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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2017年7月の記事一覧

短歌 夏03 十首

短歌 夏03 十首

夏色が少しはだけた街をゆく
胸に小さな棘を抱いて

溢れくる涙のわけも知らないで
戻り梅雨など受け入れないで

太陽が悪魔のように焦らすから
彼の心も歪んでしまう

憎しみが増幅されるだけなのに
夏が好きだとあなたはほざく

輝きは汗と涙とあがくこと
ダイヤモンドは夏に合わない

いつからか彼の脳では太陽が
直接指令を出すようになり

憂鬱がぶっ飛ぶほどに暑いから
喜怒哀楽

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短歌 希望02 十首

短歌 希望02 十首

今はまだ振り返れずに辛くても
きっと笑って触れられるから

傷つけるよりも傷つく方がいい
黙して微笑う太陽の下

赤い糸 年季が入り織り成した
日々を想えばただ愛しくて

輝きを放つ言葉を探したら
いつもの夕餉にたどり着いた

曇り空くらいがちょうど心地よい
贅沢言わず泣き言言わず

陽を浴びるだけが取り柄なわけじゃない
隅には隅の役割がある

泣きたくて泣ける幸せ噛み締め

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短歌 雨02 十首

短歌 雨02 十首

片時雨あの日失くした正しさが
傘を持つ手に痛みを穿つ

約束はしない約束だったから
笑顔で雨を受け入れている

雨粒の音に合わせて堕ちていく
君の心がドシラソファミレ

伝言を残しておいたはずなのに
雨声に消されてしまった恋文

二人とも二度と会わないことにして
驟雨にすべてを隠した夜

雨粒を覗き込んだら君がいた
悲しい目をしてこちらを見てた

しょうしょうと降る雨を責め

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短歌 日常03 十首

短歌 日常03 十首

二日目のカレーがうまいその訳を
君と僕ならよく知っている

ダイエットしているからと残された
コロッケ一つに意味はあるの?

「おいしい」の一言を見て舞い上がる
ランチタイムのLINEの通知

パスタよりスパゲッティが好きという
昭和生まれの超意地っ張り

困ったらカレーを作るそのクセを
確認したくて小指が疼く

そうめんの薬味にツナってアリですか
文明開化の味がした日

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短歌 日常02 十首

短歌 日常02 十首

帰り道 二つの影が街を染め
平和の意味を知らせる日暮れ

食卓に並ぶレトルト食品は
頑張っている二人の証

出張や残業続きの君には
「わたし成分」が足りていない

眠たくてこぼした涙 誤解して
ごめんなさいと正座する君

雨の日もあった嵐の日もあった
なんだかんだで一緒にいるね

優しくて不器用なこと誇ってよ
私が笑える理由なんだよ

記念日にケーキを買って帰る君
待って記

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短歌 スイーツ01 十首

短歌 スイーツ01 十首

仲直りしたい二人の間では
ショートケーキが雄弁になる

張る意地も憂い顔には敵わない
抹茶ラテにはかすかな悪意

君のこと一番なんて思えない
順序があると思いたくない

背伸びしてザッハトルテを頼んでも
苺の有無も知らない仔猫

生きるのがちょっぴり下手な君だから
シュガーレスでは息ができない

甘いだけでは足りないと囁いて
ハニーの跡を小指でなぞる

ホイップが指に絡まり

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短歌 恋愛02 十首

短歌 恋愛02 十首

ライオンの気持ちがわかる気がしたの
あなたを噛めばザクロみたいね

その声で甘いラメント歌ったら
誰が惚れずにいられましょうか

夏カレー ナスやトマトとないまぜに
君を溶かして煮込んでみたい

夏風邪と思っていたこの熱は
どうも知恵熱でもないみたい

湯を注ぎその傲慢が開くのを
三分間は待っててあげる

血の味は恋のはじまりに似ている
私これから生きだすんだよ

足音が近

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短歌 雨01 十首

短歌 雨01 十首

思い出がひと雨ごとに塗り替わり
君が誰だかわからなくなる

わがままになってほしいと願うほど
雨が降ること知っていますか

街に咲く赤青黄色の雨傘
そこに私の色だけが無い

雨粒に撃ち抜かれるとうそぶいて
見せ合う傷を用意する君

雨音は三拍子だと歌う声
影は優しく雲に抱かれた

いつ降るかわからないのは雨と嘘
天気予報で誤魔化さないで

枯れ急ぐ紫陽花たちのレクイエム

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短歌 夏02 十首

短歌 夏02 十首

天国に一番近い時期だから
互いの鼓動 確かめ合おう

アイスティー汗をかいたら君が泣く
終わりを知った蝉どもみたい

切なさは削ぎ落とされてやわ肌が
黒ずんでいく露骨な季節

青々と桜の葉っぱがざわめいて
春が逝ったと人に知らせる

干からびたミミズに水をふりかけて
はしゃぐ幼児の命の重さ

もうずっと波打ち際で待っている
君が溺れてこちらを見ること

太陽の力を借りて挑ん

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短歌 恋愛01 十首

短歌 恋愛01 十首

「ごめんね」と同じ数だけ「ありがと」を
伝えられたらもう悔いはない

明日私 髪を切るから気づいてね
局地的かつ甘い復讐

「愛してる」それはまだ愛未満だぞ
本気だったら言葉はいらん

人様の神経を爆殺しては
被害者ヅラして微笑むあなた

「いいよ」そのセリフの前にもしかして
「どうでも」がありませんでしょうか

何気ない仕草が全部苛立って
それが恋だとようやく気づく

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短歌 夜02 十首

短歌 夜02 十首

静寂が漂う部屋の片隅で
戸惑う呼吸に笑みを返す

繋いだ手から溢れ出す熱のせい
影を重ねて意味だけ捨てた

残像が居座る君の胸元を
涙しながら引っ掻きまわす

なんだ君、泣いているのか
当たり前、そんな目をして笑わないでよ

From君 分泌された愛だから
余すことなく手に入れたいの

うつし世に未練はないが君のこと
味わい尽くしてから果てたい

何もかもどうでもいいと心か

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短歌 都会01 十首

短歌 都会01 十首

この街に魔法の似合う場所はない
だから奇跡は一つも起きない

蜃気楼 遠くで友の呼ぶ声が
うつろう街に痛みを穿つ

新宿に桃源郷を見つけたと
逆さまになり笑いだす君

秒針と心臓の音がリンクする
ここでまばたきしてはならない

紫が足りない虹がかかってる
君が盗んだ恋に似ている

スニーカーの紐を結び直しても
誰も褒めてはくれない夜更け

人殺しも聖者もこの人混みに
区別で

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短歌 日常01 十首

短歌 日常01 十首

錠剤の重さに比例する土曜
君と二人で海を見に行く

時折の憂いを帯びた笑い顔
夜にひれ伏す獣みたいに

影法師みたいにいつか消えるんだ
わかっているから名前を読んだ

まどろみも寝ぐせも声も知っている
なのに君にはためらいがない

そのうちに空気になると言われても
肺呼吸には欠かせないから

結婚が墓場だなんて言うのなら
きっと二人はリンドウの花

目玉焼きにソースをかける

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短歌 希望01 十首

短歌 希望01 十首

夜明け前 最も深い暗闇が
朝の卵を包み込んでる

さびしいの「さ」の字を「き」の字に
置き換えてSOSを君に伝える

泣きながら食んだうどんのしょっぱさが
明日も生きろと我を励ます

苦しみや悲しみはきっとカルーセル
巡り巡ってやがて消えてく

カーテンの青さに恐れをいだいても
私は明日を希望と呼ぼう

ループするような気がしたトンネルの
出口で君が手を振っていた

絶望を

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