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『ハウス・オブ・カード』の押さえておくべき3つの魅力

『ハウス・オブ・カード』をようやく観終えました。
すっかり周回遅れですが、コロナ禍の外出自粛もあり、まとまった時間も取れたので。😅

あらすじは上記の1分動画が、かなり上手にまとめています。
主人公のフランク・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)は、大統領になってからも受難続きです。
常に国内外から責め立てられますが、時にはアメリカ国民を「恐怖」で脅して、権力を維持し続けます。

そして、いつも傍らには妻のクレア・アンダーウッド(ロビン・ライト)がいて、お互い浮気を容認しつつも二人三脚で権力の階段を駆け上がっていきます。

共に冷酷で、目的のためなら手段を選びません。
時には、殺人も……。😱

しかしながら通常であれば、全く感情移入できないキャラクターである一方、なぜか惹かれてしまう不思議さも持っています。

なぜでしょうか?

……というところで、3つの魅力を挙げてみます。
(ネタばれもありますので、ご注意下さい!)

(1)バディ・ムービー

バディ・ムービーとは、『リーサル・ウェポン』『ラッシュアワー』や日本であれば『あぶない刑事』などが代表的ですが、友人や仕事仲間といった二人組みを基本とする映画やドラマのことです。

ドラマの基本は「葛藤と対立」ですが、バディ・ムービーはお互いが身近だからこそドラマが描きやすいのです。

そして『ハウス・オブ・カード』においては、アンダーウッド夫妻のバディ・ムービーとも言えます。彼らが共闘したり、時には反目したりするのです。
世界の中枢たるホワイトハウスで展開されるバディ・ムービーは、それ自体がアイデアとしても新鮮に感じます。

ただ、自身が起こしたスキャンダルによって、最終シーズンについては、ケヴィン・スペイシーは降板となってしまいます。

これまでの路線であるバディ・ムービー路線が崩壊してしまいます。

ドラマでは、夫であるフランク・アンダーウッドの急死以降が描かれるわけですが、やはりドラマとして失速していることは否めません。
『あぶない刑事』でも、タカとユージの二人がいるからこそ、面白さが成立しているのであって、タカだけとか、ユージだけとかになってしまうと、『あぶない刑事』が持つ本質的な面白さからかけ離れてしまいます。

しかし!
制作者も、その辺りは承知の上だったと思います。
最終シーズンのシーズン6で思い切って、フェミニズムへ舵を切るのです。

(2)フェミニズム

ドラマの中でクレアは、NPO法人の代表から、ファーストレディ、国連大使、副大統領、大統領へと上り詰めます。
女性の社会進出の権化と言っても良いでしょう。
一方、夫のフランクはクレアのことは応援しつつも、彼女でさえ「道具の一つ」として扱います。
しかしながら、クレアもしたたかで、利用されているのは承知の上で、自分の望む方向へ人生を向かわせます。
とはいえ、フランクが亡くなった最終シーズンでは、さすがにドラマ的にもやり尽くしただろうと思っていました。
ところが、観ていて思わず唸ってしまった瞬間が2つあります。

1つめは、大統領のクレアが今までの閣僚を全て辞任させて、女性だけの内閣を組閣したことです。

ドラマの中で、クレアは多くの女性の期待を背負っていることは、ひしひしと感じていましたが、ここまで行き着くとは思いも寄りませんでした。

2つめは、クレアが実はフランクとの子供を身籠っていてことです。
中絶も3回も繰り返して、子供は持たない主義のキャラクターでここまで来ておりましたが、最終シーズンでバディものから脱却し、彼女一人のドラマとして、グッと焦点を合わせるものになっています。

(3)ピカレスクロマン

最後になりますが、『ハウス・オブ・カード』の魅力は何といっても、強烈な「悪」の魅力でしょう。
フランクは、キリストの像につばを引っ掛ける、自分の父親の墓に小便をするといったモラル的にも最低な人間で、しかも目的のためなら人が死ぬのも厭わないです。
また、この長いシリーズの第一話の冒頭で、フランクは隣人の弱った犬を殺します。
もう長生きできないので、用無しだろうという判断です。

妻のクレアも平気で人を裏切りますし、フランク同様、時には身内の死をも利用してのし上がります。

映画『ジョーカー』では、ホアキン・フェニックスは哀れな側面も見せるジョーカー役を演じました。

人から理解されないというのが、共感ポイントではありますが、『ハウス・オブ・カード』のフランク&クレア夫妻は、ウイークポイントが人間の邪悪さに繋がっているので、なかなか感情移入できません

ところが、この邪悪さや冷酷さが段々クセになってくる感じがするのです。
愚かさも含めて非常に人間らしいというか、ピンチに陥る度に権謀術数を駆使して、もがき苦しみながらも、何とか事態を打開します。
そうしていつしか目が離せなくなってくるのです。

ドラマとは、「人間を描くことだよ」とも言われたりもしますが、『ハウス・オブ・カード』はまさに、生々しいまでの人間が見事に描かれていると思います。

最後に……


『ハウス・オブ・カード』の特性上、どうしても主人公夫妻を中心に論を張りがちですが、フランクの忠実な部下であるダグ・スタンパーが、実は僕の一番好きなキャラクターだったりもします。

裏切りだらけのこのドラマの中で、どこまでもフランクを守る姿からは、屹立とした精神性も感じられます。
と言っても、かなり悪どいこともやっているキャラクターなのですがね。

また、シリーズを通して、シーズン3~4は特に神がかっています。
観ていて、何度も声にならない声を挙げてしまったほどでした。
アメリカ合衆国訟務長官であった正義の化身、ヘザー・ダンバーが民主党内ので大統領指名選挙で、フランクたちに負けてしまう……。
正義であればこそ、負けるのです。
この悲劇といったら……!

しかしながら、これこそが人間社会であって、例えば純然たる正義だから、誰にとっても正義のか?
悪だから、誰とっても悪なのか?
人間には様々な側面があるので、一概には言い切れないはずです。

『ハウス・オブ・カード』のシリーズを全て観終わると、政治や社会、人間などの見方が変わざるをえないです。
優れた映画やドラマは、人生を変えさせる力を持つように。


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