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文科省「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」  〜自力で読みたい人のために、補助資料を作ってみた〜

こんにちは。みんなのコード政策提言部の田嶋です。

みなさんは、文科省から発出された「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」(以下、ガイドライン)をもうご覧になりましたか?

ガイドライン公表後、解説記事や動画などを出している方々もいらっしゃるので、そういったものも参考になるかと思います。一方で、解説者の解釈が入っていたり、情報が漏れてしまったり、細かなニュアンスが伝わらなかったりするので、やはり一次情報であるガイドライン本体も読むことが望ましいと思っています。

とはいえ、こんな風に思う方も多いですよね。

そこで、「この資料を読んだあとなら、ガイドライン本体も読めるかもしれない」と思えるような補助資料「文科省生成AIガイドライン 入門編」を作成しました!今回はこの資料の内容と活用方法についてご紹介します。

※ 文部科学省「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」をもとにみんなのコードが作成


まず、文科省生成AIガイドラインの大まかな内容をつかもう

そもそもどんなことが書いてある資料なのか、簡単な全体像が見えるとガイドラインを読むハードルが下がるかと思います。
まずは目次を眺めてみましょう。

ガイドラインは、4つのパート+参考・別添資料で構成されていることが分かります。4つのパートについて、大まかな内容を簡単に説明してみました(p.7〜p.13)。

例えば、3.「生成AIの教育利用の方向性」についての前半部分は、このようにまとめられています。

次に、1対1でステップアップ【簡略版】

全体像を掴んだら、いよいよガイドラインの本体へと目を移しましょう。ただ、この段階でもいきなり読むのには、まだハードルが高いかもしれません。例えば、「3. 生成AIの教育利用の方向性(1)基本的な考え方」は、ガイドライン中でも重要と思われるページですが、

1枚あたりの文字量が多く、読み始めるのにエネルギーを使いそうです。そこで、「文科省生成AIガイドライン 入門編」p.16以降の”1対1簡略版”をご覧ください。

文科省生成AIガイドライン 入門編」の特徴は、ガイドラインの内容を、以下の観点で整理しました。

  • どのページを簡略化しているのか分かるよう、ページ右上に示す

  • なるべく平易な表現

  • 一文を短く

  • 細かい注などは思い切って削る

  • 構造が分かりやすくする

上のページを見ると、

生成AIの仕組みの理解などは重要だが、個人情報流出・批判的思考力への影響といった懸念もある。教育利用に関しておさえたいこと・そもそもデジタル時代の学習で重要なことを踏まえて、基本的な考え方を3つに整理した

ということが理解できるかと思います。

この簡略版の内容を読み、ガイドラインの内容をほぼ理解した状態であれば、本体を読むことのハードルもかなり低くなっているのではないでしょうか。

見落としがちだが注目したいことが見えてくる

今回のnoteでご紹介した、
全体像を大まかに掴む→簡略版で各ページに書かれていることを簡単に理解する→ガイドライン本体を読む
という3ステップを踏むと、いきなりガイドライン本体を読むよりも容易に、かつ深く理解することができると思います。
また、「見落としそうになるけれど大事なのでは?」と思う点も見えてくるのではないでしょうか。例えば、3-(4)パイロット的な取組のページでは、生成AIの大まかな活用ステージが紹介されていますが、以下のような記述があります。

思考力を低下させるのではなく、高める使い方をする、創造性を減退させるのではなく、更に発揮させる方向で使用できるようにすることが期待される。また、併せて、生成AIを用いれば簡単にこなせるような旧来型の学習課題の在り方やテストの方法を見直すことも期待される。

この2文は、生成AIを教育で利用するに当たって重要な心構えを示しているとともに、生成AIは学校教育が目指してきた姿を脅かすのではなく、むしろ後押しするきっかけになり得るものだということを主張していると感じます。

生成AIのような新たな技術が台頭し、ガイドラインが公表されたことで、「また新しいことをしなければならない、これまでのやり方を変えなければならないのか」と負担に感じる方もいるかもしれません。
しかし、生成AIが台頭する前から学校現場では、各活動にどのような意味があり、どのような教育的意義があるのかを考え、子どもたちに伝えてきたはずです。

インターネットで調べれば分かるような知識を詰め込むことではなく、「生きて働く知識・技能」を習得させる。ただ知識をもっているだけではなく、知識を組み合わせて課題解決のために活用する。そのような学びを生涯続ける力を身につける。

このような姿の重要性が、生成AIの台頭によってむしろ強調されたと言えるのではないでしょうか。

他にも、ガイドラインを深く読み込むことで、生成AIをどのように活用するかに留まらない気づきが見えてくるかと思います。

結局学校に丸投げ?

生成AIの活用が「適切でないと考えられる例」「活用が考えられる例」が7,8個示されています。しかし、活用適否の判断は「教育活動や学習評価の目的を達成する上で、利用が効果的 か否か」の一文しかないことから、「結局判断は現場に丸投げなのか」という声も先生方と話している中で聞こえてきます。

丸投げなのではなく、基本的な考えと具体的な適否例をつなぐ「生成AIを使うことは効果的だ、なぜならば」の部分がまだ未整理なだけなのだと捉えています。

みんなのコードが7月4日に公表した「『初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン』への見解」でも、この部分(適否判断の原理原則)を明らかにしていく必要があると言及しています。

そして原理原則は、今後の実践の中で得られた成果や課題も参考にしながら作られていくものだと思っています。

ぜひ、「文科省生成AIガイドライン 入門編」も活用しながら、ガイドライン本体を読んでみてください!そして、留意点を踏まえながら、ぜひ大人から生成AI活用をはじめてみませんか?


ここまでお読みくださりありがとうございます。

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