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今日本が一番しなくてはいけないことは何か?

僕が最初に会社(東芝)に入ってやったことの一つが、電子機器が放射線を浴びた時にどれくらいで壊れるかの実験だった。(東芝の原子力発電所の制御装置の設計部署に配属された)放射線の照射施設に電子機器を持っていき、被爆させてどの程度で壊れるかという実験をすることだった。

だが、その実験の結果はすでに欧米での実験報告があり、結果はわかっている事の追実験だった。自分の実体験としてはとても面白かった(水中でボーっと光る放射線源をまじかに見れたことは今でも印象深く覚えている。)が、実験の結果そのものは何も新しい発見があるわけでもなく、創造性のカケラもないつまらない仕事だった。

東芝では、他にも特許調査も定期的にさせられたし、半期に一度特許を出せというノルマも課せられていた。だが仕事そのものは特許を出せるような創造性のある仕事ではなく、単に特許のノルマをこなすだけという事になってしまう。

昨今、僕は必要に迫られて自分の事業に必要な特許を出している。それはとても難しく大変な事ではあるが、創造性を刺激される意味のある仕事だ。

人間は必要に迫られて必死に活動するときに本当の能力を発揮できる。ノルマを課されて仕事だからやるという事では、本当の能力は発揮できない。そういうことを無理やりやり続けることで、人間は気力をなくし、創造性を無くし、無難な選択を取るのが当たり前になってしまう。なぜ日本ではそういう理不尽なことが行われているのか?

それは何度も書いているように思うが、日本は戦後欧米の真似をして『カイゼン』を行うビジネスの仕方で躍進していたからだ。本質的な創造性のあるビジネス提案をする必要がなかったし、してこなかった。(僅かに例外的なのが、HONDAやSONYなどの会社だろう。)だから、本質的な創造性を生み出すという経験をしていないし、そのやり方がわからない。

だが、いま世界で活躍するには本質的な創造性が求められているのだ。米国のGAFAなどの企業は本質的なビジネス創造をして世界を変えてしまったと思う。日本が行っていた古典的なモノづくりを蹴散らし、SaaS などの新しい企業文化を生み出した。

日本はこれからどうするつもりなのだろう。このままではじり貧で、茹でガエル状態になって沈んでいくのは明らかだと思うのだが、全く危機感を感じない。いまだに日本は最先進国だと思っている人が多いから唖然とする。

新しいビジネスを創造できる文化を育てる必要があると思うのだが、政治が取り組んでいるのは、『5Gの次を行く6Gを開発すること』、『シリコンバレーの真似をした環境を整備する事』だそうだから唖然とする。相変わらず真似をすることしか考えていない。その方が見えやすくて税金を使うための説得がしやすいからね。

今大事なのは、箱物などの環境を整備することや、世界の真似をするのではなく、吉田松陰が塾生たちを鼓舞したような、新しいビジネス文化を創り出すことだと思うのだ。なんでそんなことがわからないのだろう?政治家や官僚、ビジネスの上層部にいる人たちに、物事を創造するという経験がなくてわからないからだろう。せいぜい立ち上がり始めた新規ビジネスに乗り遅れないように頑張るというのが精いっぱい。

日本は今は『失敗しないこと』が最大の命題になっている。だがそれではじり貧なんだよ。いつか茹でガエルになってしまう。これからは、創造性がある人を表舞台に立たせないといけないんだよ。いい加減それに気づこうよ。

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