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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2019年8月の記事一覧

短歌 クレヨン 十首

短歌 クレヨン 十首

1.
偶然だ 血が赤いのもぬるいのもなかなか止まることがないのも

2.
ブラウスのピンクのしみは確実に君に恋した盛夏の残滓

3.
オレンジを食べた! 朝から君のこと早く壊してみたいと願う

4.
たまさかに君の生存を知ったよ 鳥よ夜風よ黄金(こがね)に染まれ

5.
人々は緑が多い方がよく想定内であればなおよい

6.
皆様が空の青さを謳うなら私は何にも服従しない

7.

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短歌 カット 十首

短歌 カット 十首

1.
わたしもう自分からログアウトして言葉の嘘を撃ち抜きたいの

2.
笑われてちょうどよかった過日の碑 解すことのない世界を嗅いだ

3.
シンメトリだけが正義の造形か 愛の急所は歪んでいるぞ

4.
整った車内アナウンスばかりが皆を導いて気味が悪い

5.
はみ出したその部分からカットします 余計なことを考えないよう

6.
涙さえ質にいれたか親友のフリを続けて疲れた人よ

7.

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短歌 晩夏 十首

短歌 晩夏 十首

1.
ひまわりが怖いとないたセミたちの悲鳴を耳にぶらさげる午後

2.
結局は影になるのだ 星求め自分探しの旅に出たひと

3.
苦しさを分けてあげます あなただけ笑ってるのはおかしなことだ

4.
処世術 啓発本に生きるコツ ぜんぶいらない 私を返せ

5.
「誰もみなお友達です」なんて嘘 早く教科書から消去せよ

6.
私だけ花が咲かない種もらい水をやりつつまだ泣いている

7.
アリスより不

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短歌 花火 十首

短歌 花火 十首

1
新しいファミマが街に増えるたび居場所をひとつなくすのは誰

2
容疑者と呼ばれた夏も青空で入道雲が威張っていたな

3
斎場の灯りがついた夜にだけ許しあうこと許してほしい

4
ビブラートできない鳥は殺してもいいんだよってママが言ってた

5
手放した瞬間輝きを生む君のこと どこから食べてあげようかしら

6
ウェディングドレスについた一点の汚いシミが私の残滓

7

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短歌 仮説 十首

短歌 仮説 十首

1
間の抜けた顔で剥き出しの惰性をかじる君のまつげに浮く汗

2
「星座って孤独を繋げてできてるの」君の仮説を葬り去ろう

3
舌の根も乾かぬうちに発車ベルが聞こえたから旅に出ましょう

4
シャボン玉は壊れるためにあるという秘密を暴き弾けたあなた

5
残酷になれない夏の昼下がり ピアノ線だけ持ってきた君

6
見上げても花火うつむいてもモグラがとろけていやがるから地獄

7
シャム

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短歌 バス停 十首

短歌 バス停 十首

1
ゆりかごは遠くにあって手を伸ばす理由もなくて夏が去ってく

2
セミたちの声にまぎれてから笑う そんなあなたがやっぱり好きだ

3
木陰から顔を突き出すバス停よ 優しい街に連れてってくれ

4
光から逃れるために明日など何処にもないと言い聞かせている

5
アスファルトに落ちたセミの抜け殻を踏んで己を空蝉と知る

6
好きなだけ私を責めて構わない それがあなたの限界だから

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短歌 動機 十首

短歌 動機 十首

夢を見て夢が破れて夢のなか夢にまでみた夢の世界よ

夏空を誰も見上げず笑ってる ノートの隅が日のあたる場所

あの夜を小瓶に詰めて朝が来ることを嫌がるまぶたに塗った

鐘の音が響いていると君は泣く カーテンだけがゆらと応えた

優しさはひまわりみたい うつむいて朽ちても誰も気にも留めない

空に星 地に海 風が歌う星 私の部屋は何処にもないの

何ひとつほんとのことを教えない それがあ

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