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フランスで双子の母になった話。

はじめに


はじめまして、ココリコと申します。
私は、大学を卒業後、海外で働きたいという希望を持ち、新卒で日系企業に就職しました。
3年間、国内でみっちり泥臭い営業を経験した後、4年目の春に念願叶い、フランスへの赴任が決まりました。当時は27歳、独身。

まさか、8年後にフランスで双子の母になっているなんて、夢にも思いませんでした。人生って、何が起こるか分かりません。

母になるまでの紆余曲折はさておき、フランスで母になるって一体、どんなものか、私が感じているものを忘れないうちに少しずつ、記していきたいと思います。

出生率が高いのはなぜ?

合計出生率*。それだけで子育てのしやすさや妊娠・出産における好環境を測れるわけではありませんが、ひとまず参考にしたい数値ではあります。

*15歳から49歳までの年齢別出生率を合計したものを合計特殊出生率(合計出生率)といい、1人の女性が一生の間に何人の子を産むかを表す[2]。2018年の日本の合計特殊出生率は1.42である[4]。(Wikipediaより)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E7%94%9F%E7%8E%87

2021年度、日本の出生率が1.37なのに対し、フランスは1.83。
この差は一体どこから来るのでしょう。

実際に私自身がフランスで妊娠、出産をしてみて気が付いたことを記しながら、出生率の高さについて考えてみたいと思います。

先に断っておくと、日本とフランス、どちらが良い悪いということを言いたいわけでは無く、ましてフランスかぶれの自己顕示欲を爆発させるためでもなく、単純にこの、日本から見て少々特殊ともいえる環境での経験を記録することで、出産や育児について多様な角度から考えてみたいというのが、本記録を書く動機です。

冒頭から言い訳がましく恐縮ですが、ただいま絶賛育児中のため、十分な時間が取れず、まとまりのない文章を書き記すことが予想されます。その辺りは、温かい目で見守って頂けたら幸いです。

妊娠中に感じた過ごしやすさ

日本での出産経験は無いので実際のところは分かりませんが、たぶんフランスは妊婦に優しく出産のハードルも低めに設定されています、経済的にも精神的にも。
社会保障料を払っていれば、基本的に妊娠に関わる費用は無料。(骨盤ベルトや着圧ソックスまで無料なのは驚きでした。)
生活全般でも、周りの人が温かく見守り、手伝ってくれるため、不自由を感じずに過ごすことができました。
下記、思い出しながら詳細を記していきたいと思います。

産院

産院(病院)については、妊娠が分かった時点で早急に予約を入れる必要があり、人気の産院で出産したい場合には、とにかく早めに申し込まねばならぬようです。
私の場合は双子だと分かった時点で、公立の小児医療センターが併設された病院で申し込みをしました。(一卵性双生児ということで高リスクに分類され、優先的に受け入れてもらえました。)

病院が決まれば、後は定期的に検診を受けながら、妊娠生活を送ります。
日本と違って検診やエコーの回数は少なく、基本的には妊娠してから産むまでに4回ほど。
私の場合は、多胎児(双子)かつ胎盤が一つ、というリスク高めの妊娠だったので、エコーや検診の回数は通常よりも多めでした。(それでも2週間に1回)

食生活


フレッシュチーズ、生ハムなど、フランスにいると頻繁に目にする食材で、食べられないものが多く、ちょっぴり寂しくはありましたが、10ヶ月弱なのでまあ、耐えられます。グラス一杯くらいならワイン飲んでも良いよ〜って先生も居るとかいないとか。私の場合、アルコールは面白いほど飲まなくても大丈夫でした。(この10年ほどで、既に一生分飲んだのかも知れません。笑)
レストランでも、先に妊婦であることを伝えておけば、メニューを変更してくれたり、柔軟に対応してくれるところが多く、助かりました。

また、妊娠中に飲める薬が多いのにも驚かされました。
国民的な痛み止め「ドリプラン」(日本で言うバファリンみたいなやつ?)は飲み放題(というと語弊があるけれど)、痛みを我慢するストレスの方が身体に悪い、といった考えのようで、「痛みに耐える美徳」は存在しないようです。これが、無痛分娩の普及に繋がっているのかも。

妊婦はどこでも優先される


行政サービス、スーパーのレジ、妊娠中はいつでもどこでも優先してくれたので、ストレスフリー。お腹が大きくなってからは、メトロで座れないなんてことは一度もなく、絶対に誰かが席を譲ってくれるので、積極的に公共交通機関使いたくなります。(ラッシュ時や夜の混む時間帯に、「こんな時間に妊婦が出歩くなよ」的なプレッシャーは皆無。出歩きたい時に出歩いて、更には人の目を気にすることなく、助けを借りてOKなのは有り難かった。)

私の場合は、妊娠中に通学のため、リール(パリから新幹線で1時間ちょいの都市)に通うことが多々ありましたが、移動も滞在も何の問題もありませんでした。(パリのメトロはエレベーターやエスカレーターが無かったり、あっても壊れていることが多く、全くバリアフリーとは言えないのですが、スーツケースやベビーカーは、周りの人が必ずや運ぶのを手伝ってくれるので、大いに甘えさせて頂きました。)

と、改めて振り返ると、ずいぶんと快適な妊婦生活を送らせてもらったなあと思います。

テレワークをフル活用

仕事に関しては、コロナ禍ということで、お医者さんにレターを作成してもらい、妊娠5か月の頃から100%テレワークに移行しました。因みに、社長はテレワーク反対派(パワハラ気質のフランス人)でしたが、日本人的に空気を読んで弱腰になったら負けだと思い、強い意志で押し通しました。笑

フランスの場合は、産休のみで育休を取らずに仕事に復帰するのが一般的です。また、状況によって期間が異なります。(下記、産前産後休暇の週数)

●1人目、2人目の子ども:16週間
●3人目の子ども:26週間
●双子:34週間
●三つ子:46週間

私は34週間の産休をもらえることに。フランスでは、産後だけでなく、産前休暇もしっかり権利として保障されています。
また、会社が妊婦を部署移動させたり、ましてや辞めさせるよう圧力をかけたりすることは法律で禁じられているので、仕事のことを気にせず、安心して休むことができます。
(父親の育休制度も、日本とは比べ物にならないほど整っているのではないかと思いますが、この話はまた別の機会に。)

そんなわけで、殆ど不自由を感じることなく、気ままに仕事をしながら、妊婦生活を送ることができました。おかげで胎児もストレスフリーにすくすく育ち、2人ともお腹の中で、順調に大きくなりました。

いざ、出産。

出産方法

出産方法については、一卵性の双子にも関わらず、胎児のポジションによっては経膣分娩も選べるというのが驚きでした。その代わり、リスクが高いため無痛分娩(麻酔を使用する)になるとのこと。
私のお腹の中の双子のポジションは、最初に出てくる予定の胎児の頭が下になっていたので、経膣分娩も出来ると言われ、産後の回復が少しでも早い方が良いという気持ちで、経膣分娩を選択することに。

因みに、どんな出産方法を選ぶかは母親次第といった雰囲気で、お医者さんは分娩方法や麻酔などの説明こそしてくれるものの、最後はしっかり自分で選んでね、という感じでした。
殆どの妊婦は無痛分娩を選択するものの、普通分娩を希望することも可能です。(友人の中には、ジェットバスでの水中出産をしたという人も)
基本的には、どの分娩方法を選んでも殆ど自己負担は無いので、個人の希望をもって金銭面を気にせず、出産方法を選択できます。

さて、私個人の話に戻りますが、
双子は通常よりも早く産まれてくる必要があるため、38週の何日目かに出産日を決め、その日までに破水等しなければ、病院で誘発分娩をするとのこと。幸い、当日まで破水しなかったので、入院セットを持って病院へ。3月下旬のこの日、春の陽気で温かく、体調も良かったので、夫と二人、のんびりと徒歩で病院に向かいました。

病院に到着後、子宮口を広げるために、バルーンと呼ばれる水風船のような器具を膣内に挿入し、膨らませる処置を受けました。麻酔無しで始まるこの第一ステップ、これがとにかく痛かった。技術的な問題なのかもしれませんが、1度失敗され、2度目も挿入に時間がかかり、血だらけになって、ヒヤヒヤしました。。
どうにかバルーンが挿入され、その後しばらく、前駆陣痛との戦い。痛みが行ったり来たり、いつまで続くんだろうと、冷や汗をかきながらベッドでうなります。

ようやく痛みが治まったところで、付き添いの夫と2人、これから1週間程度の入院生活を送る病院の個室に案内されました。「アンヴァリッドとエッフェル塔が見える特別な部屋だよ」と助産師さん。窓が自由に開けられないのは残念でしたが、とりあえず個室で安心。(双子の場合は自動的に個室になるらしい)

病院の個室。奥の左側にある1人掛けソファは、パートナー用の簡易ベッドになります。
左手にエッフェル塔、右手にアンヴァッリド。

この日は、ゆっくり体を休めて下さいと言われ、夫は自宅に帰り、私は翌日に備えてゆっくり眠る・・・予定でしたが、緊張して寝付けず。。
読書をして緊張を紛らわしながら、明け方までウトウト。

翌朝9時。助産師さんに分娩室に移動するよう言われ、身支度を整え別室へ。夫に分娩室に移動する旨、連絡を入れました。

分娩室。光が入って明るく開放的な部屋。

いよいよか、とドキドキしながら、分娩代に上がり、子宮口の開き具合をチェック。10㎝近くにならないと赤ちゃんは出てこられないと説明され、未だ2-3センチですね。との言葉に先は長いと覚悟を決めます。

その後、夫が到着。談笑している間に、手際よく、無痛分娩の準備や点滴準備のためのカテーテル挿入などが行われ、あっという間に準備は万端。
無痛分娩の麻酔が効き始めると、腰のあたりがじわっと温かくなり、痛みも遠のき極楽状態に。これなら全然乗り切れる~とホっとしました。

陣痛促進剤を注入し、待つこと数十分。モニターを確認すると、どうやら陣痛は激しくなっているようですが、子宮口の開きが遅い。このままだと、赤ちゃんが弱ってしまう・・・と、急に助産師さん達が慌てはじめ、、

赤ちゃんの心拍を確認しながら、陣痛促進剤を入れます。

「緊急帝王切開に切り替えます」と宣告されました。

緊急帝王切開。

もちろん、赤ちゃんの命が最優先。お願いします!!と言った瞬間に凄い勢いで準備が始まり、ものの5分もしないうちに、手術室に移動されていました。チーム編成は10人近く。お腹のあたりにカーテンがひかれ、手術の光景が見えないようになっているのですが、カーテン越しにかわるがわるメンバーが顔をだし、自己紹介。よろしくね!がんばりましょう!と声を掛けてくれました。

印象的だったのは、手術室のBGMがABBAのマンマミーアだったこと。執刀医と思われる男の先生は、可愛いキャラクターもののバンダナを付けて、マンマミーアを口ずさんでおり、皆ノリノリで、まさかこれからお腹を開くとは思えぬ和やかさ。おかげで私の緊張も少し解けました。

着替えて全身消毒を終えた夫が小走りで手術室に到着した瞬間に、待ってましたとばかりに「はじめるよ~!」と、手術開始。
流石に始まる瞬間はドキドキしていたようで、無意識のうちに声や指先が震えていました。

部分麻酔が効いているので、痛みは全くありませんが、お腹の中でぐにゃーっと何かゴムのようなものが動く感触があり、次の瞬間、「一人目産まれたよー!」の声。2,3秒の間があってから「オギャー!」という元気な産声が響き渡りました。
ふにゃふにゃの長男を連れて、助産師さんがカーテンの向こうからこちらにやってきて、顔を見せてくれました。以外にしっかりした人間の形でびっくり…している間にすぐ、別室に連れていかれました。

助産師さんが長男を連れてカーテンの向こうから登場。因みに、写真は全て看護士さんが自分の携帯で撮影し、後ほどワッツアップというメッセージアプリで送ってくれました。


1分も経たないうちに、次男も無事に産まれ、ここでようやくホッとして安堵の涙が。。

次男も無事に産まれてくれました。

後処理をしている間、夫は助産師さんと共に赤ちゃんの居る別室へ。
夫曰く、長男も次男も頭の形が驚くほど歪んでおり、まるで宇宙人の様相だったとか。「この頭、大丈夫ですか?」と助産師さんに聞くと、「大丈夫だいじょうぶ!!」と答えながら、せっせと頭をマッサージして、形を整えていたそうです。笑

一方そのころ私の方は、パチン・パチン、とホッチキスのようなものでお腹を閉じる音を聞きながら、麻酔が効いているので痛みも無く、心地よく手術台の上に横たわっておりました。

あっと言う間に双子が産まれ、なんだか不思議な気分だったのを覚えています。

妊娠、出産を通して感じた快適さ

ここまで書いてみて、やはり妊娠・出産環境は快適だったなぁという印象です。そして、その快適さは、自分や家族由来のものというより、社会システムや人々のメンタル由来のものであるように感じました。

冒頭の問「出生率が高いのはなぜ?」に対して、私個人の意見を述べるならば、「この環境でなら、子どもを授かっても大丈夫だろう」といった安心感が、フランスの社会には浸透しているように思えます。それ故に、子どもを授かろうと考えるカップルが多いのかもしれません。
特に、経済的に躊躇う必要が無いというのは、非常に大きな要因ではないかと。
診察や薬代、入院にかかる費用を心配せずに済むだけで、どれだけストレスが軽減されるだろう。
(日本の友人から、出産にかかった費用について説明されて、驚いてしまいました…)

さて。ここまでフランスでの妊娠、出産体験について書いてみましたが、実は出産後、様々なトラブルに見舞われ苦しい思いをすることになります。
今思い返しても辛い、、(泣)
しかしながら、またまたフランス社会の手厚い支援に助けられ、子育て初心者・外国人の私でも、なんとか乗り越えつつ、心と体を労わりながら育児を楽しませてもらっています。

出産後のあれこれについては、また別の項にて。

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