちなみにレシピは?」

「うーんと、サラスパにアンチョビに
レモンにキュウリに、コショウを少々かな」

「それだけ?それだけでこんな味になるの?」

「なっちゃったんだね。あはは」

軽く笑い飛ばしているけど、とんでもない。
ぼくだったらこんなお店レベルの味わいを
レシピを見ながらだって作れる気がしない。

嫁ちゃんはけっこう思い付きで料理を作るけど
今回のは超大当たり。すでにもう食べたいぞ。

ちなみに嫁ちゃんが作る思い付き料理では
「超大当たり」「大当たり」のどちらかを
出してくる。「普通」はいまだかつてない。

今年も美味しい料理を宜しくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?