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生まれる前の記憶


「生まれたくない!」

古い井戸の側で私は老婆に手を掴まれて連れて行かれる。そこはピンク色の綿菓子のようなふわふわした暖かい場所。どこまでも雲が連なって続いているような光景が広がる。

沢山の子どもたちが追いかけっこをして走り回り、雲の山へ飛び込んで潜ったり、トランポリンのように飛び跳ねて遊んだりと笑い声が絶えない。
所々に大人のような存在がいて子どもたちを見守っている。

私も他の子どもたちと同じように走り回って遊んでいたのだが…

ポツンと見える穴が気になりそこへ走り覗き込む…
なかはカラフルな虹が渦巻いていた。
そこに二人の子どももやってきて一緒に覗き込んでいると一人の老婆がやってきて私に話しかける。

「さぁ、お前の番だよ」

そういうと老婆は私を井戸の中へ落とそうとするので、私は必死に「嫌!」と抵抗する。
「後が仕えているんだから早く行きなさい。お母さんが待ってるよ」そして冒頭の言葉になるのだが…

その直後老婆に背を押され井戸に落ちると、虹の滑り台を滑りながら「お母さんってどんな人なの!?怖い!!!」と叫び続けた。
「そこを出たらわかるよ」老婆の声。

ポンっと虹の滑り台を抜けると、青い空が広がる。私は空に浮いていて地上を見下ろしていた。目線の先にはひときわ大きなマンションが見える。

「あっ!あそこにお母さんがいる」

老婆の言うように直ぐに【お母さん】という存在がわかった。マンションへ手足をバタバタ動かし泳ぐ。近づくとシュー…私は一つの部屋へと吸い込まれていた。

これが生まれる前の記憶と言われるものなのだろうか?出産後、育児書か何かで【生まれる前の記憶】を語る子どもたちのエピソードを読んだことがある。
ほとんどの子どもが「虹の滑り台を滑ってきた」という。私はこの光景を、幼稚園に入るかどうかくらいにみた夢だと思っていたのだが…実際はどうなのだろうか?

その光景は今も映像でカラフルに記憶に残っている。

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