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自分が主体的になれる仕事場。田中杏佳さんがココルームで働く理由 #求人

みなさんこんにちは。ココルームの求人募集の相談をいただいた編集者兼ライターの狩野哲也が、ココルームで働く人に「なぜこの場所で働いているのか」を聞いてみました。

これを読んで、ココルームで働くことに少しでも興味をもつ人が広がればと思っています。今回はスタッフの田中杏佳(たなか・きょうか)さんに聞きます。

ーーーココルームを知ったきっかけは何だったんですか?

田中杏佳さん

初めてココルームに来たのが台湾旅行に行く前の日なんです。出身が鳥取なので、関空に行くために一度、鳥取から大阪に来て前泊するためココルームに宿泊したんです。

ーーーお生まれは鳥取なんですね。

鳥取生まれで、大学も就職も鳥取だったから、それまで鳥取を出たことがなくて。2年間、保育士をしていましたが、自分の中で外に出たいという思いがあって、2023年3月に退職したんです。保育士とは違う仕事で、居場所づくりがしたいと考えていました。

“自分と向き合う”きっかけ

ーーー居場所はどういう経緯でつくりたいと思ったんですか?

はじめからつくりたいと思っていたわけではなくて、自分のことについてよく考えるようになって、だんだんと自分が望んでいる形が居場所づくりなのかなと思ってきて。

でもそんなふうに、自分と向き合えるようになったのは、20歳の時の緑内障がきっかけだと思います。

視野がだんだん欠けていく病気で、完全感知する病気ではなく、進行が進まないようにしていくだけの日々で、そのことで自分で沈んだ時期がありまして。

1回沈んだんですけれど、自分と向き合える時間が増えて。今まで自分はすごい無理してきてたなということに気づいたんです。

ーーーどんなことに無理されてきたんですか?

今までの学生生活で周りの目を気にしすぎて、自分を偽っていたのが、自分の中で病気と関係してた部分があって、その気づきがすごく大きくて。その時、自分みたいに周りの目を気にして自分がしたいことができなかったりとか、人に言えない悩みや生きづらさを抱えている人たちにとって、表現できる環境になればいいのに、と自分の中で思うようになったんです。

そして、それをどうやって形にできるんだろうと悩んでいた時にココルームと出会いました。生きづらさを抱える人もそうではない人も、溜まってしんどくなってしまいそうなところを、自分の中にあるものを表現として形にしていて。

そしてココルームで表現する人たちはすごく楽しそうで、生き生きとしていて。こんな場所があるんだと衝撃を受けました。でもそれは「ここなら出しても大丈夫」と安心して自分を表せる場があるからだなと思って。そんな居場所づくりがしたいと思い、ココルームに惹かれました。今は言葉にできているけど、仕事を辞めた当時はなかなかまとまらなかったです。

ーーーそういった居場所を見たことがないと説明できないですよね。鳥取にはココルームのような場所はありますか?

居場所づくりをしたいと考えた時に、自分の理想の形に近いものでゲストハウスに興味を持ちました。そして、いろいろ探している中で、地元にあるゲストハウス「たみ」に辿り着きました。そこで4ヶ月ほどインターンをしていたんです。

ーーーなんと! 「たみ」なんですね! じゃあオーナーの蛇谷さんにココルームを紹介してもらったんですか?

いえ、まったくの偶然で、台湾旅行は姉といっしょに行ったんですが、姉が一度ココルームに泊まったことがあったので、いっしょに宿泊したんです。台湾旅行中も、ずっとココルームのことが気になっていました。

たまたま初めて来た時にスタッフ募集の説明会をしていたから、いろいろ働く上での姿が想像しやすかったです。

宿泊して印象に残ったのは、やっぱり言葉です。

一階のカフェの上はゲストハウスになっているんですが、階段に掲示物が貼られていて。「ここは誰もが来れる場所です」とか、表現の手前の場づくりを大切にしているとか、その時期ぐらいに自分が表現することの大切さに気づいたのもあって、いくつかの言葉が刺さりました。

自分と向き合うようになって、少しずつ自分の意見を人に話したりするようになって、わりと今までしゃべるのが苦手だったし、 自分の意見を持つのも苦手だったし、めんどくさかったんですよね。だけどこうやって自分が話すと、相手からも心の声というか、本音が聞けると感じました。

表現することの大切さに気づいて、自分自身も表現ってなんだろうというところが大きかったし、アートのことなんて全然わかんないけれど、でもココルームはいろんな人が来て、雑多さがアートになっているみたいな感じで、入りやすさもあったし、ここにいて自分と向き合いながら、 自分に合った表現方法を探したいと思って、とりあえず一ヶ月ほどインターンをさせてもらいました。

2023年の8月中旬から9月の中旬までいて、そのときはここでしばらく働こうと決めていたんですけど、自分の興味がある他のものを見てみたい気持ちもあって、一度、長野のReBuilding Center JAPANに滞在していました。そこは、家や工場が解体される前だったり片付けをする時に、現場に行って、行き場を失ってしまったものを引き取ってくるという循環を目的とした場所でした。その後、戻ってきてココルームでスタッフとして働いています。

ココルームでの仕事内容

ーーー仕事内容は、どんなことされているんですか?

インターンの頃はゲストハウスの部屋やトイレ、洗面などの掃除をしていました。

スタッフになってからは掃除のボランティアさんが来て下さることが増えて、今は主にカフェの食事や接客、表のバザーの販売、イベントの準備やお手伝いをしたりしています。

ココルームに来てほやほやの頃は、何もわからないから、こういうふうにしたらいいよと教えてもらいながら仕事を覚えていきました。

自由度が高い職場だとは台湾旅行前の説明会に参加したから知っていましたが、最初はどこまで自分で決めて、どこまで自分でやっていいのかがわからなかったです。

例えば、お金関係のことだったりとか。ルールはないと言っても、効率よく仕事をするためにタオルの位置とか、何曜日にゴミ出しとか、そのあたりは整えられているんですよね。でもバザーの値つけは自由。400円と決まっていても、来たお客さんとの会話の中から少し値下げするのも自由。それは本当に即興力が試されるというか。

最初はそれが難しいし、ルールがないのはわかりにくいとは思っていたんですけど、1ヶ月間働いてみて、ルールがないと言っても、ある程度その仕事は効率的にするレベルのルールは決まっているし、その他は、話し合ってルールを決めていくとか、自分たちがやりやすいように変えていっているのが主体的になれて、ココルームの良さだと思っています。

ココルームは自分の心に向き合う場所

ーーーお仕事の中で楽しい部分や、やりがいだと感じている仕事はどんなことですか?

ココルームで働く人たちは1人1人自分に正直に働いているので、釜ヶ崎芸術大学というワークショップの存在が大きいのですが、自分の心とむきあうことをスタッフもみんなで一緒にしているから、今まで生きてきた話とかも聞く機会があります。

ココルームでは、自分自身について話す機会や、相手の話を聞く機会があり、自分自身も、ココルームが居場所になっています。働いているだけじゃない感覚なんです。

ーーーいいですね。知らない読者に向けて、釜芸を解説してもらっていいですか?

釜芸は釜ヶ崎芸術大学の略なのですが、月に4〜5回、年間で90回ぐらい講座を開いて、文化講座を開催しています。

カフェやゲストハウスの仕事をやりつつも、自分が興味のある講座でタイミングがあえば、スタッフとして参加できます。スタッフは感想用紙を配ったり、釜芸に来るお客さんを案内したりします。

仕事内容も掃除や料理など家事に近くて、たぶん、今の自分にとって、そこを大事にしたいという思いが大きくて、それがここの仕事内容と、ちょうどマッチしていると思います。

ーーー仕事の中で難しいと感じる部分はどんなところですか?

スタッフとしての自覚というか、この場をどういうふうに進めていくか、みたいなことを考えています。料理1つにしても、ゲストも参加できるように、「これを手伝って」と参加を促したり、ゲストが介入しやすいように言葉かけをするようにしています。ほかにはご飯を食べる際の座る位置とかを気にしたり。

ーーーココルームにいると、誰かと話していても、急に知らない誰かがそれまでの会話をさえぎって話しかけてくることがありますね。

それが、ココルームじゃないと起こらないことというか、そういうのが、ここに来る人を排除させない、ものになっているというか。

本当に、誰でも来やすいようにしているからだと思います。急にお酒を飲んできて、他のお客さんに迷惑をかけていたら、「帰ってください」とは言わず、ココルームでは「機嫌をなおして来てね」という言い方をしていて。

ーーーなかなかできないことですね。それはどこで体得したんですか。

それは台湾旅行前に見たスタッフ募集の説明会でかなよさん(上田假奈代・ココルームオーナー)が言っておられました。それもあるし、ココルームの場の雰囲気だったり、場のあり方が、すごくいいなと思うところです。

ーーーココルームで自分の成長を感じるところはどんなところですか?

まだ期間が短いので、ちゃんとできているとは言えないですが、でも、自分で考えて行動するというのは毎日していて、その部分は成長を感じます。

例えば、「今日はご飯をつくるスタッフがいないから、きょうちゃん、つくれる?」って、インターンの時に急に言われたんです。

でも最初はそんな大人数のご飯をつくったこともないし、しかも買い出しからしてきてと言われても、何を買ったらいいのかもわからないし、どれくらい使ったらいいのかもわからない、 ぜんぶ自分に任されているのが、最初はどうしたらいいのかわからないし、自信はなかったけど、徐々に自信がついてきましたね。

ココルームで働く条件は、自分で考えて行動する人

ーーーどんなスタッフに来てほしいとかってありますか?

まず、来てほしいというよりも、 この自由さを楽しめる人じゃないと難しいと思います。ルールがないとわからないとか、自分で考えて行動するのが苦手な人はやっていてしんどいだろうと思います。

ーーー杏佳さんはどうやってそれを乗り越えたんですか?

わりと保育士の頃から子どもは予測できないから、最初からそういう現場に慣れていたというのがあります。

ーーー確かにそういう業界の人は向いてそうですね。今後、ご自身はどうなっていきたいですか?

最初は場づくりがしたいと言っていましたが、これからココルームで数年働いていく中で、変わっていくと思います。自分のお店みたいなものを持ってもいいかなとも思います。

かなよさんが喫茶店、ゲストハウスとかじゃなくてもよかったと言うように、いろんな人が入りやすくするために場所にしたいですね。自分が学生の頃、周りの目を気にしてやりたいことができなかったり見つけられなかったこともあって子どもや学生たちがいろんな人やモノ、場所などにつながれるような場をつくれたらなと思っています。


いかがでしたか? ココルームで働くことに興味をもった方は、まずはカフェやゲストハウスにお客さんとして訪れてみてください。その上で、ココルームを運営する側として興味をもったら声をかけてください。

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現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています