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アフリカ縦断鉄道旅最終日


窓の外は空が三層に分かれて赤くなっている。時計の針は19時を指している。ルームメイトの2人が前の駅で降りてから30分。列車は終点に近づいていた。地図を見るともう残すところ100キロを切っている。3日間のアフリカ縦断鉄道旅ももう終わりだ。

3日間で広げた荷物を無理やり詰め込もうと、バックパックと格闘していると列車が速度を落とし始めた。
最後に忘れ物がないか隅々まで確認して錆びついて軋む扉に手を掛け、見慣れた光景にさよならを告げる。
朝になると凍えるほど冷え込む硬いベッドにも、埃が積もった机の淵にも、ベッドの下に人知れず捨てられた誰かのゴミにも少しだけ思い入れはあるけど、別に悲しくなるほどではない。

列車が止まると我先にと降りていく人たちの流れに身をまかせるようにして、列車の外に飛び降りた。次から次へと来る人たちに押されて息をつく暇も無くホームの端に追いやられる。これが僕にとっての初めてのザンビアの地。はじめの一歩だ。なんとも呆気ない。

ところで着いたはいいものの、この土地について全く調べていないし、名前さえもよく分かっていない。もう21時が来ようとしている。アフリカの夜は怖い。その事は身に染みてわかっている。
どうしよう、とりあえず首都のルサカに行く人に話を聞こうと手当たり次第に声を掛けようとしたら、1人目の家族づれのお母さんが偶然にも今夜ルサカに行くらしい。

その家族について行くことにし、バスターミナルまで一緒に歩いた。お母さんと中学生〜赤ちゃんぐらいまでのバラバラの歳の子供が4人。ザンビアの現地語と英語をごちゃ混ぜにしながら会話をしている。よくこういう家族を見かけるが、これだけ英語が生活に寄り添っているのなら多くの人が英語を喋れるのも頷ける。

バスターミナルに着くと、お母さんが運転手と何やら喋り終わり、こちらに近づいて来た。
「なんか今日はもう夜遅くてバスが出てないみたい。明日の朝4時に出るらしいから私たちは今晩ホテルに泊まるけどどうする?」

値段を聞くと僕には少し高い。時刻は9時50分。あと6時間と少し。耐えられなくもない。バスの中に一晩居てもいいという許可をもらい、足も伸ばせない狭い後部座席に、荷物を抱えて寝転がった。それが今の状況だ。

少し開いた扉から入ってくる冷気が足先から身体をじわじわと浸透してくる。時々気休めに、冷えたつま先を手で包んで温める。そういえば今日は食堂車が思いのほか早く閉まって、ビスケットしか食べていない。窓の外には黒い服を着てフードを被った男達がポケットに手を突っ込んで歩き回っている。そいつらから少しでも身を隠すために、肌を出来るだけ服で覆い、スマホを窓の下で触る。

無事に4時まで耐え抜く事が出来るんだろうか。
不安と無神経な睡魔がまるでシフト制であるかのように交代で現れてくる。

明日の朝ご飯は美味しいもの食べたいな。
あと、5時間51分。
おやすみ。

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