マガジンのカバー画像

モノ書き

96
運営しているクリエイター

#フィクション

人生カタログ本

分厚い本を渡された
ずっしりと重量感のあるそして、いい素材の紙を使っているであろう、固い本。

「この中であなたが望む人生を選んでください。その通りに歩むことが出来ます。」

冷たい笑顔で言い放つ。

ペラペラっと中をめくってみる

大きなソファに座って脚を組む男性。
いいスーツを着て優しい微笑みをしている。
一目でわかるお金持ち。

かと思ったら良い具合に日焼けをしたサーフボード片手に写る若そう

もっとみる
コンビニ

コンビニ

「飲み物を買ってくる。」

そう言って、加奈子は部屋を出て行った。

加奈子がこのアパートに来たのはこれで2回目だ。
加奈子とは高校からの付き合いで、よく遊んでいたグループの仲間。
高校卒業後、大学進学で大半は上京をした。私と加奈子だけが地元に残った。
地元残り組の私たちは高校の時よりも仲良しになった。地元の新スポットにはほとんど行ったし、年に1回は旅行にも行った。クリスマスも誕生日も年越しも加奈

もっとみる
海の見える街

海の見える街

潮を含んだ風が私の身体にまとわりつく。
一定の流れる波を見ていると、すべての感情を連れ去ってくれるような気がする。



暗い夜の海に浮かぶ船、明るいライトを照らしているのはイカ釣り漁船だから、そう教えてくれたのはあなたでしたね。

地元にもこんなに綺麗な海があったことも、その海への近道も、教えてくれたのはあなたでした。

車の中はいつもあなた色でしたね。
好きな音楽は同じでも、選曲はまったく違

もっとみる