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ある場所である音がする縁を詩にする実験。
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水窓(四次元)

水窓(四次元)

あまあいに
深く息を吐く
無数の夏が
呼び交わす

重なりに
雨粒をころがす
葉擦れを風が
連れていく

ああ、あの日
渡り廊下で眺めた雪は
こんなところに
ふったのか

あまあいに
洗いたての夕暮れは
ひたひたとただ
降りそそぐ

同じ穴を埋めに

同じ穴を埋めに

会ったことのある人も
会ったことのない人もいる
関係があるというほどには
何の関係もない

私たちにはみんな
同じ穴が空いている
それが唯一の共通項
ほかには何もない

同じ姿を見ては
同じ音を聴いて
それぞれに
全然違うもので
その穴を埋めて
全然違う道を
歩いて帰る
海の底さえ地続きの世界で

原子たちの音楽

原子たちの音楽

たくさんの細胞でできている
ということは
生命の音が刻むリズムは
いつだってEDM

ウメノキゴケの白を背にして
揺れる季節はずれのホトケノザ

石碑のうた

石碑のうた


慰霊というのは
ただわたしを慰めている
街中の広場には誰もいない
聳え立つ熱

慰霊というのは
忘れ去られることを知っている
願いの燃え滓が遠く浅く
散らばっている

慰霊というのは
歴史を装って閃く
木陰や鳥やボールや温度に
こだまして泣く