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「会社員」と「フリーランス」(社会保険編)

前回、前々回にわたり、
・「会社員」と「フリーランス」(労災保険編)
・「会社員」と「フリーランス」(雇用保険編)
という記事を書きました。

今回は、保険関係編の最終回、「社会保険」について理解を深めたいと思います。

用語の整理


まず、最初に出てくる用語を簡単に整理しておきましょう。

・「社会保険」とは、「健康保険」と「厚生年金保険」を合わせた呼称です。
※会社員等で所属している会社を通して社会保険加入する場合、保険料は事業主1/2負担、被保険者1/2負担となり、実質折半となります。

「健康保険」の「保険者(保険を管掌する者)」とは、「全国健康保険協会」や「健康保険組合」等のことです。

・「国民健康保険」は、保険者(保険を管掌する者)が自治体です。
※国民健康保険の保険料は全額自己負担となります。

では、次に、「前提が雇用か」「前提が雇用でないか」という、前回同様の切り口を用いて、考えてみたいと思います。


働き方と保険適用の一覧表

まず、次の表をご覧ください。

<表1>

※1一定の要件を満たした場合は「1人親方」として特別加入できる場合もある。
※2労働時間等により加入要件が定められており、一定の要件を満たした場合に加入となる。
※3労働時間・年齢等により加入要件が定められており、一定の要件を満たした場合に加入。
※4原則は国民健康保険へ加入することが多いが、自身で設立した法人にて社会保険加入することもある。

前回同様、理解しておくと良いと考える点は、以下2点です。

1,その保険の主な制度内容

2,「前提が雇用か」「前提が雇用でないか」それぞれの場合において、保険適用されるのか適用されないのかという違いを理解すること

では、順にみていきましょう。


健康保険の主な制度内容 


健康保険の正式名称は、そのままで「健康保険法」と言います。

なお、医療、年金、介護をはじめ、労働保険をも含むより広義の意味で「社会保険」とも表現されることもありますが、ここでは、先述の2つ(健康保険・厚生年金保険)を指すものとして話を進めます。

「健康保険」制度を一言で言えば、次の通りです。

業務外で病気や怪我をした場合をはじめ、休業、出産、死亡といった事態に対応する公的な医療保険制度。

制度内容をみていきましょう。

 <表2:健康保険の給付一覧>

書いてて思いましだか、結構な種類がありますよね。

また、健康保険には「被扶養者」という概念があります。”被保険者に扶養される者”という意味ですね。
よって、上記に書いた各給付のうち、被保険者、被扶養者、どちらもが対象となるものがあります。

一般的に多く利用されることの多い給付概要を、いくつか説明しておきましょう。

・療養給付
 (「病院受診の際は3割負担で済む」等といった話は聞いたことがあるかもしれません。分かりやすく言えば、本来負担するはずの残り7割部分のことです。被保険者に代わり療養給付として給付をしている、といった仕組みとなっています。)

・高額療養費
(医療費の自己負担額が高額になりそうな際、一定の金額を超えた部分の支払いが払い戻される制度内容です。)

・傷病手当金
 (病気や怪我による休業中に、事業主より報酬が得られない場合にお金が支給される制度です。)

・出産一時金
 (出産時に一時金が支給される制度です。)

・出産手当金
 (被保険者が出産の為に会社を休み、事業主より報酬が得られない場合にお金が支給される制度です。)


厚生年金保険の主な制度内容 


次に、「厚生年金保険」もみていきましょう。
正式名称は、そのままで「厚生年金保険法」と言います。

制度を一言で言えば、次の通りです。

「厚生年金保険」は、報酬比例の公的年金のこと。

「報酬比例」とは、字の如く、加入期間中の報酬に比例して年金計算される、という意味です。

また、国民年金が1階部分、厚生年金が2階部分など、「2階建て」と表現されることもあり、その2階部分の年金のことです。

制度内容としては3つ挙げられます。

・老齢厚生年金
 (一定の要件のもと、保険料を納付した期間や報酬に応じて年金として支給されます。)

・障害厚生年金
 (一定の要件のもと、加入期間や障害等級に応じて年金として支給されます。)

・遺族厚生年金
 (一定の要件のもと、亡くなった方の老齢厚生年金の3/4が支給されます。)

なお、先の通り、厚生年金保険は、2階建て部分の年金という表現でもある通り、1階部分には「基礎年金」と呼ばれる年金が存在します。

その基礎年金には「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」という3種類があります。

話が複雑になる為、詳細は省きますが、基礎年金と厚生年金の違いをおおざっぱに言えば、特に障害年金と遺族年金については、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方が、遺族基礎年金よりも遺族厚生年金の方が、カバー範囲が広い制度体系となっており、支給される可能性も高くなる、とも言えるでしょう。


社会保険の適用対象となる場合、ならない場合

続いて、「前提が雇用か」「前提が雇用でないか」それぞれの場合における適用の有無を確認していきましょう。

改めて表1を見てください。

「雇用が前提」グループのうち、正社員は「有」、それ以外(多様な正社員・アルバイト・パートタイマー・契約社員・嘱託社員・派遣社員)は「△」となっています。

正社員を「有」とした理由は、通常は社会保険の加入要件を満たす働き方が多い為です。

逆に、多様な正社員・アルバイト・パートタイマー・契約社員・嘱託社員・派遣社員を「△」とした理由は、社会保険の加入要件を満たす働き方か否かはケースバイケースである為です。

いずれにせよ、「有」であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)へ加入でき、先述の給付、年金、を受給できる可能性がある、ということになりますね。

その一方、「雇用が前提でない」グループに目を移しますと「自分で加入」となっています。

この意味は、任意継続(退職後も一定期間、引き続き健康保険加入できる制度)している等の例外的状況を除き、「原則は国民健康保険へ加入する」ケースが多い為です。

ただし、「自分で法人を設立し、そこから報酬を得ること」で社会保険の適用事業所となり、社会保険加入する、といったスキームもありますから、ケースバイケースではあります。

なので、「働き方」のデザインの小さな小さな1要素として、「社会保険に加入したい」から法人設立して、社会保険を完備する、といった方法論は、時と状況に応じて理にかなった選択肢になりえるでしょう。


「国民健康保険」の場合


「国民健康保険」の場合、先述の健康保険とは大きな違いが存在します。

それは、主に以下の点が挙げられます。

・制度上、「被扶養者」という概念が存在しない。よって、家族がいる場合は家族毎に加入する必要があり、家族毎に保険料が発生する。

・制度上、「傷病手当金」という概念が存在しない。

・制度上、「出産手当金」という概念が存在しない。

・保険料は全額自分で支払う必要がある。 

なお、国民健康保険へ加入するということは、厚生年金保険には加入しないこととなる為、年金に関しては国民年金保険料のみを支払うこととなります。


健康保険と国民健康保険の主な違い


最後に、まとめとおきましょう。
色んな制度を見ていくと、内容がいくつにも分かれ、用語もたくさん出てくる為、どうしても分かりづらくなってしまいますからね。

特に、健康保険と、国民健康保険との違いはややこしいようです。簡単に異なる点をまとめておきますから参考にして下さい。

※1被扶養者の健康保険料(及び第三号被保険者の場合は国民年金保険料)も含まれる
※2被保険者毎に発生する


以上のように、「前提が雇用」「前提が雇用でない」それぞれの場合における、保険適用をみてきました。

「前提が雇用でない」場合であっても、法人設立して社会保険加入するスキームもありました。

そうでない場合は、健康保険上の「傷病手当金」「出産手当金」の代わりとなるような民間保険へ加入する、といった代替措置も検討できるでしょう。

また、国民健康保険は前年度の収入をベースに計算される為、場合によっては、社会保険加入するよりも保険料が低くなるケースもあり得るでしょう。

いずれにしても、繰り返しますが、制度の大枠、原則を理解しておき、それがあなたにとって、どの程度インパクトがあるものかを知ることは意外に重要かもしれません。

そして、それらを踏まえ、「はたらく」をデザインする上での小さな小さな1要素として活かせたなら、より良いかもしれません。
 

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