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認知症がおしえてくれたもの
一昨日の厚生労働省から、65歳以上の高齢者がピークを迎える2040年に
高齢の認知症患者が584万人、認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI)患者が613万人に上るとの推計結果を公表された。
65歳以上の7人に1人が認知症患者になる時代がやってくる。
超高齢化社会の中で、認知症が大きな社会課題であることは知っていたが、自分の親のそれに直面するまでは、年をとればそういうこともあるよね、くらいの認識だった。
母はケガの後遺症の高次脳機能障害の症状が数年前から出ていたが、
深刻なものではなく、
父が「俺がついているから心配するな」と言っていたし、実際生活に支障をきたすことは何もなかった。
そんな頼もしい父が突然認知症になった。
今まで普通に理解できていたことを、“今の自分が理解できないことは
理解できる”認知症の初期の怖れと不安は、いかばかりのものか。
いつもイキイキとご機嫌で、人が大好きだった父が、人と会うことを面倒がるようになり、
それまでの父からは想像もできない後ろ向きな発言が増え、無気力になり、まるで別人のようだった。
父という人の生命力の源泉であるエナジーが枯れてしまったように感じ、(認知症ってなんて切なくて、悲しい病気なんだろう)と当時の私は感じていた。
しかし、突然の父の認知症に寄り添いながら、今にして思うと自らも当時から少しずつ症状が出ていた母の認知症は、
彼女の人生において、父とは全く異なる作用をもたらした。
父がいなくなったら母は生きていけない。本人のみならず、おそらく家族全員が多少はそう感じていた母。
そんな母が、父が亡くなったことをとても冷静に受け止め、お世話になっている施設で、明るく楽しくがんばってくれている。
控えめで、いつも自分のことは後回しで家族に尽くし、愚痴や泣き言ばかりだった母が、
「私、ここでは人気者なの」
「足を引きずって(大腿骨骨折の影響)みっともないけど、平気になっちゃったわ」
「お姉ちゃん、私、本当に強くなったの!」
と、それこそ別人???と思う変化。
超ポジティブだった父はネガティブに傾いたけれど、超ネガティブだった母は今やポジティブに。
まるで逆転したかのような両親の有り様を体験し、そこに命の絶妙なバランシングを感じずにはいられない。
そしてそう感じさせてくれた母のおかげで、最期の父に対する私の認識も少しずつ変化してきているのを感じる。
無理矢理綺麗にまとめようなんて全く思っていないけど、両親がみせてくれるものをずっと味わいながら感じていくと、
やっぱり誰にとっても命は完璧なんだと感じずにはいられない。
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