大河小説が生まれた!? 宮島未奈の「成瀬は天下を取りにいく」

江戸時代に遡る意外な主人公の生い立ち

みなさんは織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった歴史上の偉人について知っていますか? でも、この物語の主人公は彼らとはまったく違うスタイルの人物なんです。成瀬家から生まれた主人公は、岡山藩の重臣の息子という身分ながら、武士としての教育を一切受けていません。代わりに家業の商売に精を出し、並外れた経営手腕を持っていました。

予想外の出来事が人生を大きく変える

平凡な商家の子として育った主人公でしたが、ある日、岡山藩主の奇行によって身分を追放されてしまいます。仕方なく旅に出ると、偶然出会った大名に助けられるのですが、その代わりに軍勢の補給係を務めることに。主人公は平和な商売人のはずが、気がついたら戦国の世の中へと放り込まれていったのです。

運命を喰らう男の底知れぬ野心

新しい世界に身を置くことになった主人公は、試練に次ぐ試練に立ち向かいながらも、めげずに奔走していきます。周りの人々から「無欲な男」と評されていましたが、実は心の奥底で巨大な野心を抱いていたのです。商人の頭脳と戦国の世の波乱万丈な出来事がかみ合うと、どんな化学反応が起こるのでしょうか?

大河小説の王道を行く展開と筆力

著者の宮島未奈は、戦国時代を描いた数々の大河小説の手法を熟知しています。時代背景の緻密な描写、人物の心理の巧みな表現、そして読者を虜にする圧倒的な筆力。この作品において宮島はそうした王道を行きながらも、前代未聞のユニークな設定で新風を吹き込んでいるのです。歴史通でも文学愛好家でも、この不思議な物語に夢中になってしまうことでしょう。

気になる点もあるが、大したものだと思う

一方で、戦国時代の知識がない読者には理解が難しい場面も存在します。また商家の主人公なので、武将としての活躍は控えめかもしれません。しかし、それらの小さな難点は作品の大きな価値を揺るがすものではありません。全体としては極めて秀逸な歴史エンターテインメント小説だと断言できるでしょう。物語の根幹にあるユーモアとドラマに酔いしれる一冊です。

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