『テレビ局再編』既に開始されている再編への地殻変動
日本テレビで役員も務められた、根岸豊明さんによるテレビ局再編論です。
テレビ局の「中の人」だったので、現役でしたら決して書けなかった内容でしょう。
本書におけるテレビ局再編の主張は、「ブロック統合」「持株会社見直し」「1局2波(あるいは1エリア3局体制)」の3つです。
「ブロック統合」と「持株会社見直し」については、現在進行中です。現実的な判断を総務省もおこなっていると思います。
ただし「1局2波」は、理論上可能であっても、さすがにハードルがありそうです。運用上のルールなども決めなければいけませんし、系列局も違っていたらハードルは更に上がってきます。
この辺りをポイントに、本書はテレビ局の近未来予想を書かれており、概ね精度も高そうだと感じました。
逆に言えば、現状のスタンスを基軸にすると、手段も限られているのがテレビ業界……いや、テレビ局業界のウィークポイントかもしれません。
なお、著者の根岸さんは、テレビマンとしての深い矜持があるゆえに、テレビ愛が強すぎる印象です。
本書の中でも節々に表れていて、少し引っかかりを感じるところもありました。
「パクステレビーナ」
「パクスアメリカーナ」のもじり? 検索してもヒットしてこなかったので、一般用語じゃないのでしょう。
「パクスアメリカーナ」は、超大国アメリカが中心となって成立した国際秩序のことを指します。
アメリカとテレビをなぞらえているのかもしれませんが、ちょっと不遜な感じも受けました。
「デジタル・マフィア」
ペイパルマフィアをもじって、地上波デジタルを推進した自分たちを「デジタル・マフィア」と呼んでおりますが、リスクを取っている起業家&投資家と会社に守られている社員では、あまりにも立場が違います。
「若手テレビマンの中にはテレビに見切りをつけてテレビを去ってしまうものすらいる。これはテレビにとって、さらには視聴者、国民にとっても大きな損失だと思う」
硬直した組織から出て、自ら外の世界で勝負するのは、社会全体としてもメリットしかないと思います。
テレビ局にとっては確かにマイナスでしょうけど、さすがに国民とってマイナスまでは行かないのでは?
『「役に立つものは、いつまでもなくならない」
それは歴史が証明している。だからこそいま、私は読者視聴者に断言したい。
テレビは終わらない、と』
本書の最後に書かれている言葉です。役に立っていたものでも、なくなってきたものは多いです。
例えば、下駄。
今は下駄を履いている人はいませんよね?
下駄は「人が足に履くもの」という本質を変えずに、現在は靴に置き換わりました。
「役に立つものでも、いつかはなくなる」という危機感を持つことが大切で、そこで始めて「本質」と向き合えるのだと思います。
……とまあ、幾つか気になるポイントもありましたが、テレビ局が今どういう考え方を持っているかが理解できました。勉強になりました!
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