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年間50本!?ショッピングモールで地域との関係性を編みながら活動を展開する「ここにある」の仕事について

あまがさきキューズモール。JR尼崎駅直結の大型ショッピングモールだ。利便性も高く、土日は1日で数万人の利用がある。

元々は「COCOEあまがさき緑遊新都心」という名称。今でも「ココエだよね?」とおっしゃる方もいる

その場所に「ここにある」として、2020年から関わっている。ショッピングモールに「地域の関係性を再編集する」会社がどういった関わりをしているのか?そもそもどうして関わっているのか?この記事では、そうした部分を深掘りしていきたい。

「ギャザリング事業」。ビジネス的にはパッケージング・標準化されたイベント(どの地域や場所でも実施可能なもの)を展開していく形のほうがやりやすいし、スケールもさせやすい。しかしわたしたち(クライアントさんも含めて)は、尼崎ならではのイベント、あるいは地域との連携を進めながら協働・共創的にイベントや活動をつくっていく取り組みとして「ギャザリング事業」を行っている。

関わりはじめ(初年度)は5本程度のイベントをするに留まったが、現在は年間約50本程度の企画をご一緒している。中には月1や月2で継続開催しているものもあるし、年に1度や2度の大きなものもある。いずれにしても「ここにある」が単独で企画しているものは皆無で、すべてにおいて地域の店舗さん、クリエイターや作家さん、学生や社会人、リタイア後の方などを巻き込みながら企画を行っている。

イベントを行うのは室内の「レンガのひろば」か「Q’s park」という屋外スペース

クライアントは「東急不動産SCマネジメント」。ただ、クライアントというよりはともに活動を進めていく仲間のような存在になっている。クライアントワークには「委託者(依頼する人)」と「受託者(依頼される人)」という関係性が当然存在するが、その固定化された関係性の中では生まれない価値があるということが徐々にわかってきた。地域の方との関係性づくりだけではなく、仕事をする仲間や企業さん、行政の方との関係性づくりも非常に重要だ。

以下では、あまがさきキューズモールにおける「ギャザリング事業」で行っているいくつかのイベント・取り組みを見ていきたい。いずれも地域の高校生・大学生・主婦・社会人・高齢者の方々を巻き込んだ企画だ。

まず一つ目は、大人気企画になっている「おつかいチャレンジ」。武庫川女子大学の学生の発案でスタートした企画であるが、現在4度目の開催を迎えている。

第4回のビジュアル。毎回定員が1日経たずに埋まってしまう大人気企画だ

毎回、大学生を中心に、時には高校生も巻き込みながら企画を進めている。保護者の方からもらった「お買い物リスト」を片手に、ショッピングモールをはじめて一人でめぐる子どもたち。毎回感動のシーンが生まれ、保護者の方はもちろん、一般のお客さんやボランティアスタッフもウルっとくる光景が見られる。

スタッフもほとんどが高校生か大学生。高校生は地元の人たちを中心に、大学生は教育やまちづくりに関心のある人が多い
毎回感動のシーンが生まれている。一般のお客さんも立ち止まって見て応援してくれる
兄弟・姉妹で参加する子どもたちも。カメラマンのグッドなショットだ

おつかいチャレンジは、準備段階からさまざまな高校生・大学生が関わっている。関わることで「周りからいろいろ言われるので尼崎というまちが嫌いだったけど、素敵な大人や機会があることを知って好きになった」という変化も生まれている。参加者などの数に加えて、こういった可視化しづらい部分を大切にしている。

二つ目は、逃走戦隊ニゲ◯ンジャー(大人の事情で「夏休みおにごっこイベント」と銘打って告知をした)。施設の中を逃げ惑う小学生を大人たちが追いかけるというなんとも楽しい企画だ。

開始前、意気揚々とした子どもたち。逃げ切れる子たちはいるのか
「オニ」だ。10数名のオニが子どもたちを全力で追いかけた
ミッションをクリアすることで「オニ」の動きがストップするなどのルールを設けた。写真はそのミッションに参加する子どもたち
午前7時に50名ほどのスタッフに集まってもらった。大変だったね、、

「逃走戦隊ニゲレンジャー」は、某番組の企画をリスペクトを持ってオマージュしている。小学生を対象としたこの企画では、イベント告知開始後5分で50組の予約枠が埋まるという超人気ぶりだった。子どもたちを追いかけるのは地域のお兄さんやおじさんたち。10代から70代の「オニ」に集まっていただき、子どもたちをほぼ全力で追いかけた。保護者や運営も含めて約200人がオープン前のショッピングモールを楽しむ機会となった。

60代の「オニ(ここにあるのインターンシップにも参加している)」は、終始疲れた様子だった

今回は紹介しきれていないが、そのほかにも大小・テーマさまざまな企画を実施している。もちろん、別の施設に展開できる(可能性のある)企画もあるのだが、パッケージングしてどこでもできるものにしていくことは「ここにある」として意味のあることではない。企画のアウトラインを描きつつ、しかし実際に動くメンバーはそのエリアで暮らしている人や活動している人を中心にして進めていく、というのが「ここにある」流のやり方だ。そういう仕事をわたしたちはしていきたい。

「ここにある」では施設からご予算をいただき、年間50本程度このような取り組みを企画・コーディネートしている。かなりタフにやっていると思う。関わってくれているボランティアスタッフも、優に200名を超えている。

「つくる(機会)を、つくる」をキーワードのひとつにしている「ここにある」としては、消費が行われる場・施設において「つくること」「生み出すこと」「関わること」という、これまでとは別の価値が生まれる瞬間をデザインしたいと思っている。そうすることによって、長期的に見た時の施設の価値や施設に対する愛着が高まっていく。また、地域の方やなにかにチャレンジしてみたい学生などの表現・発表の場として機能することによって、関わりが増え、具体的な消費にもつながっていく。

しかし、社会的には消費以外の価値が求められてもいる。そして、公共的な役割を民間企業が担っていく時代にもなっている。そんな今だからこそ、このような取り組みが生まれているのだと思うし、今後もさまざまな拠点でその施設や土地にあった形でのつながりづくりと、その機運形成が模索されていくのだろうと思う。

ともにつくる、ショッピングモール。ともにつくる、◯◯。

消費者と、生活者と、つくり手。

さまざまな人格や役割をないまぜにしながら、今日もまちでの暮らしが進んでいく。

【Point】
①パッケージ化されたものではなく、その地域に暮らす人たちや働く人たちとともに構想していく
②やってみたい!面白そう!から発案し、さまざまな主体・関係者を巻き込んでいく
③数値(来場者等)的な評価とそれ以外の定性的な評価を合わせて考えていく

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