世界の中心はここ
「ここが世界の中心だ」
ボーカルがそう叫んだ。観客が呼応するように拍手した。
コロナ対策で声を出すのはNGの中、ライブは着々と進んでいた。
私はボーカルの叫んだ言葉が頭から離れなかった。
世界の中心ってなんだろう。
自分はそうは思えないな。
ライブに参戦しているにも関わらず、心ここにあらずな私はぼんやりと手を振って周りに合わせるようにリズムに乗っていた。
私はいつも世界の隅っこにいる気持ちでいっぱいだ。
隅っこでこそこそと頑張っているつもりだ。
別に中心にいたくないわけじゃない。
でも中心にいるには自分がまだ成長できていないような、未熟な感覚がするのだ。
隅っこにずっといたいわけでもない。
いずれは中心にいるような存在でありたいと思っている。
いつなるの?って言われたら、いつかだよとしか言いようがない。
だって隅っこで頑張っているんだから。
でも彼は言い放った。
「俺たちの今いるここが世界の中心」だって。
みんな世界の中心にいるんだよ。って言われてるみたいだった。
いやいないのに?私は隅っこにいるのに?
そんなの関係ないと無理矢理手を引っ張られている気持ちになった。
まるでステージに引き上げられたかのような感覚。
いつの間にか私は舞台の中心にいた。
いや、正しくはいないのだけれど、中心に確かに私はいるのだ。
私はずっと隅っこで頑張っている人間だと思っていたけれど、そうじゃなかったのだ。みんな一人一人世界の中心に立っているんだ。
もっと、胸を張っていい。自分の立ち位置を誇っていい。
そう勇気づけられた。
常に私は世界の中心に立って生きている。
そう思えた方がもっと世界が輝いて見える気がする。
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