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「推し」という逃げ。

今となっては「推し」という言葉が、いつ頃からこんなにも使われるように使われるようになったのか、記憶を辿っても思い出せない。まさか、芥川賞受賞作のタイトルにもなるくらいこの世の中に浸透する言葉になるなんて、思ってもみなかった。

そんな「推し」という言葉について、最近印象に残ったフレーズがあったので、それについて今日はお話ししてみようかな。『恋なんて、本気になってどうするの?』というドラマが今、放送されている。最新話が更新されるたびに、友達とさまざまなシーンについて語り合ってしまう。主演を務められている広瀬アリスさん演じる純さんが、私の心にとっても刺さることを言っていました。

学生時代に憧れだった男の先輩が結婚することを告げられた後、女友達の前で、涙と共に彼女が発した一言。

「好きな人がいたの。推しって言葉で自分の気持ちをごまかしてた」

「推し」って言葉はとっても便利です。好きなアイドルやアスリートだけでない、「尊敬」も「憧れ」も「本当は好き」も、全部全部ひとまとめにして「推し」。便利だけど、使いやすいけれど、口に出しやすいけれど、それってなんだか寂しくないかな、と思うこともある。

「推し」と言えば言うほど、自分の本当の「好き」がわからなくなるような感情にさせられる。「好き」と同じ本気度が「推し」という言葉からは感じられない。良くも悪くも「推し」という言葉は非常に便利なものとして、その地位を確立してしまったな、と思う。

だから尊敬している人には「尊敬」という言葉を使って、自分の相手への熱意を伝えたいし、「憧れ」ならその思いを文字通り言いたいし、恋愛感情としての「好き」なら、それはそのようにちゃんと言葉にするべきだと思う。

って言うのは簡単なんですけど、実践に移せるかどうかは、また別問題なわけで。

私にも、今とっても尊敬している先輩がいます。あぁ、彼には敵わないな、と思う人が。第一印象は少し怖くて、厳しそうで、話しかけづらそうな人。でも本当はストイックで、自分らしさを突き通せて、一生懸命に物事に取り組める人。

あんな風になりたいとも思います。そういう意味では「憧れ」なのかもしれません。自分にはないものを、彼はたくさん持っていて。人と真正面から向き合える姿勢、私もそうありたい、と心から思います。

「頑張っている私のことも見てほしい」「もっと彼のことを知りたいし、もっと私のことも知ってほしい」そういう感情も彼に対して抱くことがあります。仮に、これが恋なのだとしたら、

「尊敬」「憧れ」「好き」どれも一緒に表すには、結局やっぱり「推し」という言葉が、一番ぴったりなのかもな。

でも、いつかいつか一つずつ、ちゃんと言葉にして、本人に伝えられる日が来たらいいな。だって「推し」と言う一言じゃこの思いの丈は、決して伝えることができないから。

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