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温もりってなんなんだろう。

昨日、大学の授業課題で映画を観た。タイトルは「空気人形」。これだけ聞くとホラー映画か、何か不気味な映画を連想する人もいるかもしれない。決してホラーなんかではなかった。しかし、確かに不気味さは至る所に散りばめられていた。

あらすじを私の目線から、ざっと説明しよう。秀雄という男性は独身のおじさんで、レストランのウェイターとして働いている。彼を家でいつも待つのは「空気人形」の「のぞみ」だった。空気人形というのは、マネキンのようなもので、空気を入れて膨らむタイプの人形である。彼はこの「のぞみ」をまるで自分の恋人であるかのように愛しており、声をかけたり、髪の毛を撫でたり、時には抱いたりとまるで本当に人間であるかのように扱う。

そしてある日、この人形に命が宿ってしまう。秀雄はこのことを知らない。だけど、秀雄が働きに出ている間、「のぞみ」も外を出歩くようになる。レンタルのDVD屋さんで働いてみたり、お洋服を自分で買ってみたり、散歩したり。そんな、一見ワクワクとしたような毎日を過ごすのだけれど、実は東京の街はそれほど美しいものではなかった。「のぞみ」が目にしたのは、東京に溢れるほど存在する孤独な人々。外に一歩出れば、こんなにもたくさんの人がいるのに、人々はただすれ違い、目も合わせずに行き交うだけ。

そんな生活の中で「のぞみ」が出会ったのは「代用品」という言葉だった。「俺じゃなくたって、この仕事をやれる人はいくらでもいる」そう言う秀雄。「私じゃなくても、空気人形だったら誰でもいいんだ」そう感じてしまうような場面にも遭遇する「のぞみ」。自分も、そして他の人々もどれほど空っぽであるか、と言うことに彼女は気づかされるのでした。

ってな感じでかなり端折ってしまいましたが。課題として、出された質問に答えながらレポートを書かないといけなかったんですけど、、。

実を言うと、途中までしか観ませんでした。

正確には、途中で限界が来ました。そんなにハードな内容ではなかったのですが、心を痛めるような描写が所々にあり、土曜日の昼から観ていたものですから、、。途中までしか観られませんでした。作品の中盤くらいから「これ以上観ると、この週末ずっと引きずるかも」と嫌な予感がして、先にネタバレサイトでチェックしてみたんです。そしたら、私が想像していたような結末とは遥かに違って、衝撃でした。これを文字で読むだけでも、穏やかではいられなかったので、残念だったけれど、最後まで観なくてよかった、、。涙が当分止まらなかったんじゃないかなぁ。

まぁ、どんな映画か気になった方はご自身でぜひ鑑賞されてくださいな。確かに私としては、この映画の結末を辛いものと受け止めました。だけど、同時にこの映画が言いたかったのは、

自分にとってかけがえのない、ただ一人愛してくれる人がこの世界にいれば、この地球にいる人の残りの全員が自分を「代用可能」だと思っていても、孤独を感じずに生きていける

ということだったのではないかな、と解釈しました。ただの憶測なので、もしかしたら監督や出演者の方々の思いは、全く違うかもしれませんが、、。

映画を通して、特に印象に残っているのは「のぞみ」が人々と積極的に関わりを持とうとする様子です。ベビーカーに乗っている赤ちゃんに声をかけ、ほっぺたを触るシーン、目の前を行く女性を真似して交番の前で挨拶をするシーン、そして公園でお昼ご飯を食べている中年のOLさんに唐突に話しかけるシーン。彼女は、孤独な人々を自分と繋げようとしていました。それともあれは、孤独な自分を満たすための手段だったのかなぁ。でも彼女の綺麗な心を考えると、そんな風には思えませんでした。

その中でも忘れられないのが、手を繋いだ幼稚園生たちが目の前を通った時の彼女の行動です。一番後ろにいた女の子の手を取って、みんなと同じように手を繋いで歩こうとしました。しかし、その手はすぐに女の子によって振り払われます。

つめたーーーい

それが女の子の言った一言でした。「のぞみ」には感情も宿ったし、自分で動けるようにもなった。なのに、彼女の身体は冷たいままだった。彼女は結局、人間にはなりきれなかった。「身体の温もり」だけが彼女には欠けていたのです。

確かに身体は冷たくて、人間とかけ離れていたかもしれません。だけど、彼女が一生懸命周りの人を支えようと、誰かに寄り添おうとする姿勢は、彼女の「心の温もり」を表していました。その姿は、彼女を取り巻くどんな人間よりも「人間らしく」て、美しかったです。彼女は私の目に「唯一無二の空気人形」として映りました。

結局のところ、「温もり」って何なんでしょうね?確かに疲れた時のホットミルクは身体に沁みるけど、やっぱり自分が大好きな誰かといる時間の方が心を温めてくれる気がします。

あなたにとっての「温もり」はなんですか?

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