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音楽家不在の音楽談義

NHK番組『サイエンスZERO』(Eテレ毎週日曜午後11時30分~午前0時)で「音楽が脳にもたらすうれしい効果が科学的にわかってきた!」をテーマに音楽と脳の関係を立証していました。

脳細胞は増えることがなく生まれた時から減少していくため、一度失ってしまうとそれを修復することができないにもかかわらず、他の細胞が補うことがあり、音楽がその助けになっている、というお話。実際、音楽を使うことで失語症患者の言語能力が回復した症例や、高齢者の運動に音楽を使う場合(A)と、リズムだけを使う場合(B)のその後の認知テストの比較など紹介されていました。

音楽の場合とリズムだけの場合で差がでるのは、伴奏とメロディ、和音、音程、音の高低、リズムを感知する部位がそれぞれあり、音楽を聴くことで右脳全体に働きかけるからだそうです。ただ、効果をもたらすためには、音楽に合わせて何かをするアウトプットが必要で、また、普段聴きなれた曲では脳への刺激がないので効果が期待されないとのこと。

個々の生活や、求める心理状態にあわせた音楽を提案している者としては、音楽をアンカリング効果として使うのか、なんらかの成果を目的に使うのか、深いセッションの必要性を改めて感じました。

そして驚いたことに、AIがひとりひとりの脳が好む音楽を作曲するほど現代の科学技術は進んでいるようです。脳が好むのは、好きな音楽とは決して限らない。実験を試みた司会の小島瑠璃子さんはできあがった音楽に苦笑しながらも「電子音を好まないので、実際の楽器の音で聴くといいかも」と。それに対し大阪大学の沼尾正行教授は「MIDIを使用して楽器の音にすることができる」と回答されていました。が、それも電子音。

最先端の科学と技術を紹介する番組ですから論点は違うでしょうが、生の楽器演奏を使った場合との比較検証をしてほしいと思いつつ、音楽家不在の音楽談義を聞くのもなかなか面白いものです。


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